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1990年代初頭には、約6,000億円の市場規模だったメガネ業界は、2009年は4,000億円を割り込み急激な市場規模の縮小に見舞われた。
1980年代、眼鏡の販売は、街の個人経営店から全国展開する大手チェーンへと移行。さらに2000年代に入ると、商品企画から販売までを一貫して行うSPA(製造小売)事業モデルの企業による低価格化が急速に進み、市場全体の売上げが急速に縮小する中で価格競争がより激しくなった。
1980年に創業し、業界でも老舗と呼ばれるメガネスーパーも、価格競争の波にのまれ、2006年以降は赤字が続いた。しかし、こうした薄利多売の流れとは一線を画し、「売上げ重視から収益(粗利)重視」へのビジネス戦略の転換を図り、2015年度決算で9年ぶりの黒字転換を果たした。同社が「第二の創業」と位置付ける大規模な改革の中心となるのは、顧客1人ひとりと向き合うアイケア(眼の健康)サービスの充実だ。
それは、顧客が購入した商品の“中身”を知ることから始まった。
メガネスーパーは、「2018年春以降、メガネ型ウェアラブル端末の量産を開始。初回受注で10億円の売上げを目指す。」長らく市場規模縮小の中で経営難に苦しんだ同社だが、2016年4月期に9期ぶりの黒字に転換。最新技術で、新たな市場を切り開く同社の成長戦略に注目が集まっている。その挑戦の礎となった経営改革の起点は、本業の強みを活かす取り組みだった。
近年の眼鏡業界は、「ファッションアイウエア」と呼ばれる若年層市場を開拓した製造小売のSPA事業モデルの企業が注目を集めた。「ファッション性&安価なセットプライスの訴求重視」が業界の流れとなり、老舗のメガネスーパーの経営は赤字に転じた。低価格の眼鏡市場は若者層が中心であるのに対し、同社の顧客は45歳以上のミドルシニア層が6割を占めていた。
メガネスーパーでは、安価な物を大量に売る市場の追随をやめ、顧客と長く向き合い生涯単価の上昇を目指す姿勢を明確に打ち出した。「売上げ重視から収益(粗利)重視」「強い企業体質の確立」など、改革のビジョンは明確だが、それを全国展開する320以上の店舗業務で実践するとなると課題は大きい。
それは単に、「顧客に向き合う」と言っても、同社のメインターゲットとなるミドルシニア層のレンズは若者向けの大量生産レンズとは異なり、顧客1人ひとりに合わせたオーダーメイドが必要だからだ。
さらに、画一的・標準的でない眼鏡、顧客の購入理由も千差万別、商品ごとの単価や粗利が複雑なため、収益の推移を把握するためには、その“中身”を細かくトレースしていかなくてはならない。POS、在庫管理、販売管理など、店舗運営を支えるさまざまなシステムから手作業でデータを収集するには、膨大な手間と時間が必要なため、従来は、月次でのレポートが限界だった。
店舗であれば、収益拡大のための目標は、売上げや粗利を延ばし、経費を抑え、営業利益を最大化すること。しかし、それ以前に、来店者数、購入者数、顧客単価を把握する必要がある。
これまでメガネスーパーでは、創業以来1,000万人の顧客対応で培った、どんな顧客にどんな商品をどう勧めれば購買につながる頻度が高くなるのか、というノウハウは、個々のスタッフの経験や店舗での継承で留まっていた。
そこで、店舗、エリアリーダー、ブロック、本社と、それぞれが必要とする“見方”でデータの収集と分析が可能なシステムが導入された。属人的販売方法から脱却し、「何が収益を生み出しているのか」を共有することで、各自、そして全社的な生産性を高めていくことが可能になった。顧客一人当たりの単価および粗利益率の上昇などにより業績が回復、2015年度決算で9年ぶりの黒字転換を果たしたのだ。
従来からある属人的ノウハウを“データ”として再検証してさらなる自社の強みにする。その試みは、2016年、チラシ配布の「ポスティング」の実施の実態を、配布者のスマートフォンを介した位置測定で把握し効率化を図るポスティングIoT実証実験へと発展。約20%の効率化を実現し、今後、顧客獲得のさらなる機会増進が期待されている。
同社は、“安く多く売る”と決別し、顧客の目の健康に寄り添う「アイケアカンパニー」を宣言。
その1歩1歩の先を、顧客1人ひとりとの間に培ったデータがしっかりと照らしている。
ITを活用したKPIマネジメントにより経営基盤を 強化販売スタッフがデータを活用して、 “収益”を意識した店舗運営
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