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これまで企業や自治体がWebサービスやアプリを開発する際、技術を持ったIT関連の企業に委託するのが基本でした。しかし、予算的な問題もあり、DX化がなかなか進まない状況になっています。
そんな中で、Webサービス等の開発にプログラミング知識やスキルを必要としない「ノーコード」の利用が求められるようになり、ノーコード推進協会による普及が始まりました。
さらに、2023年5月31日、ノーコード推進協会(No Code Promotion Association:NCPA)により、「ノーコード宣言シティー」プログラムの開始が宣言されました。プログラミングの技術が不足していてもWebサイトや業務システムが開発できるノーコード・ローコードのことは、これまでもデータのじかんで何度か取り上げてきました。
本記事では、ノーコード推進協会の活動内容やノーコード宣言シティーについて解説します。ぜひ参考にしてください。
ノーコード推進協会について解説する前に、そもそもノーコードとは何かを解説します。
ノーコードとは、ソースコードの記述無しにWebサービスやアプリ開発ができるサービスのことです。大きな特徴として、複雑なプログラミングが不要なため、初心者でも短期間で簡単に、自身のアイデアを反映させたものが開発できます。
ノーコードが注目され始めている背景として、まず日本のDX化の遅れが挙げられるでしょう。
2023年11月、スイスのビジネススクールIMDから発表された「世界デジタル競争力ランキング」において、日本は32位という過去最低ランクの非常に低い結果となってしまいました。この結果からもわかるように、日本はデジタル化、DX化において欧米先進国にかなりの後れをとっています。
このDX化を解消するにはデジタル化が必要となり、そのデジタル化への準備として、ノーコードによるWebサービスやアプリケーション等の開発が注目されているでしょう。
また、上記に加えてIT人材不足の解消においてもノーコードは注目されています。
DX化を進めるにあたって、IT人材を準備するとなると、コストも時間も大きくかかってしまいます。ですが、ノーコードの導入によって、育成する必要がないため、少しでも早く今いる人材でDX化に向けた取り組みが可能となるでしょう。
ノーコードツールを導入した場合、様々なメリットがあります。例えば、アプリ自体を数日間で作成できるようになります。実装までの時間が早く、さらに開発のための学習時間も必要ないため、全体を通してスピーディーな開発が可能となるでしょう。
また、Webサービスやアプリ開発にプログラミングの知識が必要ないため、発注しなくても作成可能になります。外部発注の必要がなくなると、費用削減や開発までの時間短縮にも繋がります。
一方で、ノーコードツール導入には、デメリットも存在します。ノーコードツールを提供している企業は、基本海外ばかりです。そのため、問い合わせも英語が必要になりますし、ツール利用時も翻訳しながら作業しなければなりません。
他にも、プラットフォームへの依存もデメリットとして挙げられます。使用ツールに依存するため、機能面やセキュリティ面で制限が出てきてしまうかもしれません。また、実装機能や拡張機能に制限があり、複雑な仕組みのサービス等を開発する場合には、ノーコードツールの導入はおすすめできません。
ノーコードについては以下の記事で詳しく解説しているため、ぜひご覧ください。
上記のようなノーコードの活用を普及する団体として、「ノーコード推進協会(NCPA)」が存在します。ノーコード推進協会とは、具体的にどのような団体なのでしょうか。
設立されたのは2022年9月1日。その設立趣旨として、世界デジタル競争力ランキング2020で28位(※筆者補足:2023年は32位に低下)という日本のデジタル活用の遅れに対し、「ノーコード」が抜本的な解決につながるという考えが示されています。
発起人企業は以下の7社。
また、2023年12月時点では以下の3部会が存在します。
ノーコード推進協会の主要な取り組みには、「ノーコード宣言シティー」やノーコードによる優れたプロジェクトを表彰する『日本ノーコード大賞』、電子冊子『ノーコード開発バイブル 2023 Summer』のリリース、セミナーの開催などがあります。
「日本のソフトウェア文化を変革する」というビジョンを掲げ、ノーコードを推進することで、日本をデジタル国家として世界でリードできるように活動に取り組んでいます。
ノーコード推進協会では具体的にどういった活動が行われているのでしょうか。本記事では、以下の二つの活動を紹介します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
一つ目は、セミナー開催などによる普及の促進です。
ノーコード推進協会では、毎月オンラインセミナーを開催しています。基本的には会員のみ参加可能なセミナーが多く、当日参加できなかった場合も、数日後には動画視聴が可能となります。直近12月は、「NoCode Summit in Franceで見えた世界の潮流」というテーマのオンラインセミナーが開催されました。
また、無料で参加できるオンラインセミナーも何度か開催されています。こちらは直近ですと2024年1月12日に開催予定であり、「DXはDよりX 〜在るものを使って会社を変える〜」というテーマで開催されます。無料でDXの取り組みについて学べる貴重な機会ですので、ぜひ参加してみてください。
セミナー開催のほかにも、ノーコード推進協会では様々な普及活動が行われています。例えば、書籍の出版やSNS連携、カオスマップの作製などが挙げられるでしょう。ノーコード特化のカオスマップでは、ノーコード・ローコード市場に存在する企業、サービスの一覧を可視化し、多様性を多くの人に認識してもらうことを目的として取り組んでいます。
二つ目は、技術認定制度「NCPA認定ノーコードパスポート」です。NCPA認定ノーコードパスポートとは、ノーコード人材を広げるためのNCPA認定制度です。
ノーコード人材となる人物たちを「ノーコードスキル要素」と「ノーコードスキルレベル」によって定義します。ノーコードスキルレベルでは、ノーコード活用による業務効率化が可能となるスキルまで3つの資格が定義されており、以下のように分けられています。
資格名称 | ノーコードスキルレベル |
ダイヤモンド | ノーコードを使った価値想像ができる |
エメラルド | ノーコードツールを活用して業務を効率化できる |
サファイア | 一部のノーコードツールを作成できる |
段階としては、「サファイア」→「エメラルド」→「ダイヤモンド」の順となっています。
最初にサファイアの資格を手に入れるには、「ノーコード基礎講座」と「ノーコードパスポート認定講座」を受講し、Webテストに合格しなければなりません。
「ノーコード宣言シティー」とは、自治体DXの推進を目的に職員向けノーコードツール活用勉強会、ノーコード導入伴走サービス、デジタル関連イベントのサポートといったプログラムがNCPAより提供される都市のことです。
2023年12月13日現在、以下の10都市が第1次宣言自治体として選定されています。
NCPAには、プログラムの宣言が行われた2023年5月31日時点で122の自治体・企業が会員として参画しており、そのベンダー企業からノーコード研修や業務改善コンサルティングが受けられるのもメリットのひとつ。また、寄付に応じて税額控除の措置が受けられる企業版ふるさと納税においてNCPA会員企業に宣言自治体が推薦される、ワーケーション開催地としても候補に挙がりやすくなる、といったメリットも提示されています。
第1次宣言自治体首長により出されたコメントでは、ノーコードの学習を通したデジタル人材の育成や自治体業務の効率化とともに、職員や市民が自ら変化を生み出していく端緒としていきたいという意気込みも見受けられました。また、デジタル化に積極的な自治体としてのアピール効果も「ノーコード宣言」により発揮されるでしょう。
ノーコードを活用して、自治体には具体的にどのような成果がもたらされるのでしょうか? ノーコード宣言シティーにも選定された鹿児島県奄美市、段階的な取り組みで具体的な成果を達成した大分県別府市の事例をご紹介します。
第1回日本ノーコード大賞を受賞した鹿児島県奄美市は、ノーコード業務改善プラットフォーム「kintone」やその連携サービス「FormBridge」「kViewer」「PrintCreator」を用いた効率的なデータ集計・共有環境の構築や効率化といった成果を達成しました。
災害時の被害者数や選挙投票者数といったデータをkintoneで集計。さらに、Webフォームとkintoneを連携させる外部サービス「FormBridge」で市民の声や集計係の報告を効率的に収集し、「kViewer」で情報を外部に公開します。さらに「PrintCreator」で帳票を出力、kintoneをハブに、ノーコード思考で実現されたさまざまな業務改善はほかの自治体での応用可能性も高いでしょう。
大分県別府市で行われたのは、ロボットにティーチングした作業を自動化できる「RPA」を用いた業務改善です。
同取り組みが始まったのは平成30年度。2度のPoC(概念実証)を経て、令和元年5月にプロジェクトは本格始動します。令和元年度は税部門を中心に34業務、令和2年度は福祉部門を中心に59業務、令和3年度は全庁に、と段階的に展開を進め、縮減できた業務時間は1,715時間→4,611時間→6,000時間と伸長。3年間の費用対効果額は「2,175万1,856円」と試算されています。
RPAシナリオ作成の82%が内製で行われており、情報部門が利用部門と共同で本番実行の最初の段階まで進め、そこからは利用部門のみで実行する手順が組まれているとのこと。
このように、利用する文化を段階的に浸透させていき、全部門を巻き込んだ大きな成果につなげやすいのもノーコード・ローコードの利点といえるでしょう。
ノーコード推進協会とは、企業や自治体のDX化に向けてノーコードの導入を推進する団体です。
日本のデジタル化が世界と比較して後れを取っている現状、誰でも簡単にDX化に向けたWebサービスやアプリ開発ができるために、ノーコードについての理解を深めなければなりません。
ノーコード・ローコードについて「IT音痴な自分には難しいのでは?」「結局できることには限界があるのでは?」と、懐疑的な気持ちを持っている方はまだまだ少なくないはずです。ノーコード宣言シティーの取り組みが成功すれば、そうした疑念が払しょくされていく端緒となるでしょう。
まだノーコード宣言シティーに選定されていなくとも、ノーコード・ローコードを活用し始めることはいつでも可能です。より具体的な知見やサポートが必要な場合は、NCPAに加入、あるいは相談してみてはいかがでしょうか。
(宮田文机)
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