宮西 京華(みやにし けいか)
保険会社で事務職をやっているデータマネジメント担当。歌い手動画を見るのが好き。
松田 紗友里(まつだ さゆり)
マーケティングが専門でSQLが得意。データ分析担当。ゲームやアニメが好き。
今林 健介(いまばやし けんすけ)
新設のデータ活用推進部署の部長。おいていかれないように勉強中。ゴルフや登山が好き。
データマネジメント解説、連載の第11回が始まりました。
さて、組織のMVVを決める集中討議が始まりました。今回の話はMVVの中でも「ビジョン」を決める時の話です。
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会議室のホワイトボードには大きく「MVV」と書かれていて、その周りには「Mission」「Vision」「Value」といった単語が並んでいる。
視線を彷徨わせていると、司会役の松田先輩が柔らかな笑みを浮かべながら議論を進めていく。
「さて、次はビジョンを決めましょうか」
松田先輩が集中討議を進めていく。
「宮西さん、大丈夫?『ビジョン』って言葉、最初はわかりにくいよね」
優しい声掛けに緊張がほぐれる。
「正直、ぼんやりとしかわかりません」
と正直に答えると、先輩はおっとりとした口調で丁寧に説明を始めてくれた。
「簡単に言うと、ビジョンは未来の理想像よ。私たちの組織がどんな世界を目指したいのかを表したものものなの。ミッションが『存在意義』だとしたら、ビジョンはその次の『どんな未来を実現したいか』に焦点を当てるの」
先輩から説明を受けたのだけど、私の中ではまだその概念がふわふわと漂っている。
「理想像」と聞けば何となくイメージできるような気もするけれど、組織の未来となると難しい。
「宮西さんも、自分の考える理想像を出してみて」
そう言われて、頭を巡らせてみる。けれども浮かんでくるのは、仕事とは全然関係ない自分のプライベートな理想像ばかりだった。
仕事を終えて家に帰ったら、ソファにゴロンと横になり、録画しておいたドラマを観る。
そういう穏やかな日常が、私にとっての「理想の未来」だ。仕事の議論の場で言うべきことじゃないのはわかっているけれど、頭の中ではそんな妄想が広がってしまう。
しばらくして、意を決して口を開いた。
「まだうまく言葉にできないんですが……みんなが安心して働ける環境が大事だと思います」
自分でも驚くほど平凡な意見だったけれど、松田先輩は「いい考えね」と優しく頷いてくれた。私の小さな妄想と、組織が目指す大きな目標は一見すると全く別物。でも、どちらも「未来」を見据えた考えであることに変わりはないのかもしれない。
会議はまだ始まったばかり。この先どんな話し合いが待っているのかはわからない。
自分なりに考えながら、一歩ずつ進んでいこうと思う。少なくとも、今この瞬間に少しだけ「組織の未来」というものが自分の中で現実味を帯びてきた気がした。
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ビジョンとは「未来の理想像」を描くものであり、組織の活動において極めて重要な役割を果たします。
ビジョンを定めることは、組織にとっての「夢」を共有することに他なりません。
そして、その夢があるからこそ、組織の方向性が明確になり、メンバー全員が同じ未来を目指して進む力を得るのです。
ビジョンを定めて共有することで組織の価値観が可視化され、判断基準として機能するようになります。
日々の業務やプロジェクトの選択において、「その行動がビジョンに近づくためのものかどうか」という問いが指針となります。この問いかけが、無駄なリソースの浪費を防ぎ、組織が持つべき優先順位を明確にするのです。
さらに、ビジョンがしっかり共有されていれば、メンバー一人ひとりが自分の役割を理解しやすくなり、働く意義やモチベーションが高まります。
ビジョンを策定するプロセスにも大きな意義があります。宮西さんたちのように、ビジョンの定義をめぐる議論を重ねる中で、メンバー間の価値観や意見が共通認識化されていきます。
この過程で生まれる共感や信頼感は、単に理想像を決める以上に組織の結束力を高める効果があります。
宮西さんのように、最初はぼんやりしたイメージしか持てなくても、業務を通じて少しずつその輪郭を明らかにしていけばいいのです。
よしむら@データマネジメント担当
IT業界、金融業界、エンタメ業界でデータマネジメントを担当した経験を持ち、現在もデータマネジメント担当している。データマネジメント業界を盛り上げるために、経験を通して得た知識の発信活動を行っている。
本記事は「よしむら@データマネジメント担当」さんのデータマネジメントを学べることをコンセプトの4コマ漫画「AI事務員宮西さん–データ組織立ち上げ編」のコンテンツを許可を得て掲載しています。
保険会社で事務員として働く宮西さんは、会社がAI時代に対応するために新設したデータ部門に突然配属されました。事務員からデータマネジメントのリーダーへと成長していく宮西さんの奮闘記を描いた物語。
本シリーズ「データ組織立ち上げ編」では、宮西さんがデータ利活用組織を立ち上げるまでの挑戦を描きます。IT業界、金融業界、エンタメ業界でデータマネジメントを担当した経験を持つ著者「よしむら@データマネジメント担当」さんが豊富な経験を基に執筆しています。データ組織の一員の皆様には、ぜひご一読ください。
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