BI(Business Intelligence)ツールの利用において起こりがちなのが、作ったレポートやアウトプットがビジネス上の意思決定に使われず、参考情報にしかならないケースではないでしょうか?
データ分析・可視化には、分析の計画、データの収集・加工、分析・可視化、レポーティング、ダッシュボード化といった多くのプロセスがあります。特にデータの収集・加工には、新規案件の場合はかなりの工数を取られるでしょう。
工数を掛けたのに、参考程度にしかならない情報をアウトプットしてしまう――。それはデータを受け取る側、分析を行う側の双方にとって生産的ではないでしょう。そんな事態を避けるためには、どんなことを行っていく必要があるでしょうか?
今回は一般的にデータ分析プロジェクトで起こりがちな事例とあわせて、使われるBIにしていくために考慮すべき事項を紹介していきます。
ここからは、使われるBIに必要なプロセスについて解説していきます。主に以下のようなプロセスが必要だと考えられており、特に1・2・4のプロセスが重要です。各プロセスにおける考慮点について筆者の経験をもとに紹介します。
そもそも分析が使われない根本的な原因は、「Issueの整理」のプロセスを曖昧にしていることにあると考えています。分析フェーズに入ると「データ加工が8割」と言われます。ですが、データからインサイトを得てビジネス価値に転換していく一連のプロセスのなかでとらえると、「Issueの整理でデータ利活用の8割は決まる」としても過言ではありません。
ですが、この「Issueの整理」をきちんと行えないケースがたくさんあるのが実情ではないでしょうか?
このプロセスはステークホルダーが多く、ビジネスオーナーとしても本質的に何ができればよいか分かっていないケースもあります。ケースバイケースな要素が大きく、どんなときにも通用する「正解」があるわけではありません。このプロセスにおいて気をつけるべき心構えについては連載5回目「BIツールを用いたデータ可視化業務の要件定義プロセス」でもご紹介しています。
仮説検証のために必要なデータを判斷し、どの軸で、どう集計し、どう比較するか、またはどんな統計モデルを利用して評価するかの方針を立てます。また、エンドユーザーとアウトプットイメージのすりあわせも行っておくとよいでしょう。
アドホック分析の場合は、仮説検証したい課題に関する指標の整理をします。また、どの軸で集計・比較を行うのかなどを記載しておきます。定形ダッシュボードの場合は、ラフイメージなどを用いながら認識のすりあわせを行いましょう。
ここではいくつか分析のケースに分けて検討する分析手法についてご紹介します。
分析手法 | ||
---|---|---|
アドホック分析 | 原因を知りたい | クロス集計・可視化 |
シミュレーションしたい | KPIツリー作成とExcelベースのシミュレーション構築 回帰系の統計分析 機械学習 |
|
特徴を知りたい 分類・ラベリングし、比較したい |
クロス集計・可視化 クラスタ分析 機械学習 |
|
どっちがよかったか知りたい | 検定 | |
ダッシュボード開発 | UXジャーニーとKPI定義 |
分析・可視化プロセスにおいて大事なことは次の3つです。
言わずもがなですが、データを使って意思決定を行う以上、それが正しい数値であることが大前提です。表計算ソフトやBIツール側で複雑な集計を行っていると誤った数値になるケースもあります。ここに対しては様々なシチュエーションで起き得るので有効な手段を述べるというよりはスタンスの話をしたいと思います。
組織にあなたしか分析できる人がいない場合は、間違った状態のアウトプットがそのまま事業の意思決定者の知識としてインストールされ、誤った施策の実施を促してしまうかもしれません。
実際にはそのようなケースは少ないと思いますが、データは人の行動を変えてしまう力を持っています。自分のアウトプットに自信を持つ必要はありますが、その一方で、前提条件の確認や、データが意図した通りに抽出・集計されているかを疑いながら作業をする心構えが重要です。とくに分析に慣れてきて油断が生まれたときや、期日が短い分析タスクを行う場合に起こりやすいので注意しましょう。
他人からのレビューを積極的に受けましょう。チームに相談する人がいる場合は、分析の途中でレビューを受けるのもよいでしょう。また、レビューを受ける際には、レビュワーの人はあなたの分析に穴がないかどうかとの観点で確認します。そのため、否定的かつ詰めるようなコミュニケーションが発生する場合があります。ですが、レビュワーへのリスペクトを忘れてはいけません。データはいろんな視点で見られることによって、より深く、精度が高いアウトプットに近づいていくのです。
分析・可視化を行っていると本来の目的を見失ってしまうケースが出てきます。「Issueの定義」「分析の要件定義」にて行った内容をドキュメント化して、常に自分が答えを出す必要がある問いに立ち戻れる状態を作ることが大切です。
定常的にモニタリングされるダッシュボードの場合は以下が重要になります。
結論部分とその内訳を整理し、結論部分からドリルダウンしてデータを追っていける設計にしましょう。例えば売上をモニタリングするダッシュボードであれば、Topに売上の実数、推移を表示します。そこから内訳を見られる比較セクションにアクセスできるとよいでしょう。
一般に出回っている書籍を一読すると要点をつかめます。可視化であれば、『Fundamentals of Data Visualization』(O’Reilly Media),『Google流資料作成術』(日本実業出版社)などがおすすめです。
ダッシュボードやレポーティングは作って終わりではありません。現場がきちんと数字を見る機会を意図的に作っていく必要があります。そのために必要なことは次の2点です。
BIツールにはメール送信やslack通知などのPush型コミュニケーションの基盤も備わっておりますが、一番オススメしたいのが、会議体の運用とセットでダッシュボードを利用していくことです。
例えば売上やコンバージョンをモニタリングするのであれば、数字の進捗を確認する場が少なからずあります。そのときに、その場でダッシュボードを見ながら数字を確認してもらえるようにしましょう。
最初はBIエンジニアやアナリストの人が、ダッシュボードを用いながら数字の報告を代理で行ってもよいかもしれません。現場の人が自分でダッシュボードを使って説明できるまで、BIエンジニアやアナリストが伴走する気構えが重要です。
筆者はビジネスサイドの職務とデータアナリストを兼務しながら、上記を実現していました。
ビジネスサイドの施策はQや半期単位で常に変動します。
それゆえ、一度作ったダッシュボードはすぐに廃れます。もちろんGeneralな数字をモニタリグするダッシュボードは長く使われるケースはありますが、その場合は施策にあわせて新たなダッシュボードが増え続ける傾向があります。データを見る習慣が定着し始めると、不要なダッシュボードがどんどん増えていくでしょう。また、それに伴ってビジネスサイドからの要望も増え続け、アナリストやBIエンジニアが疲弊していくという事態に陥ることもあります。
そのため、機能型組織が考えることは以下です。
この記事を書いた方
株式会社スマートドライブ アナリティクスエンジニア 西澤 祐介さん
HRテック系企業でデータアナリストとしてマーケ、プロダクト、事業企画領域でアナリティクスを推進。その傍らでtableauのコミュニティにも貢献し、20名近くのtableau ユーザーを育成。2020年スマートドライブにジョイン後はLookerを使用したSaaSエンベッドBIエンジニアリングとアナリティクスサービスを提供している。
Twitter:https://twitter.com/zwt1n
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