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みなさんは、年間で“サメが殺害する人間の数”と、“人間が殺害するサメの数”、どちらが多いか知っていますか?
先日『海底47m 古代マヤの死の迷宮』(2019)という映画を観ました。海底の迷宮に興味本位で入り込んだ女子高生らが人食いザメに襲われるというストーリーです。良くも悪くもタイトル通りB級感満載の作品だったのですが、それ以上に記憶に残ったのが以下のエンドロールの文言。
確かにサメは「人を食べる」「コワイ」と思われがちですが、それは映画によって植え付けられたイメージ。彼らは不当な印象操作の被害者なのかもしれません。
本記事ではデータ的に上記が正しいのか、病気や事故・ほかの動物と比べてどれだけ恐ろしいのかなど“サメの真実”を「フロリダ自然博物館」のデータなどを参照しつつご紹介します!
フロリダ自然博物館が公開しているその名も「国際シャークアタック(サメの襲撃)ファイル」によると、2019年にサメが殺害した人数は5名、そのうちサメに挑発的な行為無しで襲われたのは2名だけでした。同ファイルによるとサメに殺害される人数の年平均は4名だということです。
なお、非死亡事故も含めた同年のサメにより襲われた人数の合計は140名、挑発的な行為無しで襲われたのは64名でした。
※青ドットが死亡なし、赤ドットが死亡
※引用元:Yearly Worldwide Shark Attack Summary┃FLORIDA MUSEUM
「毎年殺害されるサメの匹数が1億匹」という数字のソースはおそらく2013年7月に学術誌「Marine Policy」に掲載された論文で、漁獲量・死亡率に基づくサメの年間死亡数は、2000年で約1億匹、2010年で約9,700万匹と推定されるということです。サメが殺害される理由はフカヒレのための漁やゲームフィッシング、ほかの魚との混獲などさまざま。
国際連合食糧農業機関(FAO)の資料によると、2000年~2018年にかけてサメの捕獲量は微減といったところで、いまだに年間数千万匹が殺害されていることはほぼ間違いないでしょう。
引用元:International Plan of Action for Conservation and Management of Sharks┃Food and Agriculture Organization of the United Nations
サメと人間の関係性は“圧倒的にサメが人間に脅かされる関係”であることがわかりました。とはいえ、数件とはいえ死亡事故が起こっているのも事実です。もう少し詳しく、「サメの襲撃ファイル」を見ていきましょう。
1580年から現在までの間に「挑発なしでサメに襲われた人数」が最も多い国はアメリカ合衆国で1,483名。次点がオーストラリアで652名でした(2020年10月25日時点)。ちなみに、日本の被害者数は15名です。1580年といえば「本能寺の変」の2年前でありすべての事故が記録されているとはとても思えませんが、それでもサメに襲われるのは数世紀さかのぼってもわずかな確率だということは確かだとわかります。
参照:Confirmed Unprovoked Shark Attacks (1580-Present)┃FLORIDA MUSEUM
以下の表ではアメリカにおける死因別のリスクを比較しています。
死因 | この死因で亡くなる人の割合 |
心臓病 | 5人に1人 |
がん | 7人に1人 |
脳卒中 | 24人に1人 |
院内感染 | 38人に1人 |
インフルエンザ | 63人に1人 |
自動車事故 | 84人に1人 |
自殺 | 119人に1人 |
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌) | 197人に1人 |
転落 | 218人に1人 |
溺死 | 1,134人に1人 |
バイク事故 | 4,919人に1人 |
飛行機/宇宙船事故 | 5,051人に1人 |
過度の風邪 | 6,045人に1人 |
太陽/熱 | 13,729人に1人 |
落雷 | 79,746人に1人 |
電車の事故 | 156,169人に1人 |
花火 | 340,733人に1人 |
サメの襲撃 | 3,748,067人に1人 |
引用元:Annual Risk Of Death During One’s Lifetime┃FLORIDA MUSEUM
アメリカの2003年の人口を元にして導き出された数字のため、現在の日本とは異なる点も多いかもしれません。しかし、サメによる死亡リスクが桁違いに低いことは今も変わらないでしょう。
世界一サメによる事故が多いアメリカでさえ、花火事故や落雷を心配した方が合理的だということなのですから。
サメが人間の死因としてほとんど考えなくていいくらいの存在だということは十分わかりました。
ではここで、ほかの生物と比較してサメはどれほどの脅威なのかを見てみましょう。
ビル・ゲイツのブログ「GatesNotes」の2014年の記事にて“年間で多くの人間を殺す動物リスト”が発表されています。同記事の副題は「サメは臆病、この獣に比べたら」。ビル・ゲイツもやはりもともとはサメに凶悪なイメージを抱いていたようですね。
しかし、統計から導き出された人間の死因となる動物ランキングの第一位は蚊(72万5,000人/年)、第二位は人間(47万5,000人/年)です。年間60万人以上の死因となるマラリアを媒介する蚊が最も恐ろしい獣だというのは一見意外ながらよく考えると納得感があります。
引用元:Bill Gates「The deadliest animal in the world」┃GatesNotes
そのあと蛇(5万人/年)、犬(2万5,000人/年)、ツェツェ蠅(1万人/年)……とランキングは続き、サメはオオカミと並んで象(100人/年)以下に位置します。
サメもオオカミも映画などで恐ろしいイメージを植え付けられていますが、まずもってほとんど人間が望まず接触する場面はありません。またサメは臆病な性格でもあり、数ある動物の中でも人間に対するリスクは低いということです。
恐ろしいイメージを持つサメの実態について各種データ・統計を参照しつつ調査しました。
結果として見えてきたのは「サメは人間にとってほとんど脅威ではない」という真実です。
むしろ人間の乱獲により種の危機にさらされている側面があるとのこと。
恐ろしいイメージは創作物の中で楽しむだけにして、サメにもうすこし優しさを持って接してもよいかもしれませんね!
【参考資料】 ・『海底47m 古代マヤの死の迷宮』公式サイト ・伊能昌幸「「海底47m 古代マヤの死の迷宮」ネタバレ全開感想」┃note ・Yearly Worldwide Shark Attack Summary┃FLORIDA MUSEUM ・Author links open overlay panelBorisWormaBrendalDavisaLisaKettemeraChristine A.Ward-PaigeaDemianChapmanbMichael R.HeithauscSteven T.KesseldSamuel H.Grubere「Global catches, exploitation rates, and rebuilding options for sharks」┃ScienceDirect ・International Plan of Action for Conservation and Management of Sharks┃Food and Agriculture Organization of the United Nations ・Annual Risk Of Death During One's Lifetime┃FLORIDA MUSEUM ・サメの絶滅とたたかう研究者┃GLOBE+ ・Bill Gates「The deadliest animal in the world」┃GatesNotes
(宮田文机)
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