九九%の私たちにとって、欠乏をもたらしているのは、資本主義なのではないか
斎藤幸平の『人新世の「資本論」』
前述の通り、資本主義社会ではさまざまな競争が行われています。そして、競争では必ず勝つものと負けるものが生じ、その結果として貧富の差が生じます。
実際、2021年1月に米政策研究所(IPS)と税の公正推進団体ATFが発表した報告書によると、アメリカでは、数百万人が貧困に陥る一方で、富裕層の資産が急増していることが明らかになりました。
パンデミックや災害など、さまざまな災禍は、資本を持たないものの生活を奪う一方で、資本を持つものにとってはさらに資本を増大させるチャンスとなるのです。
こうした競争社会で地球の資源が尽き果ててしまえば、一部の資本家が豊かな生活を維持し、富を増大させる一方で「持たざる」99%の人々が、残ったわずかな残骸を奪い合う「野蛮状態」に移行することは想像に難くありません。
冷笑主義を捨て、九九%の力を見せつけてやろう。
斎藤幸平の『人新世の「資本論」』
そこで本書では、マルクスの晩年の思索から従来の共産主義とも異なる新たな「コミュニズム」を提案します。
本書で「脱成長コミュニズム」と呼ばれる社会は、これまでの共産主義社会のように中央集権的に管理するのではなく、人々の相互扶助を強化することで成り立ち、グローバル・ノースにおける経済的な成長をストップし、地球環境と共存しながら、消費以外の道筋で人々が豊かになれるといいます。
これまでの歴史における共産主義社会の失敗を学び、当たり前に資本主義社会で「成長」を求められてきた私たちにとって、一見受け入れ難いようにも思える「脱成長コミュニズム」ですが、本書を読めば、その必要性を実感できるのではないでしょうか?
この「脱成長コミュニズム」に共感できるか、は人それぞれだと思いますが、本書から学びとれる資本主義社会におけるさまざまな課題は知っておいて損のないものです。
自分は「99%の一人だ」と感じる方はぜひ本書を手にとってみてください。
【参考引用サイト】 ・アマゾンで「売れているビジネス書」ランキング | Amazon週間ビジネス・経済書ランキング ・地球温暖化の原因と予測 ・Kohei Saito - My portal ・米富裕層の資産、114兆円増 新型コロナで貧富の格差さらに拡大
(大藤ヨシヲ)
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