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NCVの大きな売りは、セルロースナノファイバーを使用して車体を軽量化し、燃費を向上させることで温室効果ガスの排出削減に繋がるというものです。実際、車体を10%軽量化すれば車両1台当たりのCO2を2000kg削減できるという試算があります。これは日本人1人当たりの年間CO2排出量に相当します。
それ以外にもNCVは
・高リサイクル性
・再生可能資源
・カーボンニュートラル
といった特性を備えており、製造から廃棄に至るまでのライフサイクル全体で見た環境負荷が低いと謳われています。
長年研究を積み重ねた結果、矢野教授のチームはCNF複合プラスチック作成にかかるコストを10分の1まで減らすことに成功。2016年には、環境省委託プロジェクト「NCV(ナノセルロースヴィークル)プロジェクト」が立ち上げられました。ここでは官民22機関が連携し、セルロースナノファイバーを活用した自動車の製造を目指しています。
いいことずくめに聞こえるNCVですが、大量生産・販売に向けては多くの課題が。
まず、原材料のサプライチェーンを確立しないことには、製品の流通量を一定に保つことができません。また、コストの大幅削減に成功したとは言え、まだ従来の素材と競合できるほど安価ではなく、さらなる低コスト化がマストです。
現時点ではプラスチックとの混合で実用化を目指しているセルロースナノファイバー。しかしプラスチックに混ぜてしまっては、環境負荷の低さというメリットが半減してしまいます。多種多様な素材との混合を可能にすることで、ライフサイクル全体を通しての環境負荷のさらなる軽減が期待されています。
2050年までには350兆円規模に成長するという地球温暖化対策マーケット。セルロースナノファイバーを使用した様々な製品がマーケットを牽引していくことは間違いありません。大きなポテンシャルを秘めたこの発明の実用化に向けては、国内の官民が投資を惜しまず先導していく必要があります。そうすることで日本は、環境保護と経済成長という一見矛盾した目標を同時に達成できるかもしれないのですから。
参考リンク: 木からつくる自然なクルマ_ナノセルロースヴィークル(NCV)への挑戦【特集】“木”から車ができた!?環境に優しい『セルロースナノファイバー』がすごい 鉄の5倍の強度で重さは5分の1
(佐藤ちひろ)
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