佐々木:
太古さんのご経歴を教えてください。
太古:
私は2007年にダイハツに入社し、長らくエンジンの開発に携わってきました。エンジン開発の現場でもデータは常に扱ってきたのですが、本格的にAIや機械学習に関わり始めたのは2017年頃からです。インダストリアルアドバイザーとして参画している滋賀大学での取り組みなどを通じて、データ分析やAIへの関心が高まり、MBA取得を経て「AIや機械学習をどう活用していくか」という方向にシフトしました。
その頃からエンジン開発への機械学習の導入や、社内のデータ活用推進にも取り組むようになり、東京支社では採用やデータ関連ラボの立ち上げにも関与してきました。
他には、AI推進に必要な多様な知識と手法を学ぶため、京都大学エグゼクティブ・リーダーシップ・プログラム(ELP:一年制リベラルアーツプログラム)にも参加しました。本質や原理原則の理解など今後世間が変わったとしても応用して対応していけるような考え方を幅広く学びましたね。現在は30名弱のメンバーを率いながら、社内外での事例発信にも取り組んでいます。直近では、JAPAN HR DX AWARDSの優秀賞やForbes Japan CIO Award 2024-25 チェンジレガシー賞の受賞などもあり、少しずつ社内外での認知も進んできました。また、自らコミュニティを立ち上げたり、様々なコミュニティに参加したりしながら学びを深め、社内活用につなげています。
データ界隈100人カイギ キュレーター 太古 無限さん|ダイハツ工業株式会社 DX推進室 デジタル変革グループ長 (兼) 東京LABOシニアデータサイエンティスト (兼) DX戦略担当)
佐々木:
「データ界隈100人カイギ」にキュレーターとして参加される経緯として、きっかけや背景があればぜひ教えていただけますでしょうか。
太古:
もともと、Kaggleのコミュニティでの活動などを通じて、データ分析界隈の方々やコミュニティから関心を寄せてもらう機会がありました。そうしたご縁の中で「データ界隈100人カイギ」の構想を聞き、これは自分もぜひ力になりたいと思ったんです。
僕自身、以前から「自分にできることがあればどんどん協力したい」と思っていたので、今回お話をいただいたときは自然と「ぜひご一緒したい」と感じました。こうしてキュレーターという形で関わることができ、とても嬉しいですね。
実は「100人カイギ」というコンテンツ自体は、以前から存在は知っていました。今回のお話をいただく以前から、「こういうのがあるよ」「一度行ってみたら?」と友人たちに勧められることもあり、興味を持っていたんです。ただ、なかなか予定が合わず、これまで参加の機会がないままでした。そんな中で、今回いきなり参加者としてではなく、運営側として関わることになったのは、まさに絶妙なタイミングだったと思っています。
僕自身、これまでも人を集めてイベントを企画・運営することに携わってきており、そういう場づくりは決して苦手ではありません。むしろ得意な方だと思っているので、今回もきっと楽しみながら関われるのではないかと感じています。
佐々木:
「データ界隈100人カイギ」という場に、どんな期待をされていますか。
太古:
やはり「データ界隈」と銘打っている以上、この分野全体を盛り上げたいという強い思いがあります。今回、私だけでなく他のキュレーターの方々も、それぞれ得意な分野を持った著名な方々が揃っています。だからこそ、普段なかなか集まらないような「ちょっと変わった軸」の方々にも参加してもらって、「データ界隈って実はこんな面白い一面もあるんだ」ということを広く知ってもらいたいです。
その結果、データに興味を持つ人が一人でも増えれば嬉しいですし、特に若手の人たちにもどんどん参加してもらいたい。また、今まで「データって難しそうだな」と苦手意識を持っていたようなご年配の方々にも、「なんだ、意外と大したことないじゃん」と感じてもらえたら、それも大きな成果だと思っています。そんなふうに、誰でも気軽に関われる場にしていきたいと考えています。
佐々木:
キュレーターとして、どんな会を企画してみたいと考えていますか?
太古:
今回は、4つの企画を構想しています。テーマはすべて「データ界隈で生きる人たちの多様なストーリーとリアルな実践」に焦点を当てています。
1つ目は、「学びのヒーロー」に認定された人たちが集まって、どんな学びを得て、今どんなことをしているのかを共有する会です。実は、「Benesse Reskilling Award 2024」という賞の受賞者のひとりとして、僕も昨年選ばれました。ただし、表彰式では少し会話したくらいで、そこからどう活躍してるかまではあまり見えなかったと思っていて。でも、そんな人たちがリアルに集まって、「自分の学びをこう活かしてるよ」と発信するだけで、「あ、自分にもできるかも」と思える人が増えるんじゃないかと。そんな敷居を下げるような場にしたいです。
2つ目は、製造業におけるデータ活用に光を当てた企画です。僕自身、製造業のIT部門に所属しているのですが、メディアで語られるデータサイエンティスト像は、どうしてもIT系やスタートアップが中心ですよね。でも実際には、製造業の現場でも面白い取り組みがあるし、データ活用も進んでいます。ただ、語られることが少ない。だからこそ、現場で働く人たちのリアルを届けたいと思っています。
3つ目は、「Master of DATA Saber※」たちによる学びと育成を語る会です。90日間でBIツールを習得するプログラムに参加し、そこからマスターとして後輩を育てている人たちの話を聞きたいなと。自分がどう学び、どう教える側になっていったのか。教育という行為が、自分自身の成長にどうつながっているかも含めて共有してもらえたら面白いと思っています。
※DATA Saberとは、データを通して世界を理解し、それを人に正しく伝える努力を怠らず、人の心を動かし、行動を促す者。Master of DATA Saberは、10名以上の弟子を持つ者のこと。
そして4つ目が、Kaggle Grandmasterたちによるトークセッションです。実は僕、Kaggleのコミュニティ運営もしていまして、年に何回かイベントをやっています。最近は日本でもグランドマスターが増えてきて、そういうトップランカーの方たちがどんな経緯でそこに到達したのか、どんなマインドで日々取り組んでいるのかを語る機会があってもいいんじゃないかと考えました。同じテーマで5人が話す、というのはこれまでなかった試みですが、きっとこれから挑戦しようという人たちへの大きなヒントになるはずです。
関西Kaggler会
太古さんが主催する有志のKaggleコミュニティ。平日昼間にもかかわらず100名以上のデータサイエンティストが集まり、企業や組織の枠を超えた交流の場となっている。
佐々木:
日頃データを扱う中で大事にしている信念や、データ活用におけるこだわり、心がけていることがもしあれば教えていただけますでしょうか。
太古:
データ活用において私が最も大切にしているのは、「何のためにそのデータを使うのか」「解析する目的は何なのか」をしっかり理解したうえで取り組むことです。もちろんデータ分析自体が面白いという側面はあるのですが、その面白さの先にどんな価値があるのかを考えないと意味がないと考えています。
具体的には、現場や関係者に自ら積極的にヒアリングを行い、実際の課題を把握し、それを解決するためのデータ分析を行うという流れを意識しています。分析結果が会社や現場にどう貢献するのかを考えながら、実践的な事例づくりを重ねていくことが重要だと思っています。
佐々木:
私も環境によっては、「DX」や「データ」などの言葉だけが独り歩きしてしまっている場面も少なくないと私も感じています。だからこそ、目的を理解し、関係者間で意識を揃えたうえで活用する必要があると感じています。特にDXやデータ活用はコストもかかりますし、「こういうメリットがあるからやっているんだ」という共通認識があってこそ、会社全体として前向きに進めていけるものなのかなと改めて感じました。
太古:
だからこそ、僕が一番大事だと思っているのは「データ分析ができる環境づくり」なんです。実際、基盤づくりは多大な費用が必要で、大きな投資をしても短期間では費用対効果が見えにくいという難しさもあります。
なので、僕自身は普段、社内で「データ分析の環境が欲しい」「こういうことをやりたい」という声を少しでも多く集める取り組みをずっと続けています。そうやって少しずつ仲間を増やしていけば、会社としてもデータ活用できる基盤がより整いやすくなると思っているからです。
ただし、そのような環境を作るだけではなく、「その環境を使いこなせる人たち」を増やしながら、同時に環境も育てていくことが僕の理想です。今回の「データ界隈100人カイギ」も、そういう仲間づくりのきっかけになれば嬉しいと思っていますし、「なんだ、大したことないじゃん」「これなら自分もできるかも」と感じてくれる人がどんどん増えてくれたら、僕としては大成功です。
佐々木:
「実務環境を作ること」と同時に「人材育成」も含めた組織づくりがすごく重要なんだなと感じました。データと「文化」や「人」という観点で、普段意識されていることについてもお聞きしたいと思います。
太古:
やっぱり私が一番大切にしているのは「人づくり」です。 私は、自動車会社にいますが、これから車もどんどんデジタル化して、まるでスマホのようになっていくと思っています。
たとえばボタンひとつで車が来るみたいな未来ですよね。そんな時代に、社内の人たちがデジタルに明るくないと、やっぱり面白い車は作れないと考えていて。だからこそ、「デジタルって難しくないよ」「面白いよ」というハードルを下げていく活動をずっとしています。
デジタルを使って、ワクワクしながら車作りができるような人を増やしたい。まずは社内でそういう人材を育てていくこと、それがすごく大切だと思います。それだけではなく、社内で培ったノウハウを外にも発信していきたいんですよね。
他にも「やりたいけどできない」と悩んでいる方はたくさんいるので、そういう人たちにも還元できたらいいなと。だから「データ界隈100人カイギ」のような場で、面白い企画や取り組みを発信して、「データって面白い」と感じる人がひとりでも増えたら嬉しいです。
各会社で孤独に頑張っているデータサイエンティストの方々が、「面白い仲間がいる」と思って集まれるような場を作りたいですね。そういう人が増えたら、自然と文化も変わって「面白いことしてるじゃん!」と新しい取り組みがどんどん生まれてくると思うので、そういう文化づくりも目指して取り組んでいます。
佐々木:
これから登壇を考えている方々に向けて、メッセージをいただければと思います。いかがでしょうか。
太古:
ぜひ気負わずに、好き勝手喋るぞという感じで臨んでほしいと思っています。僕の感覚ではデータ界隈の人はみんな優しいし、それぞれに苦労も経験してきています。会社の中でも外でもさまざまな活動をして、その中で壁にぶつかりながらも、その壁を突破してきた方々が多いと思うんです。
もちろん今まさに苦労している最中の方もいらっしゃるかもしれません。だからこそ、「今こういうところで苦労してるんだよ」という話をぜひ登壇でシェアしてほしいんです。実は自分だけが抱えていると思っている困りごとも、意外とみんな同じようなところでつまずいていることが多いので。
その困りごとを解決した経験を持つ人たちも必ず一定数いるので、話してみると「あ、それうちもだった」「うちではこうやって解決したよ」という交流が生まれる。そうすれば、きっと楽しい場になると思っています。なので、ぜひ肩の力を抜いて、「困ってることでも、できたことでも、まずは話してみる」というスタンスでご参加いただけたら嬉しいです。
イベント名 | データ界隈100人カイギ#02「ラーニングヒーロー会」 |
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開催日時 | 2025年7月18日(金) 18:30~21:00 |
会場 | ウイングアーク1st株式会社コラボスペース 〒106-0032 東京都港区六本木三丁目2番1号 六本木グランドタワー36階 |
主催 | データ界隈100人カイギ運営事務局 |
対象者 | データに携わる全ての方 ・ITツールベンダー ・コンサルタント ・Chief Data Officer(CDO) ・データサイエンティスト ・エンジニア ・ビジネストランスレーター など |
参加費・定員 | ・現地参加:1,000円(定員:40名) ・オンライン参加:500円(定員:20名) ・学生の方:現地・オンライン参加ともに無料(定員:10名 ※各5名) |
URL | 2025年07月18日開催|データ界隈100人カイギ#02|ラーニングヒーロー会 |
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