日本の未来を左右する重大な課題として、少子化がますます深刻化しています。2023年に生まれた子どもの数は、過去最低の727,277人を記録。合計特殊出生率も1.2にまで落ち込みました。このままでは、将来的にどのような影響が生じるのでしょうか?本記事では、日本の少子化問題の現状とその背後にある要因、さらには政府の対策や国際的な視点からの比較について詳しく解説します。経済や社会保障制度に重大な影響を及ぼすこの問題を一緒に考えてみましょう。
少子化の指標として度々使われる「合計特殊出生率」。これは「15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの」で「1人の女性が一生の間に生む子どもの数」のおおよその値を算出するものです。
合計特殊出生率が2以上なら人口は増加傾向に、2未満なら減少傾向に転じます。
この合計特殊出生率には以下の2つの集計方法があります。
「期間」合計特殊出生率は特定の期間(1年間)の出生状況に着目し、その1年間において15~49歳までの女性の出生率を年齢別に算出し合計したものです。
この値は直近の情勢を反映しやすく短期的な状況を把握するためには有用な一方、「1人の女性が一生の間に生む子どもの数」としては正確性に欠けます。
一方の「コーホート」合計特殊出生率は出生状況を世代別ごとに計測したもので、同一年代生まれの女性について5~49歳までの各年齢で出生率を計測し、積み上げた値です。これはつまり「世代ごとの出生率」に該当します。「1人の女性が一生の間に生む子どもの数」としてはコーホート分析による「特定の世代が50歳になった時点の値」というのが正しくなりますが、これを算出するには測定対象の世代が50歳になるのを待たなくてはならないので、短期的な状況を把握するために、一般的には「期間」合計特殊出生率が用いられています。
以下のグラフは、過去70年以上にわたる日本の出生率の推移を示しています。
日本の合計特殊出生率は2023年に1.20と過去最低を記録しました。この低出生率の背景には、以下の三つの要因が挙げられます。
・経済的な不安定:若年層は将来の職業安定や収入の見通しに不安を感じ、結婚や出産を躊躇する傾向があります。
・生活費の高騰:生活費が収入の増加に追いつかず、子育てにかかる経済的負担が大きいことも少子化の一因です。
・性別役割の固定観念:伝統的な性別役割の固定観念が根強く、女性に対する家事・育児の負担が大きいことも問題とされています。
日本の人口は現在約1億2500万人ですが、今後もこの傾向が続けば、2070年までに約30%減少し、8700万人になると予測されています。このままでは、国民の4割が65歳以上の高齢者になる見込みです。これにより、労働力不足や経済の停滞が懸念され、国の社会保障制度や経済基盤に重大な影響を及ぼす可能性があります。
少子化は日本だけの問題ではなく、他の先進国でも共通の課題です。例えば、アメリカやヨーロッパの多くの国でも出生率の低下が見られますが、日本の状況は特に深刻です。これらの国々では、経済的な支援や育児支援の拡充、男女共同参画の推進など、多岐にわたる対策が講じられていますが、日本でも同様の取り組みが急務です。
日本政府は、出生率の低下に対処するための政策を次々と打ち出しています。例えば、育児休業の拡充や経済的支援の強化が進められており、2024年度には5.3兆円(約340億ドル)の予算が組まれています。しかし、専門家はこれだけでは不十分であり、文化的な変革が必要だと指摘しています。
日本の少子化問題は、経済的な課題だけでなく、社会的・文化的な問題も含んでいます。出生率の低下が続けば、国の未来に大きな影響を及ぼすことは避けられません。持続可能な社会を構築するためには、経済支援とともに、社会全体の意識改革が求められます。
(大藤ヨシヲ)
・去年の合計特殊出生率 1.20で過去最低に 東京は「1」を下回る・人口動態調査 人口動態統計 確定数 出生上巻 4-1 年次別にみた出生数・出生率(人口千対)・出生性比及び合計特殊出生率 | 統計表・グラフ表示・Japan’s Birth Rate Falls to a Record Low as the Number of Marriages Also Drops – The Diplomat
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