出生率の減少と長寿化によって引き起こされる少子高齢化問題。日本経済を揺るがす課題のひとつとして、耳にしたことがありますよね。
しかし、「人口ボーナス」「人口オーナス」という言葉については聞いたことがないという方も多いのではないでしょうか? 人口の増減が経済に及ぼす影響をより端的に表すキーワードです。
この記事では、 人口ボーナス・人口オーナスとは何なのかについて解説。日本経済と人口の深い関係について知れば少子高齢化の問題点がよりわかりやすくなるはずです。
“生産年齢人口が従属人口を大きく上回るもしくは増加し続けている状態”を「人口ボーナス」といいます。
生産年齢人口とは、15~64歳のいわばメインで働いて経済を支える人々のこと。従属人口は14歳以下もしくは65歳以上の子ども・高齢者を指します。人口ボーナス期の国は教育や医療、年金などの社会保障に対する負担が少ない一方で税収が多く、社会インフラの整備が進みやすいです。さらに消費も活性化するため国全体の経済が回りやすくなるという大きなメリットがあります。
日本は1950年代から1990年代半ばまで人口ボーナスに該当し、実際その期間に大きな成長を遂げました。経済にとってプラスに働く人口ボーナスですが、一度終わると二度と来ないといわれています。現在人口ボーナスに該当する国としては、インド、フィリピン、イラン、ナイジェリアなどが挙げられます。
人口オーナスは人口ボーナスと真反対に、“働く人の数を子どもや高齢者など支えられる人の数が上回る状態“のことです。
オーナス(onus)という単語は「負担・重荷」を意味します。すなわち従属人口が生産年齢人口を超え、人口構成が経済にとって負担となっている状態を意味します。日本は1990年代から人口オーナスに陥っており、今では世界でも特に人口オーナスの進む国となってしまっています。アメリカ、イギリス、ドイツ、中国といった国々もすでに人口オーナスに突入しています。
※人口指数…対象とする人口が全体に対してどれだけの割合かを表す指標。
かつての日本は人口ボーナスのメリットにより大きな成長を遂げましたが、現在では人口オーナスに陥ってしまっています。
では、人口オーナスは現在の日本経済にどのような悪影響を及ぼしているのでしょうか? 3つのポイントにわけて解説します!
生産年齢人口が減るということは、働く人の数が減るということです。当然、経済成長の指標である国内総生産(GDP)は停滞、もしくは落ち込むことになります。また、増加した高齢者が貯金を切り崩すことで社会全体の富の蓄えも減少しやすくなるでしょう。
日本の生産年齢人口は2019年3月1日時点で7,519万9,000人で全体の59.7%。1992年の69.8%をピークにその割合は減少し続けており、2065年には4,529万人(全体の51%)にまで落ち込むと予想されています。
高齢者が増え、生産年齢人口が減ることで生じるのが年金などの社会保障費の維持が難しくなる問題です。日本の年金制度は高齢者の年金を生産年齢人口が負担する賦課方式で成り立っているため、人口オーナスが進むほどに現役世代の負担は重くなります。
2019年3月1日時点で現役世代2.1人当たり1人の高齢者を支えなければいけない状況となっています。1950年には12.1人当たり1人だったことを考えると、負担が大幅に増加したことがわかりやすいでしょう。ちなみに2065年には現役世代1.3人当たり1人の状況になると予測されています。
生産年齢人口が減ると社会は人手不足が加速することになります。そのため、穴を埋めるための長時間労働が増加する可能性があるのです。
ワーク・ライフバランスがワーク(仕事)に傾いた企業が増えれば子育てがしにくくなるため、より少子高齢化が進む負のスパイラルに落ち込む恐れもあります。
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