年末の風物詩となった漫才の頂上決戦「M-1グランプリ(通称:M-1)」。売れっ子芸人の登竜門でもあるこの大会への出場、そして優勝を目指し、多くの芸人が約4ヶ月間にわたる審査にのぞみます。
過去にも多くの芸人がM-1によって「一晩で」スターダムを駆け上がる中、通算19回目となる今回もさまざまなドラマが生まれました。
2023年12月24日(日)に開催されたM-1グランプリ2023年大会の応募組数は8,540組と過去最多を記録。開催前からその盛り上がりを予感させるものに。
そこで今回は2023年のM-1のドラマを振り返りつつ、 その結果をデータとしてまとめます。
M-1、2023年度の決勝戦では、決勝に残った10組に対し、7名の審査員が1組ずつ得点(最高100点)を出しました。そして審査員たちから得た得点の合計点が高かった3組で決選を行い、そこで審査員ひとりあたり1票を投票、得票数が高かったコンビが優勝となります。
まず、決勝10組の得点を見てみましょう。
コンビ名 |
得点 |
山田邦子 |
博多大吉 |
サンド富澤 |
ナイツ塙 |
海原ともこ |
中川家礼二 |
松本人志 |
令和ロマン |
648 |
92 |
91 |
94 |
93 |
94 |
94 |
90 |
シシガシラ |
627 |
87 |
88 |
91 |
90 |
92 |
91 |
88 |
さや香 |
659 |
98 |
94 |
95 |
93 |
96 |
94 |
89 |
カベポスター |
635 |
94 |
89 |
88 |
89 |
95 |
92 |
88 |
マユリカ |
645 |
92 |
90 |
96 |
92 |
92 |
92 |
91 |
ヤーレンズ |
656 |
93 |
91 |
97 |
93 |
96 |
93 |
93 |
真空ジェシカ |
643 |
90 |
95 |
93 |
91 |
91 |
91 |
92 |
ダンビラムーチョ |
631 |
93 |
89 |
92 |
91 |
90 |
89 |
87 |
くらげ |
620 |
89 |
87 |
89 |
90 |
89 |
90 |
86 |
出典:M-1グランプリ2023年大会(コンビの並び順は、漫才を発表した順番に従う)
今回決勝で点を獲得し最高位となったのは、結成9年目、昨年につづき通算3回目となるさや香です。
次点は、癖になるキャラクターで笑いを掻っ攫ったヤーレンズ、3位にトップバッターながら鮮烈な漫才で強い印象を残した令和ロマンです。
そして、最終決戦を終えたあとの審査員投票の結果が以下になります。
審査員 |
投票コンビ |
山田邦子 |
ヤーレンズ |
博多大吉 |
令和ロマン |
サンド富澤 |
ヤーレンズ |
ナイツ塙 |
令和ロマン |
海原ともこ |
ヤーレンズ |
中川家礼二 |
令和ロマン |
松本人志 |
令和ロマン |
出典:M-1グランプリ2023年大会
決戦でチャレンジングなネタに挑戦したさや香には残念ながら得票はなく、ヤーレンズと令和ロマンの白熱の争いとなりましたが、3対4で平成生まれの若手コンビ令和ロマンに軍配が上がりました。
開票時、最後の最後までどちらが勝ったのかわからず、画面の前で手に汗握っていた人も多いのではないでしょうか?
今回大会のデータについて、2001年から過去19回にわたる大会のデータと合わせて紹介いたします。
まず、大会の最高点、最低点、平均点をグラフ化したものが以下になります。
2015年の番組再開以降、平均点、最低点が非常に高い得点が続いており、今大会でも同様の傾向が見られます。
一方で、得点分布を見てみるとこれまでとは少し違う特徴が見えてきました。
得点分布を表すのが、以下のグラフです。青い真ん中の箱はその年の得点の真中約50%が分布する領域。そして箱より上の細い線に上位約25パーセント、下の細い線には下位に約25%が分布しています。
真中50%が89-93点に密集しており、最低点と最高点の差も12点と点差が他の年と比較しても小さいことがわかります。
そこで、各大会における得点の接近度を見ていきます。
ここでの接近度は、分散(得点のばらつき具合)の逆数(=精度)とします。
その結果、今大会は、過去で一番、接近度が高いことがわかります。
この背景には、応募組数の増加に伴う倍率の上昇が挙げられると考えられます。過去最多となった2023年大会では10組の枠に8,540組が応募、倍率は実に854倍になっています。これは、初回開催の160倍から実に5倍以上に伸びているということになります。
開催年度 |
応募組数 |
決勝組数 |
倍率 |
2001年 |
1,603 |
10 |
160.3 |
2002年 |
1,756 |
9 |
195.1 |
2003年 |
1,906 |
9 |
211.8 |
2004年 |
2,617 |
9 |
290.8 |
2005年 |
3,378 |
9 |
375.3 |
2006年 |
3,922 |
9 |
435.8 |
2007年 |
4,239 |
9 |
471.0 |
2008年 |
4,489 |
9 |
498.8 |
2009年 |
4,629 |
9 |
514.3 |
2010年 |
4,835 |
9 |
537.2 |
2015年 |
3,472 |
9 |
385.8 |
2016年 |
3,503 |
9 |
389.2 |
2017年 |
4,094 |
10 |
409.4 |
2018年 |
4640 |
10 |
464.0 |
2019年 |
5040 |
10 |
504.0 |
2020年 |
5081 |
10 |
508.1 |
2021年 |
6017 |
10 |
601.7 |
2022年 |
7261 |
10 |
726.1 |
2023年 |
8540 |
10 |
854 |
倍率と接近度をプロットしたグラフが以下になります。倍率が上がるにつれ、接近度の数値も大きくなる傾向があることがわかります。
今大会の直後、長年審査員を務めた松本人志氏が性加害疑惑を巡る騒動を受け、裁判に注力するため芸能活動を休止することを発表しました。
一連の騒動の対応や世論を受け、旧来的な業界のやり方に変革が起きようとしています。そうした中で来年以降のM-1のデータにどのような変化が見られるのでしょうか?
M-1という大会は年々規模が大きくなっており、それに従い、ますますハイレベルなものになっていることがデータからも見て取れます。漫才師たちのレベルアップをさらに後押しするような変革になることを願っています。
(大藤ヨシヲ)
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