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【中学野球チーム、どう選ぶ?①】なぜ“中学野球チーム選び”が難しい?──選択肢の多さと「情報の見えにくさ」にどう向き合うか

息子が小学6年生の終わりに差しかかった頃、我が家ではある“選択”をめぐって、家族で何度も話し合いを重ねていました。それは、「中学でどの野球チームに所属するか」ということ。日本の10代で年1回以上野球をする子どもは、2023年で約174万人。2001年の約282万人から約100万人も減少しており、競技参入人口は大幅に減少しています。

一方で、硬式・軟式、クラブチーム・部活動といった選択肢は多様化しており、「どこに所属すべきか」のトレードオフは日々難しくなっています。そこで、本連載では、明確に「答え」が用意されていない現実にどう向き合い、不確実な情報の中からどう決断したのか。その意思決定プロセスを、実体験に基づいてご紹介したいと思います。

         

選択肢が多様化する中学野球──違いをどう捉えるか

今年の4月、長男は地元の公立中学校に進学しました。小学校時代は学童野球チームに所属し、軟式野球を楽しく続けてきました。中学でも野球を続けたいという希望は変わらず、その気持ちに応えるかたちで、家族としてもチーム選びに本腰を入れることになりました。

一昔前であれば、「中学に進んだら学校の野球部へ」という流れが自然でした。しかし今は、「軟式か硬式か」「学校部活かクラブチームか」など、選択肢が多様化。親子ともに「どれが正解なのだろう?」と迷ってしまうのが実情です。

現在、中学で野球を続ける多くの家庭は「部活(中学軟式野球)」か「硬式クラブチーム」を選ぶことになります。それぞれの特徴を整理すると、単純な優劣ではなく、家庭の方針や子どもの意向に合うかどうかが重要であることが分かります。

学校部活(中学軟式野球)の特徴

公立中学校では、顧問の先生が学校の施設を使って指導してくれます。平日の放課後にはほぼ毎日練習があり、同じ学校の仲間と切磋琢磨できる点は、子どもにとっても安心感があるようです。試合等の移動は公共交通機関を使い、自分たちで行うのが基本のため、社会性も育まれやすい環境です。軟式球は肩や肘への負担が少なく、一般的にケガのリスクも低いと考えられます。

一方、公立校では顧問の先生は異動があり、3年間を通した継続指導は不透明です。また、教員の働き方改革で地域クラブへの移行が進むなど、今後どのような運営体制になるのかが見通しにくいのも事実。さらに、もし私立の強豪校への進学を希望するのであれば、学校部活よりもクラブチームの方が高校のスカウトの目に留まりやすいともいわれています。

硬式クラブチームの特徴

クラブチームは「野球の進学塾」のような存在。高校を見据えて早期に硬式球に慣れ、専門的な指導が受けられます。実際、チームによっては高校との太いパイプを持っており、「このクラブから○○高校へ進学」といった進路実績も強みとされています。

しかし、当然ながらそれなりの負担もあります。まず、費用の面。チームの月会費に加え、チーム指定品や硬式用具の購入、遠征時の交通費など、金銭的な負担は学校部活と比べて格段に大きくなります。また、試合や練習には親の付き添いが求められることも多く、土日が完全に「野球の日」となる家庭も少なくありません。

さらに、高校のスカウトがクラブチームの試合を視察に訪れるケースはあるものの、それは“試合に出場している選手”に限られます。出場機会が少ない場合は、チームの実績があっても個人としては評価されにくいことも。

もうひとつ見逃せないのがケガのリスクです。硬式球は軟式に比べて重く、当たり所が悪ければ骨折につながる可能性もあります。体が成長途上にある中学生にとっては、技術以上に「安全にプレーできる環境かどうか」も重要な判断軸になります。

このように、学校部活とクラブチーム、それぞれにメリットと課題があり、何を優先するかは家庭ごとに異なります。我が家の場合も、こうした情報を整理しながら、「そもそも、うちの子はどんな野球をしたいのか?」という原点に立ち返って考えることになりました。

家族で話す「どんな野球がしたいか」が軸になる

我が家がまず行ったのは、親子の対話による「軸づくり」でした。どんなに情報を集めたところで、子ども自身が「どうしたいか」という意志を持っていなければ、正しい答えにはたどり着けないと考えたたからです。

親が先回りして候補を並べ立てるのではなく、本人の気持ちを尊重して、その方向性に沿って選択肢を絞り込んでいく。そんな考えのもとで、まずは時間をかけて息子と対話するところからスタートしました。

「中学で、どんな野球がしたい?」という問いから始まった

話し合いの中で確認していったのは、以下のようなことです。

・硬式か、軟式か
・高校でも野球を続けたいと思っているのか
・勝ちたいのか、うまくなりたいのか、楽しければいいのか
・勉強との両立をどう考えるか

息子は、比較的早い段階から「硬式をやりたい」という意志を明示していました。「高校でも野球を続けて、甲子園を目指したい」という思いがあったようです。もちろん、夢は夢として尊重しつつ、現実的な観点も踏まえて話を進めました。たとえば、勉強も疎かにはしたくないことや、本人としては「野球の強い進学校に進めたら理想的」と感じていることも共有してくれました。

「理想の将来像」から逆算して選択肢を絞る

こうしたやりとりを通じて、我が家としての方向性が見えてきました。つまり、「高校でも野球を続けたい」「進学校への進学も視野に入れたい」という希望に近づけるため、そうした実績のある硬式クラブチームを探してみようという方針です。

もちろん、それが「正解」である保証はどこにもありません。ただ、明確な軸が定まったことで、「どう選べばいいか」という迷いの幅は、少しずつ狭まっていったように思います(結果的に、後になって新たな迷いを生むのですが、これについては後述します)。

情報は溢れているが、「決め手になる情報」が不足

大まかな方針が定まり、候補を探す段階になって、まず私たちが行ったのは、インターネットでの情報収集でした。

「(地名)+硬式野球」「(地域名)+リトルシニア」といったキーワードで検索すれば、ある程度、近隣にある硬式クラブチームをリストアップすることができます。各リーグ(リトルシニア、ボーイズリーグ、ポニーリーグなど)の公式サイトでは、都道府県ごとにチーム情報が整理されており、活動場所や連絡先などの基本情報も網羅されています。

また、個々のチームのホームページには、指導体制(監督やコーチの顔ぶれ)、活動日や練習場所、過去の戦績や進学実績といった情報が記載されており、一定の判断材料にはなります。最近では、InstagramなどSNSで練習や試合風景を投稿しているチームも多く、雰囲気や活動スタイルの「空気感」が伝わってくる印象も受けます。

表に出ている情報だけでは「決め手」が見えない

しかし、どれだけ情報を読み込んでも、「じゃあ、どのチームが息子にとって最適なのか?」という問いに対して、すぐに答えが出るわけではありませんでした。

たとえば、次のような「内情」にかかわる情報はほとんど外に出てこないのが現実です。

・どのくらい勉強との両立が可能なのか(模試などでの欠席が許容されるのか)
・野球の指導は全選手に対して行き届いているのか(一部のレギュラー中心の指導体制ではないか)
・実際の試合での出場機会はどの程度あるのか

そこで、ついついチームの強さや進学実績といった「わかりやすい情報」に頼ってしまいそうになりますが、それらはあくまで参考材料のひとつ。自分の子どもがそのチームでどのような立場になり、どのように育っていけるのかは、まったく別の話です。

情報収集の次は、「実際に足を運ぶ」しかない

この段階で私たちは、「気になるチームはすべて見に行こう」と決めました。見学や体験を通じて、そのチームのリアルを確かめる必要があると考えたのです。

次回は、いよいよ実際の体験・見学に足を運び、現場で感じたこと、そして「それでも見えなかったこと」についてご紹介していきます。

書き手:阿部 欽一氏
「キットフック」の屋号で活動するフリーランスのライター/ディレクター。社内報編集、編集プロダクション等を経て2008年より現職。「難しいことをカンタンに」伝えることを信条に、「ITソリューション」「セキュリティ」「マーケティング」などをテーマにした解説記事やインタビュー記事等の執筆のほか、動画やクイズ形式の学習コンテンツ、マンガやアニメーションを使ったプロモーションコンテンツなどを企画から制作までワンストップで多数プロデュースしています。
 
 

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