「言ってくれなきゃわからないよ!」
上記のような状況は、新メンバーが入ったばかりのオフィスで起こりがちではないでしょうか。
業務プロセスの「見える化」がされていない職場では、新メンバーは要領を覚えるのに苦労します。しかし先輩方からすると、新メンバーのスキルが「可視化」されていないと得意不得意がわかりません。この積み重ねで双方の「言ってくれなきゃ……」が溜まっていき、あるとき爆発することになります。
職場において重要な「可視化」と「見える化」。あれ、そのふたつって一緒じゃないの? と思った方もいるかもしれません。ただの言い換えのようにも見えますが、実は重要な点で違いがあるのです。
見える化とは、見えないものを見えるようにし、表面化することです。視覚化や可視化などと言い換えられることもあります。
ここでは見える化の意味や起源について解説します。
● 見える化の意味や使い方
● 見える化の起源
それでは、一つずつ解説していきます。
先述の通り、見える化とは見えないものを見えるようにし、表面化することを指します。
ビジネスでは、「業績や業務内容を見える化する」「社員の声、顧客情報を見える化する」といった使われ方をします。ビジネスにおいて「見える化」の目的は、目に見えない内容をグラフや数値に表すことで、社内の課題解決のための詳細を把握することです。
働きやすさの向上や業務の効率化において重要な取り組みといえるでしょう。
「見える化」という言葉は誰が言い出したのでしょうか。
「見える化」という表現が初めて登場したのは、トヨタ自動車株式会社所属の岡本渉氏の論文「生産保全活動の実態の見える化」(1988)でした。
このアイディアを具現化したのが、トヨタの生産ラインに設置された「あんどん」と呼ばれる異常通知ランプ。異常が発生するとこのランプが点灯し、さらに異常の種類を色分けすることで、作業員全員がすぐに異常の発生と種類を感知できるようにしたのです。
トヨタの初期の「見える化」は問題発生 − 通知 − 対処が短いスパンで起こるものですが、現在ではIoTを利用したより複雑な見える化も登場しています。
可視化とは、そのままでは目に見えないものに形を与えて見えるようにすることです。天候と自社製品の売上の因果関係をグラフにしたり、社員のスキルを種類ごとに○バツで表したり、などがそれに当たります。
「打ち合わせの内容を議事録にする」「アンケート調査で満足度や感想を聞く」など、目に見えないものを表面化することに使われることがほとんどです。
見える化と可視化の大きな違いは、自分の意思とは関係なしに否応なく目に入ってくるかどうかという点です。
見えないものを表面化するというのは共通していますが、見える化のための手段として可視化が用いられることから、可視化は見える化の一部といっても良いでしょう。
下記で、見える化と可視化の違いについてわかりやすく表にまとめました。
見える化 |
可視化 |
●見えないものを見えるようにする(自分の意思とは関係なく目に入る) ●可視化した情報を見るべき人に確実に届け、改善を促すこと |
●見えないものを見えるようにする(任意のタイミングで目に入れられる) ●見たい人が見たいときだけ見れるようにすること |
ここまで見える化・可視化の意味や使い方について解説してきましたが、2つにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
● 見える化のメリット
● 可視化のメリット
見える化・可視化には、さまざまなメリットがあります。それでは、見える化・可視化のメリットについて詳しく解説していきます。
見える化とは、組織やビジネス活動において情報やプロセスを視覚的にわかりやすく表現することを指します。
これにより、組織内でのコミュニケーションや業務管理が効果的に行われ、さまざまなメリットが得られます。
見える化のメリットは以下の通りです。
● コミュニケーション活性化
● 文化の育成
● 業務効率の向上
● メンバーの状況把握
● 組織の振る舞いの理解
見える化は組織内での情報共有や業務効率向上、文化の育成など、さまざまなメリットをもたらす重要な概念です。組織やビジネス活動において、情報を視覚的に表現することで、意思決定や問題解決がスムーズに行えるようになります。
可視化のメリットは、目に見えていなかったデータの分析ができることです。目に見えないデータや業務を可視化することで、それまで行っていなかった分析方法を試すきっかけになり、新たな仮説の立証、ひいては業務の効率化につながる可能性があります。
他にも、従業員全員の目的が一つになる、業務分担がスムーズになるといったメリットもあります。可視化を行うことで、見える化にもつながるため、まずは可視化を行ってみるというのは良い施策といえるでしょう。
ここでは見える化・可視化のデメリットについて解説します。
● 見える化のデメリット
● 可視化のデメリット
それぞれ解説していきます。
見える化のデメリットは、見える化を行う本来の目的を見失ってしまう可能性があることです。見える化を行うことで業務の効率化につながりますが、見える化をすることが目的になってしまうと、逆に結果が出ないということにつながりかねません。
また、人によっては自分の業務を開示することに抵抗を持つ人もいるでしょう。そのため、全体を見ながら、必要に応じて見える化を進めることが重要です。
可視化のデメリットは、時間がかかることです。特に、それまで業務の自由度が高かった会社の場合、一から考えを見直す必要があるかもしれません。
可視化から見える化まで落とし込み、成果を出すためにも一定の時間がかかります。事前に準備をすることで、従業員の負担を減らす工夫が大切です。
ただ、一度可視化の体制を整えてしまえばメリットを得られるため、全体的な施策としての導入を始めてみると良いかもしれません。
見える化・可視化を導入することで成功した企業や事例は数多くあります。ここでは、研究開発、製造業の2つの事例を紹介します。
● 研究開発の見える化・可視化事例
● 製造業の見える化・可視化事例
それでは、見える化・可視化の具体例について解説していきます。
1つ目は、九州大学の事例です。映像を活用したスマート農業の研究開発に取組んでいる同大学は、いちご農園に設置したネットワークカメラで農園を撮影し、画像を解析して花や果実の生育状況を数値化(=可視化)するシステムの構築を行っています。
ディープラーニングによって実行された解析結果は専門家に配信され、分析された上で農園にフィードバックが行く(=見える化)という仕組みです。人工知能を使用した見える化は今後ますます拡大していくと予想されます。
2つ目は、トヨタ自動車の事例です。トヨタ自動車は「かんばん方式」と呼ばれる見える化ツールを導入しました。かんばん方式とは「いつ・どこで・何を・どれだけ使用するか」を明確にし、指示書通りに生産することで業務の無駄をなくすという方法です。
かんばん方式を導入したことで、業務の無駄をなくし「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」生産することに成功しました。
ここでは、見える化・可視化の具体的な方法を紹介します。
● マニュアルの作成
● グラフ・チャートの活用
見える化・可視化の代表的な方法には、「マニュアルの作成」「グラフ・チャートの活用」があります。
それでは、一つずつ解説していきます。
1つ目は、マニュアルの作成です。
業務でどのようなことが行われているのかは、担当の人間でないとなかなかわかりません。そのようなときには業務の内容や業務工程を文字に起こし、わかりやすいマニュアルにしておくことが重要です。
マニュアルの作成は業務の属人性をなくし、担当ではない人が見たときでもわかりやすくなるという点でも、優れた手法だといえます。
また、マニュアルを作成する際は、なぜこの作業を行うのかまで落とし込むことが大切です。
2つ目は、グラフ・チャートの活用です。
グラフやチャートに変換して表示するのは、見える化の代表的な方法です。図形やグラフ、画像を用いることで、一目見ただけでわかるように表現できます。
具体的には、ガントチャートやヒートマップ、WBSなど色分けを活用することでも、わかりやすく表現できます。テレビのテロップや会議の資料などで、目的に応じて文字の色やフォントを変えるのも効果的でしょう。
ディープラーニングなどの特殊な技術を使わなくても、オフィスで気軽に「見える化」に取り組むことはできます。DIYの見える化を指南してくれるオススメの本が、『アジャイルコーチの道具箱 − 見える化実例集』(Jimmy Janlén著)。オフィスで楽しく見える化を進めるためのトリックが詰まっています。
例えば、ポータブルボード。ホワイトボードはオフィスのデフォルト設備ですが、会議室に置かれっぱなしの場合が多いのでは?これをポータブルボードにすることで、書き出した課題やアイディアを常にチームメンバーの目に付く位置に置くことができ、モチベーションや方向性の維持に役立ちます。
また、会議中にファシリテーター(進行役)に帽子を被せ、毎回帽子を違う人に回していく「ファシリテーターの帽子をまわす」も楽しいアイディア。帽子でなくても何か目立つアイテムを身につけておくことで、周囲も本人もファシリテーターの役割を意識できます。
ここでは、見える化・可視化の注意点について解説していきます。
● 見える化の目的を明確にしなければならない
● すべてのデータを見える化する必要はない
メリットや成功事例など、見える化・可視化に良い点ばかりに見えますが、注意しておかなければならないこともいくつかあります。注意点を理解し、見える化・可視化を正しく活用してください。
まず、見える化の目的を明確にしなければなりません。
本来、見える化・可視化は業務効率を上げるために行う手法ですが、見える化すること自体が目的になってしまい、本来の目的を見失ってしまうことがあります。
そのため、見える化・可視化を行う際は「何のために見える化・可視化を行うのか」を明確にした上で、PDCAサイクルをまわすことが重要です。
次に、すべてのデータを見える化する必要はありません。業務を効率的にしようと考え、業務のデータをすべて見える化してしまうと、それを担当する従業員の作業量が膨大になってしまう可能性があります。
また、すべてを見える化すると、従業員が仕事をすべて監視されているような気持ちになってしまうかもしれません。
そのため、優先的に改善しなければならないデータを見極めてから見える化・可視化を行うと良いでしょう。
例えば、会議で配布される資料に並ぶ整然としたグラフ。
例えば、出入り口に張り出されたノルマや業績の一覧表。
可視化が進んでいるオフィスは多くても、見るべき人に確実に届き、行動を促す見える化に到達しているでしょうか?
改めて今一度チーム内で振り返ってみるのもいいかもしれませんね。
今回の記事では、「見える化」と「可視化」について説明してみました。見えない問題は解決できない、とよく言いますが、問題を解決するためにはまず問題が何かを把握しなくてはいけません、その過程で見える化、というのはなんだかんだといってもヒトにとってわかりやすい効率的なやり方の一つですね。
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