クラウドやテレワークの普及などを背景に民間企業のICT投資額は近年右肩上がりの傾向にあります。投資額が増えるにつれてどうしても気になってくるのが自社のICT投資が適切に行われているのか、という点ではないでしょうか。オンプレミス、クラウド、ハイブリッドなど利用形態は多様かつ、管理・運用にかかる「見えないコスト」も多い現代のICT投資においては「TCO」という考え方が重要だと聞いたことがある方も多いでしょう。
本記事では、TCOは何かだけでなく、その計算方法やTCO最適化のポイントなど経営者やIT担当者の方々にとって必要な知識をご紹介します。
TCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)とは、あるICT投資を行うにあたって必要となるコストの総額です。ICT投資において導入時に必要なコストだけでなく、さまざまなコストが発生している状況を鑑み、ハイプサイクルなどで有名なガートナーグループによって1987年ごろに広められたといわれています。
新しいICTシステム・ツールの導入にあたってかかる費用といえば、 以下のような「見えるコスト」がまず思い浮かびます。
・ハードウェア・ソフトウェアの購入にかかる費用
・ソフトウェア・システムの開発費用
・サブスクリプションサービスの年間・月間使用料
しかし、上記はICTシステムの導入から運用、そして破棄に至るまでかかるコストの、最初の部分に過ぎません。
特にクラウドなどサブスクリプション型や従量課金型のサービスが普及し、サイバーセキュリティや運用改善の重要性が高まっている現代において、下記の「見えないコスト」の重要性は「見えるコスト」を凌駕しています。
・ドライブのアップデートやデータのバックアップなどにかかる人件費
・サーバーやネットワークの運用にかかる費用
・外部ベンダーへの保守・サポートにかかる費用
・サポート窓口・障害対応人員の設置に伴う費用
・ハードウェアの廃棄やサービス解約に伴う費用
・サービスやシステムの障害によって失われる機会損失コスト
・インシデント復旧・原因究明にかかる人件費
・セキュリティ上の問題が生じた際に発生する信用毀損・機会損失のコスト
機会損失とは、それによって事業活動がストップしてしまうことで失われた“得られるはずだった”利益の損失を意味します。上記のような「見えないコスト」を見える化することが、将来的な“こんなはずじゃなかった”企業の損失をなくすことにつながります。
では、TCOはどうやって計算するのでしょうか?
TCOの計算は多くの場合、サーバー、PC、ソフトウェアなど同一の製品を比較する際に行われます。そのため、特定の製品への移行にあたっては、製品サイトにTCO計算ツールが用意されている場合もあります。
・総保有コスト (TCO) 計算ツール┃Microsoft Azure
https://azure.microsoft.com/ja-jp/pricing/tco/calculator/
・IBM® LinuxONE and Linux on Z TCO and CO2e Calculator┃IBM
https://www.ibm.com/resources/systems/zsystems-linuxone-tco-co2e-calculator/
・Chromebook TCO Calculator for Enterprise┃chrome enterprise
https://chromeenterprise.google/intl/ja_jp/devices/tco-calculator/
自力でTCOを計算する場合は、事前に計算ルールを明確化したうえで、前述の【見えるコスト】【見えないコスト1:運用コスト】【見えないコスト2:機会損失コスト】をリストアップしていきましょう。
たとえば、一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)のTCO研究部会が平成11年3月に公開した資料『TCOの試算とその最適化』では、「2000 年問題対応の費用は含めない」「トナー、紙等の消耗品は運用費用に計上する」といったルールを定めたうえで、「ハード・ソフト導入費用」「情報システム部門運用費用」「エンドユーザー部門運用費用」「機会損失」の4種類について、「人月×単価」の人件費、「物のコスト」を算出し、10社のTCOを比較しています。
20年以上前の資料ではありますが、TCO算出の基本的な考え方は現在でも変わりません。
自社にとってベストなTCOとなるよう製品選択や運用に取り組む活動を「TCO最適化」といいます。
ハードウェア・ソフトウェアのスペック・価格自体を見直す、レガシーシステムによって失われている機会損失を取り戻し、生産効率向上を図る、適切に業務をアウトソースするなどその手段はさまざまですが、TCOで重要なのはコストの部分最適に陥らず、あくまで導入~廃棄(解約)まで見越して同一期間内で最も適切な製品・運用方法を探ることです。
また、我々がTCOとあわせて考慮したいのがICT投資のROI(Return on Investment:投資利益率)。投資したコストに応じて得られた利益の割合であり、TCOとも密接な関係を持ちます。ICT投資が経営において効果を発揮できているかを直接測るための指標がROIであり、その計算式は「(売上 – 原価 – コスト)÷ コスト × 100」。
ICT投資において、TCOとROIの2つを用いることで、ICT投資の“守り”と“攻め”の両側面が検討できるようになるはずです。
DX時代のICT投資においてますます存在感を高めるTCOについて解説してまいりました。
多くの場合TCOに占める「見えるコスト」の割合は1/4程度に過ぎないといわれています。今も、「見えないコスト」が貴社の予算を知らず知らずのうちに圧迫しているのかもしれません。TCOの計算を通して、現状のシステム見直しにまずは取り組んでみてください。
(宮田文机)
・TCOとは|計算方法・削減するポイントをわかりやすく解説┃クラソル ・TCOとは? メリットや算出方法・削減の方法などを徹底解説!┃NECフィールディング ・TCOの試算とその最適化┃一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会 ・高い洞察により優れた経営判断を実現 映像監視システムのTCO(総所有コスト)とROI(投資収益率)の活用┃AXIS ・TCO vs. ROI: Differences and Which One To Use and When┃indeed
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