・2018年3月6日、第3回ビッグデータ分析コンテストの授賞式がベルサール東京日本橋で開催された。
・今回のテーマは電力・気象。東京電力ホールディングスから3箇所の発電所の発電量データ、気象庁から気象予報データ、アメダスデータ、地上気象観測データの4種類が提供された。
・311名からの応募があり、過去最高の盛り上がりを見せた。
日本の市場はデータ・サイエンティスト不足が深刻だ。
「データ・サイエンティスト」とはビッグデータを分析し、ビジネスの創造や拡大を促進する仕事だ。企業が重要な決断を下す際に、データの裏付けが求められることが多い昨今では、企業の運命をも左右しうる存在だ。しかし、まださほど社会に浸透していない新しい職種な上に、多分野に渡る専門性が求められるため、まだまだ絶対数が不足している。どこの企業もデータ・サイエンティストの獲得に苦しんでいるのが現状だ。そんな中、IoT・ビッグデータによる産業活性化を目的とした「ビッグデータ分析コンテスト(Big Data Analysis Contest)」が経済産業省、IoT推進ラボ、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の主催、DeepAnalyticsにて公募され、審査の結果選定された応募者を招待し、2018年3月6日、3回目となるコンテストの授賞式が行われた。
今回のテーマは「電力・気象」コンテスト応募者には、東京電力ホールディングスから3箇所の発電所の発電量データ、気象庁から気象予報データ、アメダスデータ、地上気象観測データの4種類が提供され、そのデータを活用した分析結果を元に審査は行われた。
審査は予測部門と可視化部門に分けて行われ、予測部門は太陽光発電所の発電量の予測の精度(予測部門精度賞)および分析技術のアイデア賞(予測部門アイデア賞)を、そして今回新設された可視化部門では、見える化によりいかに魅力的ストーリーの伝達ができるかが評価の対象となった。予測部門は131人、可視化部門は200人、合計331人からの応募があった。
参考記事: データビジュアライゼーションとは何か?
7人の受賞者がイベントに参加し、Team-ITou-One(予測部門精度賞)、高橋勝人氏(同部門アイデア賞)、松島七衣氏(可視化部門インフォグラフィック賞)が各部門の金賞を受賞した。
予測部門精度賞で金賞を受賞したTeam-ITou-Oneに対し、データを提供した東京電力ホールディングスの小林功氏は、「この分析には優れた点が2つあった。1つは日射量を予測してから発電量を予測する二段階のモデル構築プロセスを採用したこと、もう1つは『ランダムフォレスト』と『勾配ブースティング』を選択したことだ。今回の応募作品の中で最も精度の高い予測結果が得られたのは、アルゴリズムの選択が効果的だったからだと思う」とコメントした。
予測部門アイデア賞を受賞した高橋氏は、ブースティングアルゴリズムを採用したデータ解析スキルに加え、太陽光パネルの汚れや霜や風などの気象の影響を仮説検証に織り込む考察力を評価されての結果となった。
また、オフィシャルBIツールとしてMotionBoard、Tableau Public、Oracle Data Visualization Desktopが提供され、今回初めての試みとなった「可視化部門」は、「あなたの住むエリアは太陽光発電に向いている?」をテーマとした松島七衣氏が受賞した。松島氏のインフォグラフィックは、明確なストーリー性とインタラクティブな操作性が高く評価された。
データの分析能力はもちろん重要だが、それぞれのデータの特性と重要性を理解し、どの視点を切り口としてデータ分析に着手するのか、という問題がデータ・サイエンティストにとっていかに重要であるか、ということが、予測部門においても、可視化部門においても改めて確認された結果となった。
「ビッグデータ、AIの分野に置ける人材不足は深刻な問題だ。そんな中で、このコンテストは育成という意味で非常に有益だ。予測ではツールを使うモデル構築やプログラミングだけではなく、探究心と構想力が必要とされる。データを正しく読み解き、起こっていることを理解した上で、数理モデルを作り、動いた結果を見てモデルの精度を高めていくという一連のプロセスを遂行できる能力が不可欠だ。対して可視化では、データを読み解き、視覚化してストーリーを作る力が試される。予測部門を上回る200名の応募があったということは、潜在的に優れた人材がいるということだ」と産業技術総合研究所の辻井潤一氏はイベントを振り返ってコメントした。
今回のコンテストの結果を受け、「データを提供してよかった」という声が東京電力の関係者からも上がっており、これは今回のコンテストの有益性を象徴している。イベント関係者は今回のコンテストの盛り上がりに満足した様子だった。
経済産業省の吉本豊氏は、「1回目と2回目の金賞受賞者は学生だったが、今回は社会人の応募が多かった。若手だけでなく、企業の実践者が参加すれば、製品やサービスの競争力を高めることにもつながる。次回以降は、スポンサー企業の方には賞金も励みになりますが、是非データの提供をお願いしたい」とコメントし、表彰式を締めくくった。
日本におけるビッグデータ活用の歴史はまだ始まったばかりだ。来年、再来年とますますの盛り上がり、そしてビッグデータ市場の拡大を期待したい。
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