激変するビジネスへの対応策であるデータ活用、データドリブン、そしてデジタルトランスフォーメーション(DX)への関心が高まっています。
経済産業省は2025年までにDX化に向けた課題を克服できなければ、以降、年間最大12兆円の経済損失を招くと警鐘を鳴らしています。
「2025年の崖」まであと2年もない状況にも関わらず、DXに成功している企業は現状全体の1割未満という状況で、多くの企業は適切な舵取りが出来ず路頭に迷っています。
このような状況に陥っている企業の多くは、データを利用する人への“やさしさ”(民主化)が不足している傾向が強く、利用者まかせ、管理者の独り歩きといった体制下で自然に取り組みが推進すると勘違いしています。
DXに失敗している企業の多くは人、プロセス、デジタルテクノロジーを協調させ、データ利用を円滑化する仕組みの欠落に気づき始めており、その解決策となりうる“DataOps”が今、注目を集めています。
本記事では、データ活用の新しいアプローチとして注目を集める“DataOps”に焦点を当て、解決できる課題や実現させるための課題、その実践の流れとメリット、デメリットを解説します。多くの企業が陥るデータ利用の課題を解決し、データを真に活かす企業文化を築く手法について、具体的な導入事例と共にご紹介いたします。
DataOpsとは、DevOpsの派生であり、企業内部の部署や組織が円滑にデータを利用できるようにする取り組みです。企業の経営者・従業員がいつでも必要最低限の労力で、安心・安全に正確なデータが利用できるようにすることを目的としています。
また、各部門が連携し合い、データ収集や分析、活用といったデータフローの統合、自動化を実現し、価値あるデータの迅速な提供を目指しています。
DataOpsがDevOpsから派生したものということは、お話ししました。では、具体的にDataOpsとDevOpsはどういった関係があるのでしょうか。
また、DataOpsと似たものとして、MLOpsというものも存在します。こちらとの関係性も併せて解説します。
DevOpsとは、「開発(development)」と「運用(operations)」を組み合わせた造語です。機能追加のための開発と、安定した稼働を目指す運用は本来対立関係にありますが、連携・協力し、スムーズな開発が求められます。この考えこそが、DevOpsです。
DevOpsでは、開発に必要な設計や実装、リリースなどといったサイクルを短縮し、今まで以上に速いスピードで価値の高いソフトウェアを開発することを目標としています。
開発側では新しい機能の追加が、運用側では環境維持やサービスの安定・継続が大きな課題となっており、内容が全く異なります。
しかし、開発チームも運用チームも、顧客に対して価値のあるサービスを提供したいという気持ちは同じです。急速な変化が続く中で、連携・協力による迅速な開発が求められています。
MLOpsとは、「機械学習(ML)」と「運用(operation)」を組み合わせた造語です。DataOpsと同じように、DevOpsの派生用語となっています。
MLOpsでは、機械学習によってデータの収集やモデルの開発、設計などをし、実行や監視、再学習の判断といった内容の運用をします。運用時に必要なデータを機械学習によって取得し、機械学習の精度向上に必要な予測・判断を運用が行うという両者を活かしたサイクルが成り立ち、効率的な運用が可能となるでしょう。
現在、多くの企業では、膨大な量のデータの扱いに悩まされています。データ量の増加に伴って管理・収集が難しくなる一方、これらが人の手で行われていたため、時間やコストがかかる上、ミスも多くなる問題が発生していました。
また、手作業によるデータ管理者と利用者の食い違いが多発し、要求に対応できないケースも増えてきています。異なる認識で進めてしまうと、データ活用によるビジネス価値の向上が妨げられてしまいます。
そういった中で、データの利用者と管理者の連携強化、開発・運用の高速化によって、信頼できる高品質なデータを活用できる環境整備が求められるようになりました。これを可能にする取り組みとして、DataOpsが重要視されるようになりました。
データ量の増加によって注目されているDataOpsですが、具体的にどのような課題を解決できるのでしょうか。本記事では以下の4つを紹介します。
それぞれ詳しく解説します。
DataOpsによって解決できる一つ目の課題は、品質の確保・向上です。
高品質なデータには、人為的なミスがなく、最新のデータが揃っている必要があります。DataOpsでは、データ処理や分析、統合の自動化によって、人為的なミスをなくすと共に、最新のデータ収集も可能となります。
また、データを統合して一元的に管理されることで、整合性や正確性、一貫性が確保できます。高品質なデータには、信頼性も必要不可欠です。そのため、正確性や整合性も確保できるDataOpsは、品質の確保・向上という課題の解決に大きな役割を果たせるでしょう。
解決できる二つ目の課題は、大量のデータの格納・体制の構築です。
企業などの組織では、競争力維持のために、膨大な量のデータを格納し、理解しなければなりません。また、膨大な量のデータにも、構造化データや非構造化データ、半構造化データなどがあり、種類も複雑です。そのため、多様なデータを収集、保管し、必要な場合にはすぐに利用できる体制を構築するDataOpsは、課題解決において重要となるでしょう。
解決できる三つ目の課題は、データ分析のコスト削減です。
データ分析は、ビジネスにおいて価値を生み出すために必要不可欠です。しかし、分析しなければならないデータが増えすぎている現状があります。
そんな状況で人の手によってデータ分析をするのは、かなり非効率的であり、時間やコスト、手間が無駄にかかってしまいます。そこで、真の価値のみをデータから収集するDataOpsに切り替えれば、効率的に分析ができ、コストも大幅に削減できます。
解決できる四つ目の課題は、データ収集・格納のスムーズさです。
企業で取り扱うデータは、様々なシステムにまたがっている場合があります。例えば、データベースやデータウェアハウス、データレイクや従来のシステムなどが挙げられるでしょう。そんな場合でも、DataOpsによってデータを統合すれば、データの収集、管理がスムーズになります。
また、外部環境への対応も必要となります。ビジネスにおける外部環境は、急速に変化し、そこにはもちろんデータ関連も含まれます。例えば、顧客層や競合他社、法律などの変化が主な外部環境の変化として挙げられるでしょう。
DataOpsは、そういった外部環境の急な変化にも迅速に対応可能です。すべてのユーザーへ、データとインサイトをスピーディーに提供できるでしょう。
多くの期待が寄せられるDataOpsですが、実現するために解決しなければならない課題も存在します。以下の4つが主な課題として挙げられるでしょう。
それぞれ詳しく解説します。
一つ目の課題は、データのサイロ化による影響です。サイロ化とは、システムが孤立し、情報が連携されていないことを言います。データは一般的に、各部門で異なるデータベースに収集されており、部門でそれぞれ管理されています。
データがサイロ化していると、特定のデータが必要になったときに保管場所や形式がわからなくなってしまいます。そのため、保管場所や形式の把握に膨大な時間や労力がかかってしまいます。
二つ目の課題は、データの種類の複雑さです。
企業で取り扱うデータは量が膨大なだけでなく、その種類も様々です。顧客データやExcelデータといった構造化データはもちろん、テキストデータや画像データ、音声データや動画データなどといった非構造化データも扱わなければならないでしょう。近年は非構造化データが増加しており、データの複雑化が進んでいる状態となっています。
三つ目の課題は、分析のリソースです。
データを扱う際に、データの準備に時間がかかり、分析やリソースに時間を割けないという課題があります。実際、データ分析の時間のうち、6〜8割は準備に費やしていると言われています。準備に時間がかかりすぎてしまうと、データの分析や改善が十分にできなくなり、思うようにいかないという課題が生じてしまいます。
そこで、DataOps実現の際には、あらかじめ理想の形を想定する必要があります。理想形と現状の違いをしっかりと把握して解決策を講じるべきでしょう。
四つ目の課題は、セキュリティの把握です。
セキュリティへの配慮や把握ができていなければ、情報漏洩が起こってしまいます。企業が取り扱うデータには、顧客情報や企業情報など、機密性の高いデータが多く存在します。そういった中で情報漏洩が起こってしまうと、事業存続が難しくなってしまうかもしれません。
また、データのアクセス権限も把握する必要があります。もし把握していなかった場合、閲覧が不可となっている部分にデータが流出してしまう恐れがあります。
DataOpsは効果が得られるまで一定の期間を要します。仕組みづくり、体制づくり、ビジネスと業務の理解、システム構築、ツール導入、運用ルール策定など導入するにあたっての課題が山積みなためです。
確立に至ったときのメリットは大きいものの、道のりも険しいため、どうしてもデメリットが伴ってしまいます。
まず、DataOpsのメリットを紹介します。以下の四つが主にメリットとして挙げられるでしょう。
それぞれ詳しく解説します。
メリットの一つ目は、業務効率の効率化、省力化です。
DataOpsでは業務を支援する様々なシステム・ITツールなどとそれを利用する人を支援する取り組みを構築することで、特に企業の定型的な業務処理の負荷を大幅に削減してくれます。
自社の業務プロセスの再設計、自動化、それに沿ったデータ活用方法を策定することで、リードタイムを削減し、企業全体の生産性や品質、価値の向上が期待できるようになります。
メリットの二つ目は、迅速な意思決定、経営です。
様々なデータを様々な人が利用できるようにするのもDataOpsの取り組みの一つです。
多段なデータ処理を必要とする見える化・可視化が社内に標準化することで、チームでの意思決定、上層部での経営判断のスピードが大幅に向上します。
迅速な意思決定は生産性の向上だけでなく、リスク回避にも有用で企業の損失を必要最低限に食い止める効果も期待できます。
メリットの三つ目は、セキュリティの向上です。
デジタル化はペーパーレスやテレワークといった業務改善や働き方の変革を実現する一方、情報の自由度が高まるため、特に企業の機密に関わったものの漏洩に多くの企業が苦慮しています。
DataOps向けのシステム・ツールは堅牢なセキュリティ機能を有しているため、それを活用したデータ利用のプロセスを構築することで情報漏洩・消失などからデータを守ってくれます。
メリットの四つ目は、コンプライアンスの向上です。
データを利用する人のリテラシ向上もDataOpsの取り組みの一つで、これによって法律遵守・スティークホルダーへの配慮といった意識が向上します。データを活用することで厳格な財務、労働管理を実現し、これらを積上げることで企業価値が向上します
様々なメリットがある一方で、DataOpsにはデメリットも存在します。以下が、主に上げられるDataOpsのデメリットです。
それぞれ詳しく解説します。
デメリットの一つ目は、一次的な効率の低下です。
DataOpsは、今までの業務プロセスを大きく変えることが多いため、特に導入期は業務効率を低下させてしまう恐れがあります。
データ管理者・データ利用者の不慣れ、システム、ツールのトラブルなど原因は様々です。その他に、DataOpsへの消極性が推進鈍化の要因になってしまっている場合もあり、多くの企業では、そういった人たちが前向きになるような施策・教育も導入しています。
デメリットの二つ目は、人材・設備投資によるコスト増加です。
DataOpsではデータ基盤、ツールをはじめ、様々なデジタルテクノロジーを導入して取り組みます。同時にデータを管理するシステム・IT部門などの人材強化、利用者の教育等も必要となるため、初期導入時のコスト増加は避けられません。
DataOpsの成功による生産性向上・コスト削減のリターンで相殺できる範囲内で設備投資することが上手なDataOpsの運営とも言えます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みに失敗している多くの企業は、データ基盤・ツールの導入そのものをDataOpsと考えているケースが多く、あとはデータ管理者、データ利用者まかせ、どうぞお好きに使ってください、といった雰囲気で実際には、“活用”に至っていないのが実情です。
こういった“失敗”を避けるためには、計画、準備、評価、デプロイ(展開・配置・配備)、運用といった流れに沿った実践と、データ管理者と利用者の協調が必要不可欠です。
初期の計画、準備、評価のフローは実運用での効果の計測も兼ねており、この時点で期待した結果が得られなければ前のステップに戻り、フィードバックを繰り返すことで確度を向上させます。
未成熟な体制下でのデータ運用は、あとあと収集が付かなくなるほど致命的な被害を招く恐れがあるため、あらゆるケースを想定してからデプロイに踏み切る必要があります。
DataOpsではデジタルテクノロジーを駆使したシステム、ソリューション、サービスの導入が必要不可欠です。
データのじかんを運営するウイングアーク1st社の製品・サービスを導入してDataOpsを実践している事例をご紹介します。
東京都と神奈川県を中心に展開する京急電鉄グループ様が立ち上げたグループ横断のデータ活用プラットフォーム「KIDDS」と沿線の重要課題である少子高齢化への取り組みについて紹介します。
名称 | 京浜急行電鉄株式会社 |
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設立 | 1948年 |
本社所在地 | 神奈川県横浜市 |
事業内容 | 交通事業、不動産事業、レジャー・サービス事業、流通事業、その他 |
URL | https://www.keikyu.co.jp/ |
京浜急行電鉄株式会社とは、神奈川県横浜市に拠点を置く鉄道会社です。
「日本全国、そして世界とつながり、日本発展の原動力である品川・羽田・横浜を成長トライアングルゾーンと位置付け、国内外の多くの人々の生活と交流を支え、持続的に発展する豊かな沿線の実現」をビジョンとし、地域社会とともに持続的に発展していくための仕組み創りをしています。
京浜急行電鉄株式会社では、以下のツール・サービスを導入しています。
上記のウイングアーク1st株式会社の4製品によって構築されたKIDDSの活用に取り組んでいます。
京浜急行電鉄株式会社で採用された背景にはどのような理由があったのでしょうか。
有用なデータ資産がグループ全体で共有されておらず、十分活用できていなかった
グループ各社・社内各部署おのおのエクセルでデータ作成していたため、効率が悪く重複もあった
レポートの作成に時間がかかり、最新の状況とのタイムラグが発生するため、議論の時間がとりにくかった
分析業務が属人的で、人事異動などの影響を受けやすかった
グループ共有で利用できるデータ分析基盤の構築が可能
国内1社が提供する製品群により、データ蓄積からレポートなどの文書出力まで一元的かつシームレスに実現
シングルサインオンでシームレスにシステムにアクセスできる
データの可視化が容易なうえ拡張性に富んでおり、スモールスタートが可能
グループ全体でデータを集約し分析するためのデータ分析基盤が整備できた
スピーディーに分析やレポート作成が可能となり、議論に時間がかけられるようになった
地図機能を利用した商圏分析のような高度な分析も各担当者ができる環境となり、人事異動などの影響が最小限になった
上記のような背景により、自社製品が採用されました。
社会環境が激しく変化する中で、データから新たな事業を生み出せるシステムとしてKIDDSの発展に向けて取り組んでいます。
販売管理・会計システムや見込管理システムなど、様々なシステムに分散しているデータを統合し、データ活用基盤を構築してデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進している株式会社WorkVision様の導入事例を紹介します。
名称 | 株式会社WorkVision |
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設立 | 20212年10月 |
本社所在地 | 東京都品川区 |
事業内容 | クラウドソリューション、パッケージソリューションの拡充、および企画からサポートまで一貫したサービスの提供 |
URL | https://workvision.net/ |
株式会社WrokVisionとは、東京都品川区に拠点を置く企業です。
「最新の情報技術を駆使し、お客様に最高の価値を提供する競争優位の状態を生み出し続けます。」をビジョンとして掲げています。DXの実現に向け、豊富なノウハウとソリューションにより、最高の価値の提供を目指しています。
株式会社WorkVisionでは、以下のツール・サービスを導入しています。
上記のウイングアーク1st株式会社の2製品を導入し、DX推進に向けたデータ活用基盤を構築しています。
株式会社WorkVisionで採用された背景には、どのような理由があったのでしょうか。
見込み値や経費など、業務上で把握しなければならない計数が様々なシステムに分散
実績データは基幹システムからもレポート出力することが可能だが、ユーザーの個別ニーズに対応することが困難
販売管理システム、見込管理システム、会計システムなど様々なシステムに分散しているデータをDr.Sumによって高速で集計・分析可能
全社、事業部、部門、担当者といった階層におけるそれぞれの期別、月別、カテゴリー別の実績データを「見える化」するダッシュボードを構築したかった
経理部は、実績データの収集から集計までの手作業から解放され、必要なデータをダッシュボードで確認する事により、締め処理の短縮化を実現
経営企画部は、全社予実績及び損益見込管理表などの資料作成に要する時間を効率化、毎月丸1日分の時間を短縮
上記のような背景により、自社製品が採用されました。
今まで以上に高いレベルでデータの見える化や分析を促進する仕組みを実現させるべく、データの扱いやすさやパフォーマンス、コスト等の観点から採用に至りました。
今回は「DataOps」の重要性や解決できる課題、実現させるための課題やメリット・デメリット、導入の流れと事例を紹介させて頂きました。データ管理者と利用者協調によるフローに沿った実践が重要であることをご理解頂けたでしょうか?
それでは最後に今回紹介させて頂いた要約をまとめとして、以下に記載させて頂きます。
DataOpsの導入によって、データの管理・運用を効率的に行い、大きな価値のあるビジネスを目指しましょう。
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