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フリーアドレスの次はABW!? 作業の種類によって場所を変えるアクティビティ・ベースド・ワーキングとは?

         

毎日同じオフィス、同じ席からの同じ眺め、隣の人も同じ。つい飽きてぼーっとしてしまうこともしばしば……。職場でこんな風に感じたことはありませんか?

翻って、学生の頃を思い出してみてください。決まった席にずっと座って授業を受けることって、実は少なかったのでは?

大学ではもちろん、小中高でも、美術、体育、理科の実験など、教科によって場所を移動しましたよね。必要な設備の整った空間で学ぶことは、能率を上げるためには不可欠です。また、移動の際に外の空気を吸ったり、普段とは違う人と隣の席になることで気分転換に繋がるメリットもあるのかもしれません。

社会人であっても作業内容によって場所を変えることで集中力が高まり、生産性が上がるのでは? ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)はこうした視点に着想を得た、新しいオフィスのスタイルです。

フリーアドレスとABW

ABWについての説明を読んで、「フリーアドレス」を思い浮かべた人もいるかもしれません。フリーアドレスは2000年以降、イノベーティブなIT企業を中心に広まったオフィススタイルです。

社員が個人デスクを持たず、コワーキングスペースのフリーデスクのように、その時々で空いている席に座って仕事をします。この斬新な発想、欧米諸国が発祥と思いきや、実は省スペースを目的に1980年代の日本で開発されたのだそう。

このフリーアドレスのアイディアをさらに発展させたのがABW。業務内容に合わせて場所を移動するこのオフィススタイルは、目的に合わせた設備と環境の中で作業することで、生産性を高めるのが狙い。フリーアドレスが「自由席」だとしたら、ABWは「目的別席」だと言えるかもしれません。

ABW的スペースとは

ABWの特徴は、「働く人が仕事の内容に合った環境を選ぶ」こと。具体的には、ひとつのフロアに次のようなスペースが凝縮されています。(架空のオフィスを想定しています)

・ソロ・ワークスペース

高度な集中力が必要とされる個人作業用には、ソロワークスペースを。デスクごとにパーテーションで区切るなどして周囲の目が気にならない空間を演出。デザイナーやプログラマーなどに向いているスペースです。

・電話用スペース

長い電話や少人数でのスカイプミーティングには、防音設備のある小規模個室がいいでしょう。周囲の雑音に遮られることなく、また周囲に迷惑をかけることなくじっくりと話ができます。

・スタンディングワークスペース

机の高さが調節できるスタンディングデスクを配備したワークスペースは、眠気に襲われがちな昼食後にぴったりです。座りっぱなしは喫煙より身体に悪いというのは、現在では有名な話。1日のうち一定時間立って仕事をすれば、健康にも好影響です。

・オープンワークスペース

大きな机が何台か置かれ、プロジェクトチームごとに固まって仕事ができるスペース。普段は各々の場所で自分の担当業務をこなしているチームが、日時を決めてこのスペースに集い作業することで、進捗確認や意見交換がスムーズにできます。「チームワークに向かない」というABWの急所をカバーしてくれるスペースと言えます。

ABWでオフィスが活気付く

オーストラリアのグローバル総合不動産グループ・グッドマンでは、2011年に固定席を完全に廃止し、ABWオフィスを実現しました。オフィスリニューアル後に社員アンケートを行ったところ、次のような結果が。

「現在のオフィスのほうがやる気が出る」…「強く賛成」33%、「賛成」46%。

「仕事がより楽しめるようになった」…「強く賛成」36%、「賛成」43%。

「新しいオフィスを誇りに思う」…「強く賛成」40%、「賛成」53%。

どの項目に対しても8割以上の社員が好意的な回答でした。席が流動的になることで、人間関係の軋轢や閉塞感などのストレスファクターが減るというメリットも想像できます。

また意外なメリットとしては、紙の資料を収納しておける個人的なデスクがないため、資料のデジタル化が進み、コピー用紙の大幅削減に繋がったのだとか。ABWは環境にも優しいのです。

ABWに向いている職場、向いていない職場

ABWを発案・開発したオランダのコンサルティング会社Veldhoen + Companyが掲げるABWのコンセプト、それは「信頼関係に基づくABWが生産性を上げる」。

ABWは個人が作業の内容や目的に合わせて働く場所を選びます。場合によっては長時間上司の目の届かないところで作業するため、上司は部下の働きぶりを逐一チェックすることができません。

このためABWの導入には、「上司と部下の信頼関係ができていること」が大前提。これが欠けていると、上司は部下が自分の目の届かないところでサボっているのではないかと疑心暗鬼になり、部下はそうした上司の態度に萎縮して、せっかくのABWスペースを使用しなくなります。

上司が部下を常に管理したがる職場、また部下の自律性が低い職場は、ABWを導入しても生産性が上がることはないでしょう。

ABWを成功させるためのポイント

いいことづくめに見えるAWBですが、成功させるにはいくつかのポイントがあります。

一つは、様々な機能をもたせたスペースを作るために広大なオフィス面積が必要だと言う点。小規模なオフィスの場合、ABWを実行すると全員に対し作業スペースが確保できないことがあります。上記のグッドマンのABWオフィスでも、座席数は全社員の60%をカバーする程度だそう。

小規模なオフィスでABWを成功させるには、社員にある程度リモートワークの権限を与えたり、フレキシブルな出社・退社時間など、働き方の流動化が必要になります。

またひとりひとりが明確な達成目標を設定することで、ABWの効果が目に見えるようにすることも大切です。

ちなみに筆者の友人が働いているベルリンのスタートアップでは、出社は週3日でOK。あとはどこで働こうが自由とのこと。アチーブメント・ベースの考え方なのでしょう。

社員を収納するハコ的オフィスから、個人の感覚を尊重するABWオフィスへ。進歩的な企業がABWを取り入れていけば、生活の質が向上し、ひいては経済効果にも繋がるかもしれませんね。

【参考リンク】
フリーアドレスはもう古い 働き方を根本から変える「ABW」の破壊力
数年後にはオフィスがこう変わる?!イトーキ SYNC OFFICE(シンクオフィス)に行ってきた
ABWを徹底的に研究、導入し、満足度の高いオフィスを実現

佐藤ちひろ

 

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