About us データのじかんとは?
ここ数ヶ月、AIを取り巻く状況は刻一刻と変化しつつあります。画像生成AIからAIチャットbotまで、さまざまなAIツールが登場しています。特にOpen AIが提供するAIチャットbot「ChatGPT」は無料で使えるということで大きな話題になりました。こうした状況を踏まえ、GAFAをはじめ、さまざまなIT企業もAIチャットに参入しつつあります。
世界各国がAI事業に注目し、AIによって人々のワークライフスタイルが大きく変りつつある今、気がかりなのが、日本におけるAI研究の遅れです。
日経新聞がオランダの大手学術情報出版社の協力を得て、被引用件数が上位10%の「注目論文数」をデータ化したところ、2019年以降は中国が大躍進。一方、日本とアメリカは停滞しています。また、日本の注目論文数はアメリカの1/10程度とそもそもの数自体も大きく遅れをとっていることがわかります。
また、AI関連調査企業であるZeta Alphaが公開した、被引用数トップ100のAIに関する論文の出所のデータにも、日本の名前は上がっておらず、AIについて大きく遅れをとっていることがわかります。
それではなぜ、他国と比較し、日本のAI研究は大きく遅れをとったのでしょうか?要因として以下のようなことが考えられます。
日本において、学士号を取得する人口が年々増えているのに対し、博士課程を修了する人口は減少傾向にあります。こうした背景には、博士号を取得した人材を受け入れられる企業が少なく、またアカデミアのポストも非正規雇用が多いため、博士課程を終了した人材の雇用が学士号のみ取得した場合と比較して不安定なことが挙げられます。
不安定な雇用によりダブルワークをする必要な研究者が多く、テニュアのポストを得ても、授業や事務作業を研究者自身でこなさなければならない時間的な制約が強い状態が続く中、国内の論文の質の低下や研究者あたりの論文数の低下に繋がっています。
そのため、学術論文全般で見ても、論文数自体は世界5位となっていますが、上位10%の論文数は世界12位と大きく順位を下げています。
英語話者、中国語話者はそれぞれ11億人程度いるのに対し、日本語話者は一億人強とその差は10倍。これに伴うデータ量の差も遅れの理由の一つと考えられます。
また、企業間でのデータの共有などもさまざまな制約により進んでおらず、そもそものデータ量の差を埋めるための共有、工夫ができない側面もあります。
AIを作る、という側面では大きく遅れをとる日本。その再生の鍵となるのが、「AIをどのように使っていくか」という点です。学術研究による遅れを取り戻すにはまだまだ時間がかかることが予想されます。しかし、すでに公開されているAIツールをうまく活用することは今からでも可能です。
さまざまなAIツールを組み合わせ、「AI活用」で先陣を切るためには、各企業や個々人が気軽に新しいツールを試し、そこから得た学びを積極的に活用していくことが重要なのではないでしょうか。
【参考資料】 ・AI研究、中国突出 論文の質・量で米国引き離す | 日本経済新聞 ・2022年に最も引用されたAI論文100本の分析結果、Googleとアメリカが強い中で勢いに乗っているのは? | GIGAZINE ・「博士離れ」浮き彫り、学生2年連続減 就職状況厳しく | 日本経済新聞 ・データで徹底分析「科学技術立国」日本の危機、論文の質「途上国並み」という現実 | ビジネス+IT ・【日本語は13位】話者が多い世界の言語ランキング! 「英語」「中国語」に次ぐ3位は?| ねとらぼ調査隊
(大藤ヨシヲ)
メルマガ登録をしていただくと、記事やイベントなどの最新情報をお届けいたします。
30秒で理解!インフォグラフィックや動画で解説!フォローして『1日1記事』インプットしよう!