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人生100年時代に注目をあつめる「未病DX」とは? 定義から実際の事例までご紹介

         

平均寿命が伸び、人生100年時代とも呼ばれる今、長い人生をいかに健康に生きるか、が大きな課題になっています。またコロナ禍を通して、多くの人が病気の影響力の大きさを実感する中で、健康であることの価値を再認識しています。

わたしたち一人一人が健康であり続ける、ということはもちろん、俯瞰してみると、少子高齢化が進む中、経済や政治の切り口で考えても、病気を防ぐことは医療費の削減や労働力の維持と言う観点で非常に重要になります。

そうした中で、ちょっとした不調を病気に繋げないために注目されているのが、「未病対策」です。未病状態の改善・維持に向けた取り組みは企業内でも進んでおり、とりわけ企業組織内の健康経営は、新型コロナウィルス感染症などの影響によるリモート・テレワーク急増でさらに注目が集まっています。

しかし、小さな不調は気付きにくかったり、気付けた場合も病院に行くかの判断が難しいもの。そこで注目されているのがさまざまなITツールを活用し、病気につながる不調を察知したり不調を改善する行動を促す「未病DX」です。

そもそも未病とはどういう状態?

厚生労働省及び、全国健康保険協会によると、未病とは、「健康と病気を『二分論』の概念で捉えるのではなく、心身の状態は健康と病気の間を連続的に変化するものとして捉え、この全ての変化の過程を表す概念」であり、「発病には至らないものの健康な状態から離れつつある状態」を指すということです。

未病は健康と病気の間でグラデュアルに変化するものですが、大枠では「自覚症状はなくても検査で異常がみられる場合」と、「自覚症状があっても検査では異常がない場合」の2つの場合にわけられます。

後者には、疲労感や冷え、だるさなど、不調を感じるものの熱や頭痛など明確な病気の兆候がない状態も含まれています。これを読んでいる人の中でも、病気ではないけれどつらい状態、というのを経験したことがある人も多いのではないでしょうか。

現代を生きる人々にとって身近な未病。改善するための取り組みとはどのようなものなのでしょうか?

未病を定量的に捉える「未病指標」の考案

経団連は2020年7月に公開した資料「Society 5.0時代のヘルスケアⅡ」にてポストコロナにおいて医療やヘルスケアのDXを推し進める、というロードマップを発表しました。

しかし、未病と一口にいっても、検査をしても異常がない健康な人が生活の中でふと感じる不調から、病気の一歩手前という状態まで、さまざまです。

そうした中で個別の事例のみから未病の原因や、どのくらい病気に近い状態なのか?を見極めていくことはその症状を抱える当事者はもちろん、専門家にとっても非常に難しいものです。
また基準がない状態では、未病を改善する新たなサービスが生まれたとしても、こちらのサービスでは心配ないと言われたのに、あちらのサービスでは病気目前なので病院に行けといわれた、など、サービスごとに診断結果が大きく異なりユーザーは振り回されることになってしまいます。

そこで厚生労働省では、新たに「未病指標」を創出し実用化をすすめています。

この未病指標は「個人の現在の未病の状態や将来の疾病リスクを数値で見える化するもの」として定義され、以下の4つの要件で作成されたものです。

  1. 未来予測が可能であること
  2. 個別化されていること
  3. 連続的かつ可変的であること
  4. 使い易く費用対効果が高いこと
  5. 一定の科学的根拠があること

未病指標の算出には、以下の4つの領域(Domain)、15の指標が使われています。

領域

指標

生活習慣(D1)

性別・年齢・BMI(身長・体重) ・血圧

認知機能(D2)

Mini-Cog(潜在的な認知症を評価するための簡易認知機能スクリーニングテスト):3問(将来的にはMIMOSYS(Mind Monitoring System)=声帯の不随意反応に着目し、声の周波数の変動パターン等から心の状態を分析する手法)

生活機能(D3)

ロコモ5(ロコモティブシンドローム(運

動器症候群、ロコモ)診断ツール:5問・ 歩行速度

メンタルヘルス・ストレス(D4)

音声(MIMOSYS)

未病指標を活用し、未病を定量化して捉えることで、健康な状態に戻したり、それを保つための行動を促すことが狙いです。

「未病DX」は今どうなっている?実際の事例をご紹介

未病を改善するITツールとして今、大きく注目を集めているのがアップルウォッチです。
行動や健康状態を計測するさまざまな機能を持つアップルウォッチ。2020年にはユーザー数が1億人を超え、豊富なデータをもとにした分析に注目が集まっています。

最近では、「アップルウォッチ外来」を開設する医療機関も登場し、アップルウォッチのモニタリング機能により、無自覚の不整脈や睡眠時無呼吸症候群の早期発見に繋がっているということです。

また、実際のサービス開発に向けた活用の事例として、2021年8月に発表された、介護サービスを提供する株式会社ユニマット リタイアメント・コミュニティの事例が挙げられます。同社が運営する健康型有料老人ホーム「マゼラン湘南佐島」において、入居者全員にアップルウォッチを提供すると発表。慶應大学医学部と協力し、アップルウォッチの心電図や心拍、血中酸素ウェルネス、運動量を計測してくれるアクティビリングなどのヘルスケアデータおよび日常生活における継続的なライフログデータをもとに健康指導を行い、「食事」「運動」「社会参加活動」の3つの要素について行動変容を促していくということです。

さらに取得したデータは同社で活用し、「健康増進・未病改善」のためのサービス開発をすすめるそうです。

ツールを活用し、未病を改善し、健康を維持するという動きは今後さらに活発になっていくことが期待されます。そうした中で、自分自身や身の回りにどのような「未病」があるのか、を意識することが当たり前になるかもしれません。

ぜひ、今のうちから未病を意識して、健康維持してみてはいかがでしょうか?

【参考引用サイト】
・5月 はじめよう 未病対策 | 健康サポートSociety 5.0時代のヘルスケアⅡ未病指標についてMIMOSYS(ミモシス)|音声から病態を判別する技術|PST株式会社潜在的な認知症を評価するための簡易認知機能スクリーニングテスト(Mini-Cog)について国内初・健康型有料老人ホームの入居者全員にApple Watchを提供し「健康増進・未病改善」を目指す実証事業を8月1日より開始「アップルウォッチ外来」の需要が急増…無自覚の不整脈、孤独死回避にも一役(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース全世界のApple Watchユーザー数が1億人を突破したとの調査報告

(大藤ヨシヲ)

 

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