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反出生主義について議論がすすむ中、国内でも反出生主義に関連した書籍が刊行されています。とくに、2019年には、雑誌『現代思想 』での反出生主義特集やシオランの思想と半生を追う『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想』(大谷崇 著)など一般的にも手に入りやすい反出生主義の本が次々に刊行されました。
また、反出生主義の思想史が一冊にまとまった『生まれてこないほうが良かったのか? ――生命の哲学へ! 』(森岡 正博 著)も非常におすすめです。
文学や映画などさまざまなカルチャーの中にも現代の反出生主義を参照した作品が次々と発表されています。
例えば、「乳と卵」で芥川賞を受賞した川上未映子の最新長編作品『夏物語』では、子どもを生みたいと考える主人公が反出生主義の女性と出会うことで「生むこと」について揺らぐ様子が描かれています。また、ディズニーが2020年12月25日に配信した映画『ソウルフル・ワールド』では、生まれる前の「魂」を具象化した世界が描かれ、そこで主人公と行動をともにする「生まれたくない魂」が描かれているのです。
反出生主義は「絶滅の思想」でもあります。生物はもちろん、地球や太陽など惑星にも寿命がある中で、人類はいつかどこかで絶滅することになります。それが100年後か数万年後か、もっと先のことかは不明ですが、「終末時計」が0に肉薄したとき、人類を救うのは反出生という思想かもしれません。
また、そんな未来の話をせずとも、反出生主義を考えることは「わたし」という有限の生を問い直すきっかけになりますので、興味のある方はぜひ反出生主義についての本に手を伸ばしてみてください。
(大藤ヨシヲ)
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