データ活用を促進する手軽なツールが増えた昨今、さまざまな企業でデータ活用の動きが広がっています。しかし、データ活用と一口に言ってもどのようなデータを使い、どのように事業やサービスと結びつけていくのか、は千差万別。
今回は総務省が公開している「令和2年版情報白書」より、企業のデータ活用の現状と海外との違いについて紹介します。
「令和2年版情報白書」ではデジタルデータの活用についてさまざまな観点から現状と課題をまとめています。
日本企業の従業員を対象に2020年に行なったアンケートからはデータ活用の実態が伺えます。実際に活用しているデータを5年前と比較したグラフが以下です。
この5年で特に活用されるようになったのが、販売記録や自動取得など、膨大な情報量をもつデータです。また自動取得のデータの中でもMtoM(Machine-to-Machine)と呼ばれる機械間でやりとりされるデータの活用が活発になっています。これは、技術の進歩によりビッグデータの取得、活用が自動で気軽にできるようになったことが大きな要因であると考えられます。
行動に紐づくデータの活用が加速する一方で、顧客データや経理データなどの参照は減少しており、データ活用が高度化し細分化している様子がわかります。
データ活用ができる現場で働きたい、と思っていても、いったいどんな業種のどんな職種で働けば良いのか、ということはイメージしづらいもの。
そんな場合には、業務領域別のデータ活用状況がとても参考になります。
データを活用している領域として「経営企画・組織改革」「製品・サービスの企画、開発」「マーケティング」の3領域が挙げられます。一方で、基礎研究など実践から離れた領域に取り組む企業はごくわずかです。
業種別で見ると、製造業では、業務領域問わずいずれかでデータ分析をしている比率が84%だったのに対し、エネルギー・インフラやサービス業では63%と業界によってもデータ活用の進み具合は変わりそうです。
また、いずれかでデータ分析をしている比率は大企業では90.9%だったのに対し、中小企業では55.6%となっており、企業の規模が大きくなり、データの量や種類が増えると必然的にデータ活用をする必要が出てくる様子が伺えます。
企業においてデータ分析を行なっているというとき、どのような手法が使われているのでしょうか?
データの分析方法についてのアンケートを見ると、業種、企業規模問わず「データの閲覧」「集計」という回答が非常に多く、7割前後となっています。
また、業界ごとに見るとデータ活用をしている比率が高かった「製造業」「情報通信業」では「統計的な分析」や「機械学習・ディープラーニングなど人工知能(AI)を活用した予測」などより複雑度の高い分析が高い頻度で行なわれていることがわかります。
こうした複雑な分析は企業規模別にみた時に、大企業において非常に高くなっており、統計的な分析は中小企業が30%なのに対し、大企業が60%、「機械学習・ディープラーニングなど人工知能(AI)を活用した予測」は中小企業で3.9%、大企業では18%と活用度は大きく異なります。また、中小企業では8割が「データの閲覧」と回答しているのに対し、大企業では7割にとどまるなど、データ分析と一口に言っても事業規模によって必要な分析手法は大きく異なっていることがわかります。
こうした背景には企業が取り扱うデータの数と量だけでなく人材の不足もあります。
事業規模によってデータ分析を行う人材が大きく異なるのです。大企業では、「データ分析を行う専門部署の担当者」が大企業では50%以上いるのに対し、中小企業では30%と、低い割合になっています。逆に「各事業部門のデータ分析が専門ではない人」がデータ分析をしている割合は中小企業の方が多く、こうした人材配置の差も分析手法やデータの活用度の違いにつながっていると考えられます。
企業のデータの入手方法としてもっとも多かったのは社内データで、全領域で非常に割合が高くなっており、社内データの分析に力を入れている企業が多いことがわかります。
一方で外部データの活用は3割程度に留まっています。またその中でも「製品・サービスの企画、開発」や「マーケティング」など競合他社との比較が特に要される領域では外部データの購入が活発になっています。
日本におけるデータ活用の実態を海外と比較するために「データ収集・蓄積・処理の導入状況」についてのアンケートをアメリカとドイツと比較すると、以下のような結果が得られました。
「製品・サービスを通じたデータ収集」について、日本では「導入済み」と言う回答が25%だったのに対し、アメリカやドイツでは50%以上が導入済と回答。導入予定と合わせると実に7割以上がデータ収集に乗り出しており、日本は大きく遅れをとっていると言うことがわかります。
一方で「導入する予定はない」と言う回答は日本においてわずか5%になっており、6割以上の企業が「わからない」と回答していることから、データ分析の必要性を感じつつもどのようなデータをどのように活用するのかと言うイメージをつけきれていない様子が伺えます。
そうした中で、今回紹介した「令和2年版情報白書」のように、業種や企業規模に応じてどのようにデータ活用をしているのか、という統計データは大いに参考になると考えられます。
まだまだ発展途上にある日本企業のデータ活用。今後どのように広がりを見せるのかが期待されます。
【参考引用サイト】 ・デジタルデータ活用の現状と課題 - 総務省
(大藤ヨシヲ)
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