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8年連続ビール系飲料シェアNo.1!アサヒビールの快進撃を支えるBIツール

         

「スーパードライ」に代表されるビール類市場で、2010年から8年連続シェアNo.1を続けるアサヒビール。

好調の秘密は、売上の70%を占める量販店への営業活動にあります。BIツールを活用した営業変革について、アサヒグループのITを統括するアサヒプロマネジメント株式会社の清水博さんにお話を伺いました。

量販店頭活動の営業力強化が売上に直結

アサヒグループは2011年にホールディングス制に移行し、現在はアサヒビールを中核に、アサヒ飲料、アサヒグループ食品などの事業会社で構成されています。

グループ全体の売上の50%以上を占める酒類の中でも、主軸はビール飲料です。主力商品「スーパードライ」をはじめとするビール群は2010年から8年連続でトップシェアを維持し、近年は「クリアアサヒ」のような第3のビールでもシェアを伸ばしています。

日本の酒類マーケットには家庭用(量販)市場と業務用市場がありますが、当社の売上は家庭用市場が70%。つまり「家飲み」が中心です。一般的な家庭用向け商品の市場ではECサイトによる販売も伸びていますが、ビール市場はまだ対面販売が圧倒的に多く、リアル店舗が重要な販路であることに変わりはありません。

お客様に商品が届くまでの行程は、まず卸売業者、そこから全国のスーパー、コンビニ、生協、ディスカウントストア、業務用酒販店などに流れていきます。弊社に限らず、かつてメーカーは卸売業者への商品販売が主でしたが、現在はその先にある流通や消費者にまで活動を強化しています。

流通への営業活動は主に2つに分かれます。1つはスーパーやディスカウントストアなどの本部と商談する営業です。そこでは流通の年次計画などに基づいて商品や販促提案などを行います。もう1つは、本部商談で決まった販売計画を実際の売場に反映させる店舗担当の活動です。店舗担当はアサヒビールの本部営業から店舗活動内容の指示を受け、店舗の責任者と直接話しながら、実際の売場を作ったり、提案活動をします。例えば3~4月なら、「お花見」と「スーパードライ」をどう絡めて店頭で訴求するかを考え、提案しながら花見シーズンらしい売場を構築していきます。

地域、店舗、ライフスタイルに応じてビールの売り方も変えていく

これまで本部営業と店舗担当のやり取りは、活動指示を携帯電話にテキストで送り、結果を写真とテキストで報告するというシンプルなものでした。しかし近年、小売店が地域密着型の戦略を取るようになり、エリアや店舗単位で売場を工夫するケースが増えてきました。各小売チェーンはエリア担当者や店長に決定権を与えて自由に売場を作っているため、これまで以上に店舗ごと、地域ごとにきめ細かな対応が求められます。

一方で、消費者のライフスタイルが変わり、ビールの購入パターンにも変化が生まれています。例えば、スーパーへの来店頻度が高いけれど、惣菜売場にだけ立ち寄って帰る人も増えています。このような変化に合わせて、ビールの売場も惣菜の近くに置くなどして、きめ細かく売場を変えていく必要があります。チェーン担当、エリア担当のスタッフと綿密なコミュニケーションを取りながら、より細かいレベルで店頭活動を進めていくことが重要となります。

 
 

市場や消費者の変化に対応すべく、各店舗の売上実績もより早い流動で把握する必要がありました。しかし、店舗ごとの売上実績は月1回の会議で紙配布しており、店舗担当が構築した売場がどれだけ成果に結びついているか、即座に実感するには至っていませんでした。

スマートデバイスで実績を見ながら店頭施策に反映

そこで2015年頃、「SCRUM(スクラム)」というプロジェクトを立ち上げました。「本部担当」「ユニットキャップ」「店舗担当」それぞれが、自らの役割をしっかり果たし、ラグビーチームのようにSCRUMを組んで店頭で勝つという思いから生まれたプロジェクトです。その一環として、アサヒビールの本部営業や店舗担当がリアルタイムに店舗施策の結果を把握できるように、2017年2月から各店舗の売上実績、店舗担当への指示、活動内容などを共有するためのタブレット端末を配布し、システムとしてウイングアーク1stの「MotionBoard Cloud」を導入しました。売場にタブレットを持ち込んで、担当する店舗の売上実績、前月比、予算比などを確認しながら提案活動を行っています。Excelに慣れ親しんだ環境を考慮して、インターフェースはExcelの形式を反映させました。

従来は実績データを確認する頻度が限られていたため、本部からの指示や各店舗担当の工夫に頼った売場作りが中心でした。しかしMotionBoardによって、売場の実績をほぼリアルタイムに確認できるようになり、客観的な根拠に基づいた店舗への提案が可能になりました。店舗担当は自分が行った施策の成果が翌日に確認できるため、仕事のやりがいも向上し、モチベーションも高まっています。

MotionBoardの導入は、全国で多様な営業活動をしている方に対して、本人のスキルに加えて新しい提案の切り口を増やしていこうというのが狙いです。便利なツールを提供してデータを役立ててもらいたい一方、地域に溶け込んで独自に営業活動をしている店舗担当には、それぞれの個性を活かした売場づくりにも期待しています。

本部担当もオフィスでも、PCのMotionBoardから実績を確認しています。これにより上流から下流まで、情報共有のスピードが大きく上がりました。基幹システムから実績を見ることも可能ですが、MotionBoardで見られる数値データは最新の必要最低限の数千万件に絞り込んでおり、カテゴリー単位、商品単位、店舗単位でブレイクダウンしながらすばやく見ることができます。従来会議で配布していた紙の資料に比べると圧倒的に使いやすくなっています。実績を発表して終わりだった会議も、現在は実績ありきで会話ができるため、店頭活動に対してより突っ込んだ議論ができるようになりました。

 
 

アサヒグループでは各種データ分析も行っていますが、店舗担当に限っていえば、分析業務には重きを置いていません。MotionBoardは、シンプルに結果を表示する形にこだわって作りました。高度なシステムを作っても、分析したことだけで満足してしまうことが多いからです。それより、なぜこのような結果が出るかを理解する過程が重要で、その部分は教育やマインドセットで高めるべきだと考えています。高度な分析ツールで思考の過程がブラックボックス化されてしまっては原因の追及ができません。シンプルなツールだからこそ伝わることもあります。

活動内容の可視化で店舗スタッフのモチベーションが向上

一方、MotionBoardをSalesforceと連動させ、活動報告の内容を表示する項目も設けました。リーダーやマネージャーは、Salesforceを通して店舗担当に具体的な施策の指示を出します。店舗担当が毎日の活動をSalesforceに入力すると、活動報告として登録されてグループ内で共有されます。それまでリーダーやマネージャーは個々にあげてきた報告を見ながら実態を確認していましたが、現在はMotionBoardでほぼリアルタイムに活動内容を共有しながら新たな指示を出すことができます。店舗担当全員の行動が把握できるため、どこに課題や遅れなどがあるかが即座にわかり、フォロー体制も立てやすくなりました。店舗担当にとっても、自分自身のみならず他のスタッフの活動も可視化されたことにより、モチベーションをより高められるようになっています。

MotionBoardの導入が店頭での売上にどれだけ貢献したかは、複数のKPIを設定して効果測定を行っています。今まで見られなかった売上や店頭活動の実績など、店頭で確認できる情報量が圧倒的に増えていることを考えれば、効果が出ないわけがありません。流通に寄り添うことが重要となる店舗営業にとって、科学的根拠を持って対応できるメリットは大きく、流通との距離を縮めることにつながっていると思います。MotionBoardを使い始めてまだ1年足らずですが、今後も活用レベルを高めてさらなる進化を目指していきます。

お話をお伺いしたDataLover:清水 博(しみずひろし)さん

アサヒプロマネジメント株式会社業務システム部 業務グループ

国内システムインテグレーターでIT技術者として勤務。2007年、アサヒビール株式会社に中途入社し、業務用&エリア営業を担当。その後、アサヒグループホールディングス株式会社で国際事業企画・業績管理・M&Aに従事。その後、アサヒプロマネジメント会社に在籍し、現在は営業領域を主としたアサヒグループのIT企画を担当する。

 

 

 

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