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『日本国勢図会』や『データで見る県勢』のバックナンバーが無償公開! その内容と使い方を押さえよう

         

国際情勢や日本の産業について、自分の知識不足を痛感した──。

そんな経験がある方は少なくないのではないでしょうか。また、それらに精通しているという方でも、自分が住んでいる都道府県の主な生産物についてはいかがでしょう?

第一生命保険の創立者矢野恒太(1866-1951)の意思を引継ぎ、統計の普及・啓発事業に取り組む矢野恒太記念会は、コロナ禍における学習支援を目的として、同会編集・発行の電子書籍バックナンバーを無償で公開しています。

本記事では教養を高めることにも、仕事にも役立つ無償公開中の4冊の書籍についてご紹介します!

どんなデータが無料で公開されている? 4冊の書籍の内容をご紹介

2022年3月現在、矢野恒太記念会のホームページ内で無償公開されている電子書籍は『日本国勢図会2020/21』『世界国勢図会2020/21』『データで見る県勢2021』『日本のすがた2020』の4冊です。それぞれ、どのような書籍なのでしょうか?

日本国勢図会2020/21


1927年に第1版が発行され、こちらで第78版を数える長い歴史を持つ資料です。副題に「日本がわかるデータブック」とある通り、全40章で日本の人口から産業、国防と自衛隊に至るまでさまざまなデータがまとめられています。

マクロな観点からファクトフルネスに日本を捉えたい、という需要を持つ方におすすめです。

世界国勢図会2020/21


名前の通り日本国勢図解の国際統計パートを大幅に拡充して創刊された姉妹版です。初版発行は1985年で、2020年版は第31版。全13章で世界の国々の人口・GDP(国内総生産)などの最新統計や産業の状況、新型コロナウイルス感染者数の推移などがデータでまとめられています。各章冒頭の解説文を読むだけでも、その年の世界情勢の理解が進みます。

ロシア侵攻など世界情勢に目を向けるべき出来事があったからこそ、本書の内容を押さえておきたい方は多いはずです。

データで見る県勢2021


47都道府県それぞれの特性について深く掘り下げた日本国勢図会の姉妹版です。初版発行は1988年で、2020年は第30版が発行されました。第1部「府県のすがた」で県民所得や実収入(1世帯あたり)、人口ピラミッドなど都道府県ごとでまとめて基本データが示され、第2部「府県別統計」では、労働、金融・財政などトピックごとに、47都道府県+全国のデータが総覧できます。さらに第3部では人口や産業別就業者割合などさらに項目を絞って「市の統計」がまとめられており、第4部では「町村の統計」がテキスト・Excelの両形式で提供されています。

日本のすがた2020


日本国勢図会のジュニア版であり、初版刊行は1970年です。対象である小学校高学年から中学生にもわかりやすいように平易な日本語で記述されており、色付きグラフが多用され写真も使用されているという特徴を持ちます。簡単な内容とはいえ、データは充実しており、場合によってはほかの3冊よりも日本・世界の理解に役立つ場合もあるはずです。

データだけでなく、文章も魅力 ただし、過去のデータという点は意識しよう

無料公開されている4冊の書籍の概要について説明してまいりました。

統計資料という字面だけを見ると数字が並んだ表ばかりで無味乾燥なイメージが浮かびますが、これらの書籍は、近年の出来事をまとめて紹介してくれる文章も魅力です。

例えば、ロシアのウクライナ侵攻を受けての安保理会合のニュースを目にし、「そういえば国連ってどんな機関だったっけ?」と疑問に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
──筆者は思いました。

『日本国勢図会2020/21』p23では、国連の主要機関「総会」「安全保障理事会」「信託統治理事会」「国際司法裁判所」「経済社会理事会」「事務局」について、その他の国際機関との関わりとともに図示されており、その直下では2019~2021年の通常予算分担率が国ごとにまとめられています。

この期間における日本の通常予算分担率は8.564%でアメリカ合衆国、中華人民共和国に次ぐ3位なのですね。

データのソースは公的データだけでなく、『世界国勢図会2020/21』p273~p274にはガートナーの発表をもとにした『半導体のメーカー売上高』表や『メーカー別スマートフォン販売台数』表なども掲載されています。

出典:『世界国勢図会2020/21』公益財団法人 矢野恒太記念会、p272-p273

2020年4月時点ではインテルが半導体のメーカー別売上高で1位、サムスン電子が2位でした。2021年のデータでは両者の順位は逆転したことが発表されています。このようにあくまで過去のデータということは忘れてはなりません。とはいえ、自分で探すには骨が折れる統計が見やすくテーマごとにまとめられているのは非常に重宝します。

“データを書籍で見る”メリットとは?

『日本国勢図会』や『世界国勢図会』に掲載されているデータは公的機関によって公表されているものが多く、知りたければ自分で検索して探すこともできるはずです。
しかし、データがこうして1テーマで書籍にまとめられていることには、以下のようなメリットがあります。

1. いちいち探す時間・手間が省ける
2. 情報が網羅されている
3. コラムや説明文からデータの見方のヒントが得られる
4. パラパラと眺めることで、思ってもみない気づきにつながる可能性がある

世界、日本、都道府県、市区町村についてのデータは、教養を高めることや公務員の政策立案などすぐに真っ先に思い浮かぶ目的だけでなく、民間企業の新規事業立案やサプライチェーン強靭化など、さまざまな業務に役立つ可能性があります。

書籍にはデータを選別しまとめる「編集」の目が加わっています。そこから新たな視点を得て浮かんだ仮説を、Web検索でさらに深掘りしてアイディアを形作っていく。そうした使い方ができれば、この4冊はあなたにとって大きな武器となるでしょう。

終わりに

「本当にいいの?」と疑ってしまうほど、手間のかかった書籍や動画が無償で手に入る機会があるのが、今の時代のいいところです。今回紹介した4冊もそうですし、以前本サイトで書評した『データ分析のための統計学入門』も該当するでしょう。MOOCやCourseraのように一流大学の講義が受けられるサービスもあります(詳しくはコチラ)。

無料と聞くと警戒してしまいがちですが、うまく活用すれば時間的にも金銭的にも「一挙両得」となります。ぜひ、ご紹介した書籍をどれでもまずは一冊ご覧になってみてください。

【参考資料】
・書籍バックナンバーの無償公開┃公益財団法人 矢野恒太記念会
・Gartner Says Worldwide Semiconductor Revenue Grew 25.1% in 2021, Exceeding $500 Billion For the First Time┃Gartner

宮田文机

 

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