散々「ドイツ! ビール!」とぶち上げておいて何ですが、ドイツ国内のビールの個人消費量は年々減り続けているのが現実です。
1950年に調査が始まり、ピークは1980年の1人当たり146リットル。それが2017年には101リットルまで落ち込んでいます。その減少率、なんと4割。
それでも年間個人消費量は世界4位(1位はお隣チェコ共和国)ですし、日本の年間41リットルに比べると2.5倍ほどではありますが……
そこで、ルームメイトのドイツ人男子2人にビールへの思いを聞いてみました。
左:ヨハンくん(23)…ベルリン在住歴10年くらいの大学生
右:フロリアンくん(21)…ベルリン在住2年目。スタートアップ勤務
私:どれくらいの頻度でどれだけの量を飲む?
フ「毎週末、多分2-3リットルくらい。大学が休みのときはもっと増える。あ、それ年間平均上回ってるの?やばいもっと真面目にジム行こう」
ヨ「週末友達と出かければボトルで1、2本とか。出かけなかったら飲まない」
私:ソーセージとビール、世界から消えたら困るのはどっち?(ドイツ人的には究極の選択)
フ:「ビール(即答)」
ヨ:「ソーセージ。ビールはなくなったら寂しいけど、困らない」
と、同じ20代前半でも結構温度差のあるフロリアンくんとヨハンくんですが、個人消費量が減ってきているところからすると、おそらくヨハンくんのような若者が増えてきているんでしょう。
ちなみにドイツでは、満17歳からビールとワインの飲酒が合法です。(ハードリカーは20歳から)
若者のビール離れ以外にも、ビールの個人消費量減少の背景にはいろんな理由が隠れている気がして、考察してみました。
ドイツでは現在、人口の20%以上が65歳。日本と同様高齢化社会がメキメキ進んでいます。さらに50歳以上で見ると人口の約45%ほど。
対して個人消費量がピークだった1980年は、65歳以上の人口は約11%、50歳以上の人口は約31%でした。
ちなみに2017年の総人口は、1980年に比べておよそ250万人増えています。
20代のときと変わらず大樽飲めるぜワハハっていう50代+は、いくらビール好きのドイツ人でも少ないでしょうから、高齢化社会が酒量減少に関わっている可能性はあるんじゃないかと思います。
寛容な移民・難民政策で知られるドイツでは、8200万人の人口のうち、8人に1人が外国籍だそうです。
しかも年々増え続ける移民の中にはお酒を飲まないイスラム教徒や、ビール文化圏以外の出身者も多いようで、2014年以降だけでも中東やアフリカからの難民を160万人以上受け入れています。移民の11.2%はシリア、アフガニスタン、イラクなど飲酒習慣のない国の出身となっています。ちなみにベルリン在住3年目の私も、普段飲むのはもっぱらワインです。
これはドイツに限った話ではありませんが、ビールはやはり糖質も多いし、体重や見た目の維持によろしくないという考えの人が増えていますよね。
またベルリンなどの都市部では、ビーガン、ベジタリアンの割合が高いと感じます。2015年のVEBUの調査によると、ドイツ人口のおよそ10%がヴィーガン(動物由来の食べ物を食べない)なのだそうです。モラル上の理由から菜食主義者になる人が多いようですが、こうした人たちはスピリチュアルや健康管理にも熱心で、お酒をあまり飲まない人が多いというのが個人的な肌感覚です。
ビール純粋令が現役という驚きの事実や、それぞれの地方で愛され育まれてきたビールの種類などについて今回は紹介してみました。
「ビールを飲みながら政府の悪口を言うのはドイツ人の基本的な欲求だ」と19世紀ドイツの政治家ビスマルクさんは言っています。ドイツ文化と切っても切れないビール視点で、ドイツ社会の現在に思いをはせるのもまた面白いものです。
(佐藤ちひろ)
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