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ポストSNS時代のコミュニケーションのかたち、テキストメッセージベースの新しいプラットフォーム「Community」

         

お気に入りのアーティストや芸能人の活動情報を知りたいとき、どんなプラットフォームを覗きますか? Twitter、Facebook、Instagramあたりがメジャーでしょうか。

ただ、こうしたプラットフォームでは能動的に欲しい情報を探す必要があったり、その過程で見たくない情報まで目に入ってきたりで、辟易してしまうことが多いのでは。

そんなこんなでちょっとチェックを怠っていたあいだに、出演番組や地元でのライブの情報を見逃してしまったり。でも、毎日SNSをまんべんなくチェックする時間なんてありませんよね。

情報がターゲット層に効率的に届かないというのは、有名人たちの悩みでもあるのです。また、誰もが見てコメントできるプラットフォームでは、悪意あるコメントやファン同士の諍いなどのネガティブな反応を呼ぶ可能性が。

こうした既存のSNSの欠点を完全にカバーするアプリ「Community」が、いま欧米の著名人を中心に大ブームになっています。「Communityリーダー」と呼ばれる500人ほど(2019年1月時点)の利用者には、ポール・マッカートニー、ジェニファー・ロペス、アシュトン・カッチャーなどそうそうたる面々が。気になるその仕組みと使用方法とは? 詳しく見ていきましょう。

有名人から個人的なメッセージが届く

ハリウッド女優のケリー・ワシントン(Kerry Washington)は、トロント国際映画祭に参加した際、Communityでトロント在住のファンに向けてこう呼びかけました。「トロントで最高の青汁を買うならどこ?」

このメッセージはケリーからの個人的なテキストメッセージとしてファンの元に届きました。あっという間にファンからたくさんのオススメが寄せられ、ケリーは購入した青汁の写真にお礼メッセージを添えて、返信をくれた全員に送りました。さらには、その当日に映画祭で彼女の出演作を観た人たちを楽屋に招待したのです。

このエピソードには、Communityの大きな特徴2つが反映されています。

ひとつは、地理情報などに基づいて対象となるファンにのみメッセージを送れること。ケリーが他のSNSプラットフォームで同じことを聞いたとしても、トロント在住ですらない大勢の人にも呼びかけることになってしまい、効率的に有益な情報を得ることはできなかったでしょう。

もうひとつは、Communityリーダーからの質問が「投稿」ではなく個人的なテキストメッセージとして届くこと。そのため、ファンの返信を読めるのも発信者であるCommunityリーダーだけです。この1対1のコミュニケーションがファン心理に働きかけ、迷惑行為フリーの環境を作り出します。たとえ迷惑行為をする人がいたとしても、一発ブロックされておしまいです。

Communityの概要

Communityを運営するCommunity.comは、2017年に現在の製品の原型となるアプリShimmerを発表しました。これはミュージシャンとファンを繋ぐために作られた投稿型プラットフォームでしたが、Community.comの共同創設者Matthew Peltierは、テキストメッセージが持つ親密性に着目し、仕様を一新します。そしてさらに大きなマーケットを探すうちに、U2やマドンナなどの大物ミュージシャンを抱えるプロダクションMaverickの目に止まり、業務提携に漕ぎ付けます。その後、現在のアプリCommunityが2019年7月に正式に発表されました。

使い方は、

情報発信をしたい人はCommunityのウェブサイトから登録し、Communityリーダーとなって専用のテキスト用番号を受け取る

ファンにTwitterなど任意の手段でその番号にテキストメッセージを送るように伝える

ファンが指定の番号にテキストメッセージを送ると、Communityリーダーから「このリンクから登録してください」と返信が来る

リンクから登録を完了すると、Communityリーダーからテキストメッセージを受け取れる

ちなみに2020年4月現在、Communityリーダー登録は順番待ちです。

Communityのビジネスモデルとは?

Communityと既存のSNSとの最大の違いは、そのビジネスモデル。既存の大手SNSは無料でサービスを提供する代わりに、登録者のデータを収集してターゲット広告を表示させたり、データを他社に売り渡すこともあります。Communityはそういったデータの二次利用は一切しないと明言しています

Communityの収入源は情報発信者への課金のみと、とてもシンプル。金額はファン数に応じて100ドルから数千ドル/月となっており、ファンは無料でアプリを利用できます。ちなみに誰もが知っている超大物有名人は全体の25%ほどで、その他は新進アーティストや起業家など、ユーザー属性は多岐に渡ります。

このアプリのメリットは、居住地や年齢などでターゲット層を絞った効果的なマーケティングが可能なこと。特にライブが大きな収入源となっているバンドやDJにとっては、地域ごとのフォロワーに確実に出演情報を届けることができるため、使い勝手は抜群と言えるでしょう。

親密さを保てるかが鍵

ケリー・ワシントンのような使い方をする有名人がいる現在のところは、Communityはファンにとって抜群に魅力的です。しかしファン数が大幅に増えたとき、ただの情報通知アプリになることなく同様の親密さが保てるかが、このアプリ存続の鍵になるのでは。

というわけで、好きなセレブと個人的なメッセージのやりとりをしたいなら、登録者が少ない今が狙い目かもしれませんね。

参考リンク:
Why your favorite celebs are ditching Twitter for an app you’ve never heard of

(佐藤ちひろ)

 

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