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「コンテキストスイッチ」が我々の集中力を奪う──どう対策すればいい?

         

「仕事に集中できない」という悩みは、古今東西を問わずよく耳にします。特にコミュニケーション手段が電話→メール→チャットと移り変わり、情報の行き来するスピードが加速したことで仕事が中断される機会が増え、じっくり腰を据えてひとつのタスクに取り組みづらくなったと感じる方は多いのではないでしょうか。

米国のソフトウェア企業Asanaでは、そのようなタスク間の切り替えを「コンテキストスイッチ」と呼び、高いフラストレーションやストレス、仕事上のプレッシャー増につながること、現代においてコンテキストスイッチの機会が増えていることを指摘しています。

コンテキストスイッチはなぜ生じるのか? どうすればコンテキストスイッチによる集中力の低下を抑えることができるのか、本記事で見ていきましょう。

「コンテキストスイッチ」とは? 集中力に与える影響は?

IT用語において「コンテキストスイッチ」は、CPUが実行中のタスクを一時的に中断して、一時保存し、別の作業に取り掛かる一連の流れを意味します。OSはコンテキストスイッチにより、マルチタスク(複数のタスクを同時に実行すること)を可能にしているのです。

マルチタスクの実現は、コンピューターの可能性を大きく高めました。

しかし、「人間はマルチタスクを苦手としている」というのが現在の通説です。

たとえば、2010年、米サイエンス誌に掲載されたレポートでは、人間の前頭葉の機能は2つの目標を同時並行的に追及するのが限界であると記述されています。

また、米国科学アカデミー紀要(PNAS)において2009年8月に発表された研究では、同時に複数のタスクをこなす度合いが大きいHMM(Heavy Media Multitaskers)とその度合いが小さいLMM(Light Media Multitaskers)の認知能力が複数のテストで比較されました。そして、図形の方向が変化したかどうかの分類や文字の仕分けなどを、注意力を奪う要素を交えながら試す複数のテストを行った結果、LMMに分類される人々の方が成績の良い傾向がみられたのです。

同論文ではHMMの人々の方が情報処理において無関係な刺激をフィルタリングしづらいことを指摘しており、マルチタスクが集中力を削ぐ原因となる一因となっていることが推察されます。

いくつものタスクを抱え込んだりスイッチして取り組むことには限界があるというのは、論文を引用するまでもなく、経験から納得できるという方も多いのではないでしょうか。

コンテキストスイッチを防ぐための2つの方法

人間が苦手としており、また集中力を削ぐ要因ともなるコンテキストスイッチ。しかし、決意したからといってすぐに止められれば苦労はありません。その対策法として、「仕組み化」あるいは「ツール」を導入することをおすすめします。

コンテキストスイッチを防ぐ仕組み「ポモドーロテクニック」

ポモドーロ・テクニックは、時間当たりの生産性を高め集中してタスクに取り組むためのテクニックとして以前より良く知られている方法です。

その手段は、以下のようにシンプルなもの。

1.タイマーを25分間にセットする
2.タイマーが鳴ったら5分間休憩を取る
3.「1⇔2」を3~4回繰り返したら、15~20分程度の休憩を取る

時間を区切ることで強制的に集中しなければならない時間と適度な休憩を作り出すポモドーロ・テクニックは、通知や相談に対し「今はこれに集中しているから」と意識を断ち切りコンテキストスイッチを防ぐ一助となるはずです。

コンテキストスイッチを防ぐ仕組み「集中モード」、「スマホ依存対策アプリ」

そもそもコンテキストスイッチのきっかけとなる通知自体を断ち切ってしまうのも、集中力を高めるためのドラスティックな解決法としては有効です。たとえば業務用チャットとしてポピュラーなSlackやChatWorkには、「集中モード」「おやすみモード」といった名称で通知を切るための機能が存在します。

また、『Detox』や『Forest』など、スマホ依存対策を目的としたアプリは、指定したアプリの利用をロックする、スマホの「未」使用時間に応じてバーチャル上の植物を育てるといった形で、我々に集中することを強制してくれます。

リモートワークはマルチタスク化を加速した

コロナ禍をきっかけにリモートワーク・テレワークが普及したことでマルチタスク化やコンテキストスイッチの誘惑が加速した──。そう感じている方も多いのではないでしょうか。

オンライン開催されたヒューマンコンピューターインタラクション(HCI)2021において、米マイクロソフトは、オンライン会議が大規模で、午前中に開催され、長く、反復的であり、関連性やエンゲージメントが低いほど、メールやファイル作成といったマルチタスク(日本語で言う‟内職”のことでしょう)がより多く行われやすくなることを発表しています。

ただし、同調査では自身との関係性の薄い話題が取り扱われているタイミングでほかのタスクに取り組むなど会議中のマルチタスクがポジティブな結果につながる場合もあることが指摘されていることも押さえておきましょう。

また、ミーティング中のメモなどコンテキストスイッチにはカットすることが不可能な類のものもあるため、いかにそのポジティブな側面を取り込みつつ必要な場合には集中するか、という視点も重要と考えられます。

終わりに

我々の集中力にとって大敵となりうる「コンテキストスイッチ」についてさまざまなデータを参照しつつ解説してまいりました。asanaの記事によると、2022年時点で、56%のナレッジワーカー(知識労働者)が通知に即座に対応しなければならないと感じていると回答したといいます。

目の前の画面からの働きかけに人間の意志で対抗するのは容易ではありません。仕組みやツールを巧く駆使して、自らの集中力を高めていきましょう。

(宮田文机)

 

参照元

・仕事の
解剖学グローバル版
インデックス2023┃asana ・Alicia Raeburn『コンテキストスイッチが生み出す生産性の低下』┃asana ・Eyal Ophir, Clifford Nass nass, Anthony D. Wagner『Cognitive control in media multitaskers』PNAS ・コンテキストスイッチ 【context switching】┃IT用語辞典e-Words ・人間の脳はデュアルタスクが限界――仏研究者が発表┃ITmediaエンタープライズ ・SYLVAIN CHARRON,ETIENNE KOECHLIN『Divided Representation of Concurrent Goals in the Human Frontal Lobes』┃Science ・CHI 2021: Making remote and hybrid meetings work in the new future of work┃Microsoft

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