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CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)はおろか、GDPR(一般データ保護規則)への対応も後手に回っている企業がまだまだ多い中、さらなる個人情報保護法案がEUで通過しようとしています。
それが「eプライバシー規制」、通称「クッキー法」です。1994年にネットスケープコミュニケーションズが実装したクッキーの使い方に大きな制約が生まれます。
データのじかん読者の皆さんはクッキーについてご存知だと思いますが、今一度、その仕組と利用例を振り返ってみましょう。
クッキーは1994年にネットスケープコミュニケーションズがはじめて実装し、1997年に標準化された通信プロトコルのひとつです。つまり、ほとんどの人にとってはネットを使い始めた頃にはすでに広く普及していたわけですね。
クッキーが実装された最初の目的はユーザーの行動履歴をブラウザに保存し、サーバーがそれを読み取ることで動的にコンテンツを出し分けることでした。
たとえば、すでに利用規約に同意したユーザーに何度も同じ利用規約を読ませるのを避けるとか、ECサイトでログイン前にショッピングカートに入れた商品がログイン後にも保持されているとか、そういった利用方法です。
それが、ネット広告の発達にともなって別の使い方がされるようになりました。自宅とオフィス、そしてモバイル機器など複数のブラウザを1人のユーザーが使うのが普通になってそれまでの広告手法が効きにくくなったことから、それぞれのブラウザに保存されたクッキーを「名寄せ」して広告の追跡に使われるようになったのです。
みなさんも身に覚えがあると思います。職場から帰りの電車でスマホから見ていた新しい家具や週末旅行プランの広告が自宅のPCでも表示されるといった現象を引き起こしているのが、クッキーによる追跡型広告、いわゆる「ターゲティング広告」です。
この広告は大きい成果を上げ、一部では「ネット広告枠の価値を100倍にした」という声もあるほど。一方で、まるで自身の行動を監視されているような ――いえ、実際にクッキーを使って監視しているこの広告手法には批判の声もありました。しかし、利便性と監視への不快感の両方をユーザーに与えながらも、特にネット広告ビジネスでは必要不可欠な技術となったクッキーにはこれまで強い規制がかかることはありませんでした。
GDPRをきっかけとした個人情報保護の動きの中で、ついにその「聖域」へとメスが入ったわけです。
ではクッキー法の中身を見ていきましょう。基本理念はGRPRやCCPAと同じく、「ユーザーの個人情報の扱いはユーザー自身で決めるべき」というところにあります。
つまり、クッキーの使用にはユーザーの同意が必要となり、しかも具体的に「ターゲティング広告のような追跡に使われます」と明確に説明しなくてはいけないとのこと。「マーケティングに利用します」というような、これまでごまかし半分で使われきた文言はもう使えないというのです。
これはネット広告業界にとって大打撃でしょう。しかも、GRPRやCCPAと同じように「クッキー情報を提供しないユーザーにも同質のサービスを提供すること」が求められているのです。
この動きを受けて、Googleは2017年にGmailの内容を利用した広告を停止しました。こういった措置が世界中の企業で必要になると思われます。
となると、無料サービスの代わりにユーザーの個人情報を得て広告収益で稼いできたGoogleやFacebook、日本ではLINE、楽天、そしてすべてのアドプラットフォーマーたちは商売上がったり…になってしまうので、という見解を示す人もいます。
EUでGDPRが成立したことを受けてカリフォルニアでCCPAが成立したように、こういった動きは連鎖します。遠くない未来にほとんど世界中の主要国で同種の法律が成立することでしょう。となると、もはやサービスを維持できない企業が出てくる可能性は否定できません。
個人情報保護の動きが止められないのであれば、ビジネスモデルに大きな転換が必要になります。ウェブサービスであれば、課金制へと移行せざるを得ないものも出てくるでしょう。また、ネット広告は10年以上時間を巻き戻して、バナーのクリエイティブで勝負していた頃に戻るのかもしれません。
クッキー法は事業者にとっては厄介な問題ですが、消費者にとっては有益です。これまで、消費者の利益を損ないながらも運営されてきたサービス、広告のありかたを見直すときに来ているのではないでしょうか。そして、情報銀行のようなサービスを一般の人が活用する、という選択肢も少しずつ現実味を帯びてきているように感じます。
【参考リンク】 GDPRより怖い? EUが準備中の「クッキー法」 | 日本経済新聞 EU、GDPRの次はクッキー法 通信の秘密保護強化へ | 日本経済新聞
(塚岡雄太)
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