データセンターは、インターネットやクラウドサービスの普及に伴い、現代社会の情報基盤として不可欠な存在となっています。これらの施設は、大量のデータを保存・処理し、24時間365日稼働するため、膨大な電力を消費します。本記事では、データセンターの電力消費量に焦点を当て、その現状と将来の見通し、そしてエネルギー効率化の取り組みについて紹介します。
データセンターとは、サーバーやネットワーク機器を集中的に設置し、データの保存、処理、管理を行う施設です。企業の業務システムやウェブサービス、クラウドコンピューティングなど、多岐にわたるサービスの基盤を支えています。そのため、データセンターの安定稼働は社会経済活動に直結しており、電力供給の確保と効率的なエネルギー管理が求められます。
国際エネルギー機関(IEA)の報告によれば、2022年の世界のデータセンターの電力消費量は約240~340テラワット時(TWh)であり、これは世界の最終電力需要の約1~1.3%に相当します。 この数値には、暗号通貨のマイニングによる消費電力は含まれていません。また、IEAの分析では、2026年にはデータセンターの総電力消費量が1,000TWhを超える可能性も指摘されており、これは日本の年間電力消費量に匹敵します。
世界に8,000以上あるデータセンターのうち、33%が米国、16%がEU、約10%が中国に立地しているといいます。2026年の電力需要に占めるデータセンターの割合は、米国で6%、EUで5%、中国で3%まで拡大すると予測されています。特にデンマークでは20%弱、アイルランドでは32%に達すると見込まれています。
データセンター内での電力消費の内訳を見ると、サーバーやストレージなどのIT機器が約50%、冷却設備が約40%、ネットワーク機器が約10%を占めていると言います。 特に、AIの普及に伴い高性能なプロセッサの導入が進む中、これらの機器から発生する熱を管理する冷却システムの重要性が増しています。
データセンターの電力需要は今後も増加が予想されています。米国では、2022年の17ギガワット(GW)から2030年には35GWに達すると予測されており、年率約10%の成長が見込まれています。2022年度の日本の総消費電力量は約939,000GWhで、そのうちデータセンターが占める割合は0.8%強とされています。しかし、2030年度にはこの割合が2倍以上、2050年度には5倍以上に拡大する見通しです。
データセンターの電力消費増加に対応するため、各国や企業はエネルギー効率化に向けた取り組みを強化しています。例えば、Googleは地熱発電を活用したカーボンフリーエネルギーの導入を進めており、Amazonは原子力発電所から直接電力供給を受けるデータセンターを取得するなど、再生可能エネルギーやクリーンエネルギーの活用を推進しています。
また、冷却技術の革新も進行中です。従来の空冷式システムに代わり、液体を用いた冷却システムの導入が検討されており、これにより冷却効率の向上と電力消費の削減が期待されています。市場調査によれば、サーバー冷却システム市場の規模は2023年の41億ドルから2026年には106億ドルに達すると予測されています。
日本でも、データセンターの電力需要は増加傾向にあります。科学技術振興機構(JST)の分析によれば、エネルギー効率の改善状況に応じて、データセンターやネットワークの消費電力量の将来見通しには大きな幅があり、省エネ対策の進展が鍵を握っています。
さらに、国内のデータセンターは東京圏や大阪圏に集中しており、地域的な電力供給やインフラ整備への影響も懸念されています。そのため、分散型データセンターの導入や、発電所近傍への配置による電力の地産地消の実現など、新たな取り組みが求められています。
(大藤ヨシヲ)
・IT 機器等の消費電力・排熱量 1. IT 機器等の消費電力 ・電力需要について ・国内データセンター市場におけるAI需要/地方分散/再エネ電源・Executive summary – Electricity 2024 – Analysis – IEA
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