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人類の発展に伴いさまざまに変化してきた都市。近年では、人々やさまざまなサービスが都市近郊に集約される動きが加速し、世界全体で見ると毎週150万人もの人々が都市に流入していると言います。
都市で暮らす人々の割合が日に日に高まる今、都市の中でよりよく暮らすということの重要性も増しています。
そこで今回は都市の多様性についての考え方の変遷と、近年考案されつつあるビッグデータを用いた定量的な都市多様性の測定方法を紹介します。
理解できる都市は死んでいる
生きている都市は混雑していてストレスが溜まる
でも夢が叶う場所でもある
「ジェイン・ジェイコブズ ニューヨーク都市計画革命」
都市の多様性を語る上で欠かせない存在が作家でジャーナリストのジェイン・ジェイコブズです。
1950年代、アメリカでは、「マスタービルダー」と呼ばれた都市建築家、ロバート・モーゼスがニューヨークの都市計画を推し進めていました。
モダニズム建築の興隆だった当時、その中心的な存在であったル・コルビジェは人口過密により、スラム化が進み、疫病の蔓延や、公害などの環境汚染が加速する近代都市を批判し、パリ中心部に均質で機能的な超高層ビル群を建築する「ヴォアザン計画」を打ち立てます。結局、計画が実を結ぶことはありませんでしたが、そのコンセプトが引き継がれたのがニューヨーク都市計画でした。
この都市計画では、モダニズムを背景にしたゾーニングと自動車中心とした都市構想が掲げられ、都市は機能的でシンプルなものへと変わろうとしていました。そして、計画の中心にいたのが、ロバート・モーゼスだったのです。
モーゼスが掲げる合理的な都市計画に警鐘を鳴らしたのがジェイン・ジェイコブズでした。彼女は、ニューヨークのダウンタウンに住んでおり、そこにいる人々を間近に見る中で、モーゼスが掲げる都市計画との大きなギャップを感じていたのです。
彼女は代表作の『アメリカ大都市の死と生』で、モダニズム建築家たちが推し進めた合理的で機能的な都市計画を痛烈に批判しました。そして、今まさにそこに息づいている人々を排除し、一見すると衛生的で美しい都市を構築できたとしても、均質化された空間のなかで住む人々は次第に活力を失い、都市は未来の廃墟となるだろうと指摘したのです。
さらに、1964年にはイギリスのルース・グラスが居住者の階層の上位化にともない地域の居住空間の質が向上する「ジェントリフィケーション」を考案しました。
居住空間の質の向上というと良いことのように思えますが、地域の建造物が再開発され、地価、物価が上昇し、低所得者層や高齢者が地域から離れざるを得なくなり、既存の地域コミュニティの崩壊や、ホームレスをはじめ生活困難者の生産の加速などの問題が根深く残っています。
ジェイコブズは著作の中で、都市が多様性をもち、活気づくためには以下の4つの条件が必要不可欠であると主張しています。
さまざまな属性の人が、さまざまな目的で街を散策し、各所で出会えること、それが都市を多様にするのだとジェイコブズは考えたのです。
ジェイン・ジェイコブズが掲げた「都市多様性」はこれまでにも多くの支持を集めましたが、一方でその定義や効果は不明瞭で、そのためさまざまな議論を巻き起こしました。
そこで東京大学の先端科学技術研究センターでは、生物学で活用されている「種の多様性指数」を応用し、小売店の量と種類を変数として都市多様性の定量的な測定を試みました。
ビッグデータを用い、スペインで人口が集積している上位50都市について、顧客のクレジットカードの決済情報と都市多様性指数の相関関係を分析したところ、多様性が高いエリアにおいては小売店・飲食店の売り上げが向上するという結果が得られたそうです。
これはこれまでのジェイコブズの主張を裏付けるものであり、改めて都市多様性の重要性をわたしたちに突きつける結果となりました。
IT化に伴い、効率の良さや機能性の高さを指向する傾向は強まってきています。しかし、同時に今回のデータによってさまざまな不便さや複雑さが私たちの生活を豊かにする、という結果も得られています。
人が人らしく生きるために、「合理的」や「機能的」なものが本当に最適なのか、私は今一度じっくりと考えてみる必要があるのかもしれません。
【参考引用サイト、映画】 ・ニューヨークの都市開発に革命を起こした「一人の主婦」 - Unleash ・ビッグデータを用いた都市多様性の定量分析手法の提案~デジタル … ・魅力ある都市の条件 多様性と 雑味は どこから生まれるのか ・SoHoにおける芸術家街の形成とジェントリフィケーション - J-Stage ・Revisiting Jane Jacobs: Quantifying urban diversity ・映画『ジェイン・ジェイコブズ ―ニューヨーク都市計画革命 ...
(大藤ヨシヲ)
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