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国内企業の動向を知るー経済センサスとサービス産業動向調査を活用しよう

         

2009年から始まり、直近では2016年に実施された統計局の調査「経済センサス」をご存じでしょうか?

これは全国約600万の事業所を対象に行う統計調査で、「同一時点における全産業の経済活動を網羅的に把握すること」を目的にしています。時を同じくして始まった「サービス産業動向調査」は、「月単位または年単位でのサービス産業の動向を、事業活動別に把握すること」を目的とした統計調査で、どちらも新しい調査だからこそ、今後の活用が期待されています。

“経済の国勢調査”である「経済センサス」とは?

統計局といえば、「国勢調査」や「人口推計」など、人や世帯にかかわる統計データ“だけ”を扱っていると思っていませんか?

統計局では、人口・世帯だけでなく、経済活動に関する調査や家計・物価に関する調査、労働力、社会生活や科学技術研究など、さまざまな分野の調査を行なっています。中でも、国内の経済活動に関する網羅的な統計調査である「経済センサス」の名称は、データ活用をしているビジネスマンの方であれば、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

経済センサスとは、平成17年(西暦2005年。以下、西暦表記)6月に「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」において創設が提言された統計調査であり、その目的は「経済活動を同一時点で網羅的に把握すること」にあります。

この「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」は、当時の小泉純一郎内閣総理大臣が「聖域なき構造改革」を実施するために定めた基本方針で、別名「骨太の方針」とも呼ばれました。この骨太の方針において、なぜ経済センサスの提言がなされたかといえば、それまでの経済統計調査はほとんど産業別に、異なる年次や周期で実施されており、同一時点で網羅的に調査したものはなかったからです。

聖域なき構造改革では、それまで大蔵省(当時)主導で進められていた国家予算編成の実権を内閣に移行するため、国が中心となり経済財政運営の基盤整備が進められました。その一環として、経済活動の実態をより正確かつ網羅的に把握する必要があったのです。従来も産業別の経済活動を調査する統計調査は存在していましたが、同一時点における日本国内の経済活動を網羅的に調査しているのは、経済センサスだけなのです。これにより、GDP(国内総生産)の推計への利用や、地方消費税の清算が、より正確かつ公正に行われています。

国内600万事業所を対象に展開している経済センサス

経済センサスも、国勢調査と同じく5年に1回調査が実施されます。ただし、国勢調査と異なるのは「経済センサス‐基礎調査」(以下、基礎調査)と「経済センサス‐活動調査」(以下、活動調査)の2種類が行われるという点にあります。

基礎調査とは、事業所・企業の活動の状態を調査し、各種統計調査に活用する母集団(名簿)情報を整備するとともに、事業所及び企業の基本的構造を地域別に明らかにすることを目的としている調査です。2009年に第1回目の調査が実施され、事業所の名称や所在地、主な事業の内容などを調査しています。

国勢調査が、「日本国内に居住するすべての人」を対象にするのと同じく、「日本国内で経済活動を行うすべての事業所」が対象なので、外資系企業もすべて含まれています。

一方活動調査は、所在地や従業者数、売上金額などに加え、外国資本⽐率や設備投資額、売上原価、決算月など、特に経理項目の実態を明らかにする調査です。所在地や従業者数、売上金額などに加え、外国資本比率や設備投資額、売上原価、決算月など、特に経理項目の実態を明らかにします。なお調査項目は、法人などの経営組織、支店の有無、産業別で細かく分かれており、現在は23種類の調査票を使って調査しています。第1回の活動調査は2012年に実施されました。以降、基礎調査と活動調査をそれぞれ5年ごとに実施しています。

GDPの約7割を占めるサービス業を網羅した「サービス産業動向調査」

そのほか、統計局で行なっている経済統計調査に「サービス産業動向調査」があります。これはGDPの約7割を占める「サービス産業」に関し、その経済活動動向を把握するために欠かせない基本的な事項を対象とする調査で、毎月1回の調査と、年1回の拡大調査を行います。経済センサスが「同一時点で全産業を網羅する」ものならば、サービス産業動向調査は「月単位または年単位でのサービス産業の動向を把握する調査」といえるでしょう。

サービス産業動向調査の目的は「GDPの四半期速報に活用すること」と定められています。先述したとおり、サービス産業はGDPの大部分を占める分野であり、この分野の動向をより細かく正確に把握することで、GDPの精度も向上するからです。

サービス産業動向調査の対象となるのは、情報通信や運輸、不動産、学術研究、宿泊・飲食、教育、医療等に分類される企業・事業所で、統計手法を用いて業種や規模などに偏りがないように抽出した事業所に調査票を送ります(インターネットでの回答も可能)。月1回の調査では、名称や所在地、従業員数、毎月の売上高を事業活動別に集計し、年1回の拡大調査では、都道府県別の売上高も含めた調査の結果を事業活動別に集計しています。月1回の調査は、2008年7月からスタートし、年1回の拡大調査は2013年から始まりました。

 

 

経済センサス

– 簡単にいうと「国内すべての企業・事業所を対象にした経済の国勢調査」

サービス産業動向調査

– 簡単にいうと「月ごとまたは年ごとにおけるサービス産業の動向を事業活動別に調査」

概要

2005年、一般に「骨太の方針2005」といわれる政策の中で創設が提言された統計調査。同一時点におけるすべての産業の経済活動を網羅的に把握することで、GDPの推計への利用や地方消費税の清算などを正確かつ公正に行うことができる。そのほか、物流政策や温暖化対策など幅広い分野で活用されている。

GDPの四半期速報作成のため、2008年からスタートした統計調査。GDPの7割を占めるサービス産業において、基本的な経済活動(売上高や従業員数など)を事業活動別に把握することを目的とし、月1回の調査と年1回の拡大調査を実施。

特徴

すべての産業を網羅的に把握しており、市区町村内の町丁・大字単位(何丁目)でどの業種の事業所がどれくらい存在するかまで見ることができる。

教育や飲食、医療などのサービス産業も対象としており、その経済活動の推移を月単位または年単位で事業活動別に把握できる。

表: 「経済センサス」「サービス産業動向調査」のまとめ

GDPの算出から温室効果ガスの排出量、物流政策まで幅広く活用

サービス産業動向調査は、そもそもの目的が「GDP四半期速報のため」と明確に定められており、GDPの推計に利用されているほか、集計結果の月報と年報が発表されています。まだ新しい調査であり、今後民間や学術機関での利活用が期待されています。

経済センサスも、先述したように、GDPの推計への利用や地方消費税の清算などに利用されています。そのほかユニークな活用例としては、工場・物流インフラの整備や温室効果ガス排出量の測定が挙げられます。経済センサスでは工場ごとの製品出荷額などを集計しており、地域の工場出荷総額が把握できるため、地域を効率的につなぐための物流プランが策定できるそうです。また小売業においては、店舗の売り場面積も調査しているので、この結果を基に商業施設が要するエネルギー数値を当てはめ、温室効果ガスの排出量を推計するなど、環境対策の一環として活用されるケースもあるとのこと。

特筆すべきは、経済センサスでは市区町村内の町丁・大字単位(何丁目)で、どの産業分類に属する事業所がいくつあるかを把握しているので、出店計画や競合分析などでも大いに活用できることです。オープンデータなので、一企業のビジネス戦略だけでなく、たとえば商店街全体の活性化戦略の立案など、商圏の企業同士が連携して地域を盛り上げる活動にも役立ちます。こうした経済活動のデータと、国勢調査のデータを掛け合わせることで、地域特有の産業プランを策定することも不可能ではありません。

経済センサスもサービス産業動向調査も、まだ新しい調査で、今後さらなる利活用が期待されます。他社に先駆けたビジネス戦略を立案するには、これらの統計調査がきっと役に立つでしょう。

取材協力

総務省 統計局 統計作成支援課
 企画指導係長 井岡貴司氏

総務省 統計局 統計作成支援課
 審査発表係長 柳下央氏

総務省 統計局 統計調査部 経済統計課
 企画第一係長 雨宮大氏

総務省 統計局 統計調査部 経済統計課
 指導第二係長 姉崎慎吾氏

総務省 統計局 統計調査部 経済統計課 企画第二係
 統計情報官 鎌田由希氏

総務省 統計局 統計調査部 経済統計課
 審査発表第一係長 富澤剛氏

総務省 統計局 統計調査部 経済統計課
 審査発表第二係長 太田将彰氏

 

取材協力

総務省 統計局 統計作成支援課
 企画指導係長 井岡貴司氏

総務省 統計局 統計作成支援課
 審査発表係長 柳下央氏

総務省 統計局 統計調査部 経済統計課
 企画第一係長 雨宮大氏

総務省 統計局 統計調査部 経済統計課
 指導第二係長 姉崎慎吾氏

総務省 統計局 統計調査部 経済統計課 企画第二係
 統計情報官 鎌田由希氏

総務省 統計局 統計調査部 経済統計課
 審査発表第一係長 富澤剛氏

総務省 統計局 統計調査部 経済統計課
 審査発表第二係長 太田将彰氏

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