新型コロナウイルス感染症の影響の拡大で大きく生活が変化した2020年。
生活や労働に対する人々の意識はどのように変化したのでしょうか?今回は内閣府がおこなった「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」をもとに人々の行動や意識の変化について解説していきます。
今回の調査は2020年5月と12月の2回にわたり行われました。
この調査ではコロナ禍以前との比較はもちろん、2020年4月から5月に行われた最初の緊急事態の後に行われた最初の調査とコロナ禍の生活がある程度定着してきた2020年12月の調査の間での変化も知ることができる非常に有用な調査になっています。
まずは、コロナ禍における働き方の変化に目を向けていきたいと思います。
就業者を対象とした地域別のテレワーク実施率をグラフ化したのが以下になります。
全国でみても、東京23区と地方圏に分解してみても2019年12月と2020年5月を比較するとテレワーク実施率は倍以上になっています。一方で2020年12月にはどのセグメントでみてもテレワーク実施率は2020年5月と比較して5%以上減少しています。
また東京23区など都市部ではピーク時には半分近くの人々がテレワークに切り替えたと回答した一方で、地方圏の回答を見るとピーク時でもテレワークを実施していたのは20%未満と都市部と地方での大きな格差があるということが改めてわかります。
なお、業種別に見ると情報通信業では60%以上、電気ガス水道などのインフラや各種サービス業などでは30%以上がテレワークになっているのに対し医療、福祉関係者や保育関係者などエッセンシャルワークにおけるテレワーク率は5%未満となっています。
では、実際にテレワークを経験した人たちが感じているメリットやデメリットはどんなものでしょうか?
メリットとして最も高い回答率を得たのが「通勤が不要になる」です。ザイマックス不動産総合研究所が行なった「首都圏オフィスワーカー調査2019」という調査では、テレワークの実施率が高い東京近郊において、2019年の時点で平均通勤時間が59分となっており、多くの人が、1日あたり往復で2時間程度を通勤にかけている、という結果が明らかになっています。またこの調査において通勤時間が短いほど仕事への満足度が高いという結果も出ており、通勤が不要になったことは仕事の満足度を高める一助にもなっているのではないかと考えられます。
また休憩時間や隙間時間を有効活用できるという回答も58%と非常に高くなっています。これに関連してクロス・マーケティングが行った「読書に関する調査」において回答者の2割弱がコロナ禍で読書量が増えた、と回答しています。読書量の変化をはじめ在宅でできる趣味の時間の増加はこのテレワークの副次的な効果が反映されてのではないかと考えられます。
続いてテレワークのデメリットについて見ていきましょう。
デメリットの中で2020年5月と12月両方で最も多かったのが「テレワークできない又は合わない職種である」 という回答です。この回答をした人の割合は5月には36%程度でしたが、12月には40%程度になっており、慣れや時間の経過などで解決できない根本的な問題であることが推察されます。
また、2番目に多い「社内での気軽な相談・報告が困難」という回答も5月から12月にかけて回答率が増加しており、テレワークにおける大きな課題であると考えられます。
一方で「在宅では仕事に集中することが難しい住環境」という回答の回答率は5月から12月にかけて5%以上減少しており、環境を整えたり、時間をかけてその状態に慣れていったりした人が多いのではないかと思われます。
テレワーク率が大きく増加する中、生産性や労働時間はどのように変わったのでしょうか?
実際の回答をグラフ化したものが以下になります。
生産性・労働時間について両期間で「概ね変わらない」という回答が最も多く、50%以上を占めていたものの、2020年5月時点では、生産性、労働性ともに減少した(大幅に減少・減少・やや減少)という回答が40%を占める結果に。
しかし、2020年12月には両項目で減少傾向の回答が減り、それと同程度に増加した(やや増加・増加・大幅に増加)という回答の回答率が上がりました。
こうした回答からも、2020年5月時点には整っていなかった住宅の労働環境の変化や、時間経過による慣れが感じられます。
このなかでも、労働時間の増加に関する項目は全て増加傾向にあります。この背景には家での労働が継続することにより、プライベートと仕事の切り分けが難しくなったことがあるのではないかと考えられます。
今回の意識調査で大きな変化があったのがワーク・ライフ・バランスの意識変化です。
回答者全体のワーク・ライフ・バランスへの意識変化をグラフにしたものが以下になります。この調査では、「感染拡大前よりも、生活を重視するようになった」と回答した人が2020年5月の時点でおよそ50%、2020年12月の時点ではその数値は下がり、35%となったものの、1/3以上の人がコロナ禍において生活を重視するようになったと感じているようです。
年代別にみると特に20代30代の働き盛りの世代では5月時点で、およそ60%、12月の時点でも40%以上が「生活を重視するようになった」と回答しています。
逆に感染拡大前よりも仕事を重視するように変化したと回答した人はどの世代でも10%未満となっています。
一連の調査によってコロナ禍において、人々のライフスタイルはもちろん、生活への意識も変容したことが明らかになりました。
一方でテレワーク率などをみると、最初の緊急事態宣言の時点よりも、以前の状態へとゆりもどしが起こっているようにも感じます。
「ニューノーマル」と呼ばれるライフスタイルが確立する中で今後どのような変化があるのか引き続き見ていく必要があるように感じています。
皆さんもこの機会に是非この期間にどのような変化が身の回りに起こったのか改めて考えてみてください。
【参考引用サイト】 ・ 1 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査 ・ 第2回 新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査 令和 ・ 首都圏オフィスへの通勤時間は平均49分、通勤ストレスが低いほど仕事満足度が高い傾向:不動産トピックス 【不動産ジャパン】 ・ コロナ禍で「読書量が増加」は2割 電子書籍派も徐々に拡大【クロス・マーケティング調査】
(大藤ヨシヲ)
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