開会の挨拶に立ったTDBC幹事長の梅村尚史氏は、自身もタクシー会社を経営する立場からICT活用の必要性を実感しつつ、中小の事業社が個々にその投資コストを負担するのが難しい実情を指摘。「もっといいソリューションを、より安く使えるように」というTDBC設立の理念を紹介し、事業者会員(運輸事業社)とサポート会員(ICT企業等)が理解と協力をし合い、互いにメリットを持ちながら、日本経済を支える運輸業界全体がよくなる場としてのTDBCの役割を語った。
この総会を機に、TDBCは事業者会員に加え、オブザーバー会員への運輸事業者の参加を広く呼びかけ、会の運営を本格化させる。来賓挨拶に登壇した国土交通省自動車局自動車情報課の長崎敏志課長は、自動車が技術的な転換点を迎える一方、運輸事業の安全に関心が高まる中、TDBCが知恵とサービスを結びつける場となることに期待を寄せ、行政との情報共有・連携の大切さを指摘した。
壇上では、ソフトバンク株式会社によるAIを用いた無人運転バスの実証実験、エコドライブを国連の場などで世界に広めている株式会社アスアの取り組み、ICT活用でイノベーションを実現している株式会社トランコムの事例などが紹介された。ドライバーの高齢化や人材不足、乗務員の健康と働き方改革や健康経営、安全・安心、そしてエコロジー……。運輸業界の抱える課題は、社会全体の課題の縮図とも言える。それらの課題に対し、事業者個々が対応するのではなく、TDBCとして課題を共有し、ICTを最大限に活用して運輸業界全体のイノベーションをもたらす。その強い思いが参加者全員で共有されるフォーラムとなった。
大塚製薬株式会社では、タクシー会社の協力を得て、ドライバーへのアンケートを実施。食事と疲れやすさの実態から、乗務のサポートに必要な栄養補完食品の検討を行っている。「消費者の1つのセグメントとして運輸業務の従事者の方々の実情を知り、どんなサポートができるのかを考えていきたいですね」(担当者)。
オプテックス株式会社は安全運転支援サービス「セーフメーター」による事故の予防を提案。危険運転の記録だけでなく、丁寧な運転やエコドライブの記録を見える化し、それを評価することでドライバーの安全運転のモチベーションを高めるのが特徴だ。「“管理される”のではなく、自ら気づき、続けていく。それが事故予防につながります」(担当者)。
パナソニックソリューションテクノロジー株式会社は「授業員が健康で安心して働ける“健康経営”」を支援するソリューションに取り組んでいる。ダンプレンタルのP&Jの協力により、ドライバーの居眠り事故防止と、より良い睡眠の実証実験を重ねている。「伝導性の繊維のウエアを制服として着用してもらいました。こうした試みもTDBCだからこそ実現しました」(担当者)。
SGシステム株式会社の「点呼・健康管理システム」は、すでに関連会社のバスのドライバーの運転安全マネージメントとして実用されている。免許証でログインし、アルコールチェックの他に体温と血圧も測定し、管理者は客観的なデータに基づいたドライバーと対面点呼ができる。「ドライバーの高齢化という実情を踏まえ、アルコールチェックだけでなく体調面も確認する一歩先の安全への取り組みです」(担当者)。
株式会社ブロードリーフは、1万数千の自動車整備工場のネットワークと30年に及ぶ自動車部品商としてのデータベースを持つ。自動車の故障の事象から部品を特定し、発注、整備工場への誘導までを一気通貫のサービスで提供できる。「TDBCを通じて多くの事業者会員に活用してもらい、業界のノウハウとして役立てていただきたい」(担当者)。
株式会社エムログは自動車の故障診断ソリューションを提供している。その技術を発展させ、故障しそうな車や部品を早期に検知する予知保全システム開発に取り組んでいる。部品の交換時期を予測し時間経過とコスト変動などが分かるようになる。「車毎に点検データを蓄積し、二次流通時の価値を高めることにも役立てることができます」(担当者)。
株式会社フレクトはリアルタイムの車両管理「Cariot」を紹介。シガーソケットなど、自動車に簡単に取り付けられるデバイスで3秒に1回の位置情報をアプリケーションで確認。車両毎に今の運転状況が確認でき、リアルタイムの動態管理を可能にした。「仕組みとしては1台からでも利用可能です。中小企業・小規模事業者様向けIT導入補助金の対象になっています」(担当者)。
株式会社データビークルでは、データ活用の使い勝手をより現場目線で考えた分析ツールを提案している。個々の自動車に関する膨大なログの中から、外部コンサルに依頼しなくてもWeb検索の感覚で誰もが分析を行い、結果を文章で表示する。「思いつきの確認や課題となる要因など、大まかな“アタリ”をつけることが容易にできるようになります」(担当者)。
ウイングアーク1st株式会社では、自動車や運輸業務に関わる膨大な帳票、文書を情報資産として活用するさまざまなソリューションを紹介。たとえば特定の車両やドライバーに関するデータだけを集め、仮想的に編集し、1つのPDFファイルにまとめることができる。「個々の原本に触れることなく、手間もかかりません。効率化に加え、データの新たな切り口も生まれます」(担当者)。
TDBCでは、今後も運輸事業者とICT企業とが協力し合い、業務の現場、運輸業界、さらには社会そのもののイノベーションを起こす課題解決ソリューションを生み出すための取り組みを続けていく。「データのじかん」では、実証実験の詳細など、今後も最新のレポートを紹介する予定だ。
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