カテゴリー
キーワード

認知バイアスとは?正常性バイアスや確証バイアスといった具体的な種類をわかりやすく解説

SNSの普及で情報が氾濫する現代、信頼できる情報を見極めるのは容易ではありません。その障壁となるのが、誰もが持つ認知バイアス。確証バイアス、正常性バイアス、敵対的メディア認知など、日常的に陥りやすい3つの認知バイアスを解説し、その対処法を探ります。

         

SNSのおかげで世界中の誰もが情報発信者になれる世の中。さまざまなプラットフォームにあらゆる情報や意見が溢れています。情報の大海原を上手に航海するには、多角的な視点から信頼性の高い情報を探すのがベストですが、それを妨げるのが誰もが多少は持っている「認知バイアス」と呼ばれるものです。

ここでは、日常生活で陥りがちな認知バイアスを3つをご紹介します。

確証バイアスとは?信じたい情報を選んでしまう傾向のこと

確証バイアスとは?信じたい情報を選んでしまう傾向のこと

人間はもともと持っている先入観の裏付けが欲しくてたまりません。常に自分の正しさを証明したいのです。そのため、無意識に先入観を裏付ける情報を探す傾向があります。この傾向を「確証バイアス」と言います。

例えば占い師に鑑定してもらったとします。占い師は、客の雰囲気を見てそれらしいことを言いながら、客から引き出す情報を頼りに憶測を重ねていきます。客観的に見て発言の当たり外れは半々です。

「当たると評判」という先入観と、「わざわざお店に出向いてお金を払っているから損をしたくない」という気持ちを持っている人なら、当たり発言のみにフォーカスして、「この占い師はすごい」と思い込みます。

逆に友達に連れられて嫌々来店する人は、「当たるわけがない」という先入観を証明するため、外れ発言のみにフォーカスして「やっぱり占いなんてインチキだ」と言うでしょう。

結果は正反対ですが、どちらの人も確証バイアスに基づいて行動しています。

もうひとつの例が、新大陸の発見者とされるクリストファー・コロンブス。キューバに流されながらもヨーロッパに帰還した船員と出会ったコロンブスは、この船員の体験談を聞いて「それはインド大陸に違いない」と思い込みます。このときコロンブスが根拠としたのは、大西洋からアジアまでの距離は既存の説よりもはるかに短いという地理学者の友人の提言でした。

完全に確証バイアスに呑まれたコロンブスは、インドとは逆方向の西廻り航路で航海に乗り出し、その結果インドではなくカリブ海諸島を発見します。しかし本人は死ぬまでアジアの島々を発見したのだと思い込んでいたそう。

こうした確証バイアスに囚われやすい人がパートナーや上司だとかなり苦労します。一度決めたらテコでも動かず、話し合いができないからです。あなたにも思い当たる人はいませんか?

正常性バイアスとは?危険を直視させない傾向のこと

非常事態が起きたとき、人間の脳はストレスから来る不快感を和らげるために危険性を否定する理由探しをします。これが「正常性バイアス」です。

非常に痛ましい事例が、東日本大震災の津波被害に遭い、全校生徒108人の7割が犠牲になった石巻・大川小学校です。校舎のすぐ裏手に小高い山があったにも関わらず、津波警報が出ても生徒は校庭で待機させられたままでした。その結果、大多数が校庭まで押し寄せてきた津波に流されて亡くなりました。地震があった直後に、心配で迎えに来た家族と下校した子供たちは助かったそうです。

このとき避難が遅れたのは、当時のハザードマップでは大川小学校が浸水予想地域に入っていなかったためと言われています。また、住民の間でも大川小学校は有事の避難場所として認識されていたことが挙げられています。

校舎の窓ガラスが粉々になるほどの大揺れを体験していながら、「でもハザードマップによれば津波は来ないし…」という正常性バイアスの囁きに負けたことで起こった悲劇でした。

敵対的メディア認知とは?自分はいつでも少数派だと思いたがる傾向のこと

メディアは嘘つきだ、本当のことを言わない。メディアはいつも私とは違う立場に立った報道をしている。こう感じるようであれば、あなたの認知には「敵対的メディア認知」というバイアスがかかっているかもしれません。

敵対的メディア認知を扱った興味深い実験があります。この実験では、被験者を親イスラエルグループと親アラブグループに分け、1982年にイスラエル人団体によってパレスチナ難民が虐殺された事件のニュースを見せました。すると同一のニュースを見たにも関わらず、双方が「相手側にとって都合のいい内容だ」と主張したのです。

さらには、普段からニュースを頻繁にチェックし、事件の詳細を知っている人の方が、敵対的メディア認知のバイアスが強いことが分かりました。こういう人たちは「私は他の人が知らないことを知っている」と思いたがる傾向があるためでしょうか。

認知バイアスは当然そこにあるもの

とはいえ、認知バイアスを完全に消し去ることは不可能です。それは「個人の意見」と表裏一体なので、認知バイアスを恐れるあまりすべての意見に配慮していたらただの八方美人な人になってしまうからです。

ただし、「認知バイアスは誰にでもあるもの」と意識して、なるべく良質な一次情報を参照することで、ネガティブな影響を最小限に抑えることができるかもしれません。そういう意味でも自分がみている情報がデータに基づくものであるか否か、そのデータの収集方法、分析方法が妥当なものであるか、という部分にはぜひデータのじかんの読者の方々には冷静に見極めていただきたい、と願う今日この頃です。

以上を踏まえて、どうぞ快適なニュースサーフィンを!

参考リンク:
・ 自分が選んだものしか見えない!3つの認知バイアスの恐ろしさ大川小学校を襲った津波の悲劇・石巻 

佐藤ちひろ

 

メルマガ登録をしていただくと、記事やイベントなどの最新情報をお届けいたします。


データ活用 Data utilization テクノロジー technology 社会 society ビジネス business ライフ life 特集 Special feature

関連記事Related article

書評記事Book-review

データのじかん公式InstagramInstagram

データのじかん公式Instagram

30秒で理解!インフォグラフィックや動画で解説!フォローして『1日1記事』インプットしよう!

おすすめ記事Recommended articles

掲載特集

デジタル・DX・データにまつわる4コマ劇場『タイムくん』 データのじかんをもっと詳しく データのじかんフィーチャーズ 「47都道府県47色のDXの在り方」を訪ねる『Local DX Lab』 DXの1次情報をを世界から 『World DX Journal』 データで越境するあなたへおすすめの 『ブックレビュー』 BIツールユーザーによる、BIツールユーザーのための、BIツールのトリセツ CIOの履歴書 by 一般社団法人CIOシェアリング協議会 なぜ、日本企業のIT化が進まないのか――日本のSI構造から考える 日本ビジネスの血流である帳票のトレンドを徹底解説 データを武器にした課題解決家「柏木吉基」のあなたの組織がデータを活かせていないワケ BI(ビジネスインテリジェンス)のトリセツ 入社1年目に知っておきたい 差が付くKPIマネジメント CIOLounge矢島氏が紐解く トップランナーたちのDXの“ホンネ” データのじかん Resources 越境者のためのお役立ち資料集 AI実装の現在地点-トップITベンダーの捉え方 データでビジネス、ライフを変える、 面白くするDATA LOVERS データマネジメント・ラジオ by データ横丁 データのじかんNews データ・情報は生もの! 『DX Namamono information』 ちょびっとラビット耳よりラピッドニュース AI事務員宮西さん(データ組織立ち上げ編) 藤谷先生と一緒に学ぶ、DXリーダーのための危機管理入門 生情報取材班AI時代に逆行?ヒトが体感した「生情報」のみをお届け! データはともだち 〜怖くないよ!by UpdataTV Original データ飯店〜データに携わるモノたちの2.5thプレイス by UpdataTV〜 インサイトーク〜データで世界を覗いてみたら〜by WingArc1st + IDEATECH
モバイルバージョンを終了