About us データのじかんとは?
あなたは文系ですか? 理系ですか?
人事、総務、企画、営業などの職種で、自身が文系だという自覚のある方は「今の時代、AIについて勉強しなければ……」と焦りを覚えたことがあるのではないでしょうか。
そんな焦りや不安の解消に役立つテキストが『文系AI人材になる―統計・プログラム知識は不要』(東洋経済新報社、2019)。著者はZOZOの元CAIO(Chief AI Officer)で、現在は株式会社ELYZAで大規模言語AIの普及促進などに取り組む、文系AI人材の野口竜司氏です。
本記事では同書の内容を紹介し、“文系AI人材”というキャリア像について解説します!
文系AI人材とはそもそもどんな人材なのでしょうか?
野口氏は、データサイエンティストやAIエンジニアなど主に、AIを「つくる」人を理系AI人材、それ以外の主にAIを「使う」人のことを文系AI人材として定義します。
統計やプログラミングを勉強し、AIをつくる側にならなければならないとプレッシャーを感じている方も少なくないのではないでしょうか。しかし、野口氏はノーコードツールやAIサービスが普及し始めAIを用意することが以前ほど難しくなくなってきた現代において、AIを使う人材となること、そのような人材を育てることがより重要であると考えているようです。
『文系AI人材になる―統計・プログラム知識は不要』(以下、『文系AI人材になる』)の第1章・第2章は、「文系AI人材とは何なのか」について解説するために用意された章です。
例えば、第2章で取り上げられるのが「5つのAIとの共働きスタイル」。一型、T型、O型、逆T型、I型の5つにAIとともに働く人材を分類し、それぞれの役割についてまとめられています。T型、I型……といった文字列を見ると、筆者などはキャリア形成におけるスキルセットによって人材を分類する手法(詳しくはコチラ)を思い浮かべますが、この分類はそれとは全く異なります。
第2章のタイトルは「文系のためのAIキャリア」。より具体的に、文系AI人材とは何なのか、仕事内容は何かについて解説されるのがこの章です。
とりあえずここまで読み進めるだけで、冒頭で触れたようなAI時代への焦り・懸念は払拭されるでしょう。
全7章で構成されている『文系AI人材になる』。第3章以降の内容についても押さえておきましょう。
第3章、第4章は「文系AI人材とは何か」についての理解があることを前提に、「AIについて文系AI人材が最低限知っておくべきこと」が解説される章です。第3章ではAIは4つの機能と2つの役割で分類され、それぞれをかけ合わせる形で“どう使うのか”──活用例が示されます。
第4章のタイトルは「AIのつくり方をザックリ理解する」。「え、やっぱりつくり方を知らなければならないんじゃん!」と思った方、ご安心ください。ここで目指すべきは、“AIがつくれる人材になる”事ではありません。AIがつくれる人材とビジネスサイドの架け橋となり、目的に合致した企画を立てるために最低限必要な知識を身につけられればよいのです。第3章の分類を用いつつ、GUIツールの使い方やデータの取り扱いについてもレクチャーされるのがこの章です。
第5章からはいよいよAI施策の企画です。文系AI人材はこのフェーズで中心的な役割を発揮することで、ある意味AIをつくる人材以上の価値を企業にもたらすことができるはず。第5章では5W1Hマップに沿って基本的な企画の立て方が取り上げられます。そして、第6章で紹介されるのが、45種類の具体的な企業のAI企画の事例。流通・小売、ファッション、運裕・物流、金融・保険など、14の業種分類別にまとめられており、それぞれに出所のリンクも添えられています。
最終章である第7章は、視野をより広いスコープへ移し、AIと文系AI人材が消費者、会社、働き手、ひいては社会全体にどのような影響を及ぼすかが語られます。
そう、私たち文系AI人材がAIによる社会変化を引っ張っていくのです。
引用元:野口 竜司 (著) 『文系AI人材になる―統計・プログラム知識は不要 Kindle版』東洋経済新報社、2019、365ページ
AIを雇用や自身のポジションにおける「脅威」ではなく、企業や自身の働き方、社会を変えるための「武器」とするために、書籍で得た知識を利用していきましょう。
ここまで便宜的に「文系」という言葉を利用してきましたが、そもそも「文系/理系」という区分けがガラパゴスで時代遅れなものという指摘も最近は見られます。
名古屋大学大学院経済学研究科教授で『文系と理系はなぜ分かれたのか』(星海社)著者の隠岐さや香氏は朝日新聞EduAの記事にて、学問を自然科学と人文・社会科学に分類する発想は英語圏やドイツ圏、フランス圏など海外にもあると紹介したうえで、日本には大学入試の段階で形成された「自分は文系だ」「自分は理系だ」というアイデンティティが文理の分断を招きやすいという独自の傾向があることを指摘しています。
『文系AI人材になる』では便宜的に「AIをつくる人=理系」「AIを使う人=文系」と分類されていますが、実際のところ理系人材がAIの企画を立てたり、文系人材がAIをつくったりする場面もあるでしょう。後者についてはハードルが高く感じられるかもしれませんが、書籍でもコードベース・GUIベースのAI構築環境や構築済みAIサービスといった選択肢の登場により、AIをつくることは以前よりも格段に楽になっていることが紹介されています。
『文系AI人材になる』の内容は文系を自認する人材が勇気づけられる内容ですが、「自分は文系だ」という意識の枠組みにとらわれず、むしろ自身の可能性を広げていくために用いたいですね。また可能性を広げるという意味で、理系AI人材の方にとっても有用性の高い書籍といえます。
野口氏が現在所属する東京大学松尾研発AI企業ELYZAの文書執筆AI「ELYZA Pencil」のデモモデルに「文系」「AI」「データ」「機械学習」「人材」の5つのキーワードを指定して、架空のニュース記事を作成させてみました。
こうしたサービスをいかに開発し広めるのか、活用するのか、どのような可能性が広がっているのか──すべて文系AI人材の考える領域です。
AIを当たり前のツールとして捉え、肩ひじ張らずに使いはじめていきましょう!
【参考資料】
・野口 竜司 (著) 『文系AI人材になる―統計・プログラム知識は不要 Kindle版』東洋経済新報社、2019
・元ZOZO NEXT 取締役CAIO 野口竜司氏、東大松尾研発 ELYZAの取締役CMOに就任~技術顧問 松尾豊氏と共に、同社の成長を牽引へ~┃PRTIMES
・中村正史『「文理分けは日本だけ」は本当か? 隠岐さや香・名古屋大教授に聞く』┃朝日新聞EduA
・”ELYZA Pencil”、公開11日間で11万人が利用。キーワードから約6秒で生成できる文章執筆AI┃PRTIMES
・ELYZA Pencil
・ZOZOを日本一、AIを活用している会社にする【野口竜司・田端信太郎 対談】┃アジェンダノート
(宮田文机)
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