生きていく上で欠かすことができないお金の問題。
一方で平均収入ってジェンダーや、雇用形態、職種などでどう違うのか、というのは、なかなかわからないものです。
そこで今回は、 厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」から、気になる「収入」のデータを集めてみました!
「令和元年賃金構造基本統計調査」によると平均的な年収は全体で計307.7千円(年齢43.1歳、勤続12.4年)、男性の場合は、338.0千円(年齢43.8歳、勤続13.8年)、女性の場合は251.0千円(年齢41.8歳、勤続9.8年)となったということです。
前年比で見てみると全体では0.5%増加、男性では0.1%増加、女性では1.4%増加となっており、男女計及び女性の賃金は過去最高になったということです。
20代から60代までのおよそ40年間、企業に勤務することを想定し、平均年収から生涯収入を推計すると、男性の場合は1億3000万円程度、女性の場合は1億円程度になります。
男性の賃金を100とした場合のジェンダー間での賃金格差は74.3と前年比では1ポイント縮小し、統計を取り始めて以降は過去最少となっています。
一方で、日本の賃金のジェンダー格差は主要国の中でも非常に大きくなっています。ジェンダー別の年収を年齢別にくわしく見ていきましょう。全体と男女別に平均年収の年代別推移をグラフ化したのが以下になります。
10代後半から20代前半にかけては平均年収のジェンダー間の差はそれほど大きくありません。一方で年代が30代前半に入ると一気に差が大きく広がっていくのが分かります。
男性の賃金を100とした場合、年代別のジェンダー間の年収比率をグラフ化したものが以下になります。
10代後半から20代にかけては賃金格差はそれほど大きくなく90以上となっていますが、30代に入ると格差はグッと大きくなり20代後半から30代前半にかけ、そして、30代前半から30代後半にかけて、7ポイント以上格差が開いています。その後、50代後半で最も格差が開いた状態になり、多くの人が定年を迎える60代以上は、格差が縮小される傾向にあります。
こうした背景には50代前後で、企業の中でも要職につく人の割合が多くなる、ということが挙げられます。実際日本のジェンダーギャップ指数などを見ていても経済や政治の分野で要職を担う人の割合にジェンダー間で大きな格差があるということが挙げられています。
一方で60代以降でジェンダー格差がなくなるのは、定年によって役職から外れたり、定年後の再雇用などで1から新たな現場で働くという人が増えるからという背景があると考えられます。
年収を考える上で、外すことができない要素が学歴です。
ここでは学歴別に平均年収などを見ていきます。まず全体的な平均年収を取ってみると、他の属性と比較して大学卒大学院卒の平均年収が圧倒的に多いことがわかります。高校卒、中学卒と比較するとその差は100万円以上になっています。
年代別に見ていくと、特に大きく差が開くのは30代後半以降になります。
特に50代においては「大学・大学院卒」の平均年収が500万円を超えているのに対しそれ以外の属性では400万円以下と大きな差が開いています。
日本においては雇用形態によって給与状況も大きく変わってきます。実際、正規雇用の場合の平均年収が325.4万円であるのに対し非正規雇用の場合の平均年収は211.2万円とその差は100万円以上に及び、単純計算で生涯年収を換算すると正規雇用後の場合1億3000万円となりますが非正規雇用の場合を8,400万円と4,000万円以上の差があります。
そこで正規雇用と非正規雇用での賃金の推移をグラフ化してみました。
こちらも年齢を追うごとに格差がどんどん広がって行くというのはジェンダー格差と同じ傾向です。さらに正規雇用の場合に年収がぐっと伸びる40代から50代にかけての期間において非正規雇用の場合はむしろ年収は減少方向に推移しています。
企業規模別に雇用形態による賃金格差を見ていくと、企業規模が大きくなる事に格差は大きくなっており、特に、大企業において50代前後での正規雇用と非正規雇用の賃金格差は平均で50ポイント以上になっています。
一方で10代から20代にかけての格差はそれほど大きくなく、また60代以降になると格差が若干解消されていくという傾向は分かります。
今回は、様々な属性別に年収のグラフ化や想定される生涯収入などの推計を行ってきました。
こうして見てみると、ジェンダーや学歴、雇用形態などの属性によって、年収や生涯賃金は大きく異なるのだということがわかりました。
特に10代や20代など若手のうちは、年収に大きな差はありませんが、年齢を追うごとにその差はどんどんと大きくなって行くということが見て取れます。中高年の人々は、若い世代にはなかなか見えない格差を抱えているのではないでしょうか?
一方で、このような格差は単なる労働の生産性だけではなく属性によって規定されている部分も大きいのではないかと考えられます。
人々が属性に関わらず仕事に見合った収入を得るためには、個人の努力も必要かもしれませんがそれ以上に社会全体で、属性ごとにある格差についてより深く考え、その差を埋めるためには何が必要なのかを考えていく必要があるのではないでしょうか?
【参考引用サイト】 ・ 令和元年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省 ・ フルタイム就業者の収入性差の国際比較
(大藤ヨシヲ)
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