2001年から開催され一度は休止していた時期はあるものの2015年から再び復活した漫才の祭典M1グランプリ。令和最初の大会となった2019年大会は、新時代の幕開けを裏付けるかのように新たな笑いで包み込まれました。
あらゆる意味で「新しい」結果を残した今大会、データで見るとどのような特徴が見えるのでしょうか?
M1、2019年大会は開催直前から大きな話題を集めていました。その理由のひとつが決勝初参加となるコンビが10組中7組を占めていたということです。筆者も、大会前に決勝進出コンビ10組が発表された時、出場コンビのほとんどの名前を聞いたことがなく、つい新たな時代の到来を感じてしまいワクワクしたものです。
さらに、例年優勝候補として名前が挙がり、 M1の最終決戦にも何度も残ったことがある人気コンビ「和牛」が準決勝で敗退するという、予想外の展開もあり、波乱の幕開けを見せた2019年大会。
その後、敗者復活戦に残された1枠に「和牛」が滑り込んだことで、結果は以下のようになりました。
ニューヨーク |
かまいたち |
和牛 |
すゑひろがりず |
からし蓮根 |
見取り図 |
ミルクボーイ |
オズワルド |
インディアンス |
ぺこぱ |
平均 |
|
上沼 恵美子 |
87 |
93 |
92 |
92 |
93 |
94 |
97 |
91 |
92 |
93 |
92.4 |
松本人志 |
91 |
95 |
96 |
91 |
90 |
92 |
99 |
89 |
89 |
94 |
92.6 |
サンド 富澤 |
90 |
95 |
96 |
92 |
89 |
94 |
97 |
89 |
87 |
91 |
92 |
立川 志らく |
88 |
93 |
91 |
90 |
90 |
91 |
97 |
91 |
90 |
94 |
91.5 |
ナイツ塙 |
88 |
94 |
93 |
91 |
93 |
93 |
96 |
94 |
92 |
92 |
92.6 |
中川家 礼二 |
82 |
95 |
92 |
89 |
90 |
91 |
97 |
90 |
88 |
94 |
90.8 |
オール 巨人 |
90 |
95 |
92 |
92 |
94 |
94 |
98 |
94 |
94 |
96 |
93.9 |
合計 |
616 |
660 |
652 |
637 |
639 |
649 |
681 |
638 |
632 |
654 |
645.8 |
出典:M1 2019年大会(コンビの並び順は、漫才を発表した順番に従う)
この結果を受けて最終決戦に臨んだのは、「かまいたち」、「ぺこぱ」、「ミルクボーイ」の3組。
過去にコントの賞レースであるキングオブコントでも優勝経験もあり、実力も人気も高い「かまいたち」の最終決戦進出は概ね予想通りと言えます。しかし、他2組は初出場でありさらに知名度も低いコンビでした。
「ぺこぱ」は2005年大会の「オードリー」以来となる吉本興業以外の事務所に所属するコンビで、ツッコむかと思いきや、ボケを全て受け入れてしまう「ノリツッコまない」という新しいツッコミスタイルで、大きな笑いを生み出していました。
そして、今大会でお茶の間に一番の衝撃を与えたのが 「ミルクボーイ」です。結成12年目ながらほぼ無名だった彼らですが、この数年はM1をめざしお笑いに磨きをかけるべく、劇場で日夜漫才に励んでいました。
大会当日、その努力が見事に花開いた絶妙な間合いの漫才を披露し、M1史上最高得点を叩き出し最終決戦へと進出しました。
ちなみに、M1の審査員の数はその年々で変わるため、「ミルクボーイ」が出した過去最高得点、というのは合計得点が過去最高なのではなく、合計得点を審査員数で割った平均得点が過去最高だった、ということだと考えられます。
過去大会で見てみると「ミルクボーイ」に次いで、2004年大会の「アンタッチャブル」が2位、ということで、実に15年ぶりの新記録の樹立となりました。
順位 |
コンビ名 |
平均得点 |
1 |
ミルクボーイ(2019) |
97.28571429 |
2 |
アンタッチャブル(2004) |
96.14285714 |
3 |
パンクブーブー(2010) |
95.42857143 |
3 |
笑い飯(2010) |
95.42857143 |
3 |
笑い飯(2009) |
95.42857143 |
出典:M1 2019年大会、M-1グランプリ 公式サイト
そして、最終決戦を終えても、勢いは衰えぬまま、優勝を勝ち取りました。
では、今大会や特徴をデータで見てみるとどのようになるのか、これまでに行われた大会のデータと合わせて見ていきましょう。
2001年から過去15回にのぼる大会の最高点、最低点、平均点をグラフに出すと以下のようになりました。
グラフで見ると最低点が年々高くなって言ってることがよく分かると思います。また平均点も大会を追うごとに高くなっており、特に2019年大会は、前の大会である2018年大会と比較して2点以上平均点が上がっています。
そこで、各大会における得点の接近度を見ていきます。
ここでの接近度は、分散(得点のばらつき具合)の逆数をとることで求めます。
すると、年を重ねるごとに、接近度が増す傾向にあるとわかります。つまり、年々M1はより接戦になってきているといえます。
M1において年を増すごとに変化している要素、を考えた時に、その一つとして挙げられるのが応募組数です。応募組数は毎年増加しており、今年度も過去最多となる5040組が応募したということで話題になりました。
そこで、接近度を各大会の倍率と比較してみます。すると2019年大会は過去の大会と比較して、倍率も接近度も非常に高い大会であることがわかります。
続いてのグラフは、各年の全得点から得た箱ひげ図です。青い真中の箱はその年の得点の真中約50%が分布する領域です。そして箱より上の細い線に上位約25パーセント、下の細い線には下位に約25%が分布しています。
こうして見ると、2019年度は過去退会と比較しても箱の位置が高く、過去大会と比較しても、非常にレベルの高いところで行われた戦いであったことがより伝わると思います。
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