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日本国内でもAIやデータ分析の活用が本格的に進んできました。導入に向けて調査や製品の検討を進めている方も多いかと思います。
本記事では日本企業のAI導入状況を概観し、そのうえで気を付けたいポイントをピックアップします。2022年、AI導入にあたって必要な知識を概観するためにご活用ください!
まずは、2021年時点の日本国内のAI導入状況をデータで見てみましょう。
矢野経済研究所が2018年7~10月に実施したアンケート調査によると、国内の民間企業515社のAI導入率は2.9%。多くの企業が「関心はあるもののまだ特に予定はない」という段階にありました。
※…引用元:国内民間企業515社のAI導入率は2.9%、業種別では流通業が最も低く0.8%に留まる~深刻化する労働力不足の解決のために、AI活用による省力化、業務自動化が期待される~┃矢野経済研究所
しかし、2020年12月にアデコ株式会社が上場企業を対象に行った調査では、全体の25.6%が「AIを職場に導入済み」、27.0%が「3年以内に導入する計画がある」との回答が得られたのです。
※…引用元:AIの導入は日本企業でどの程度進んでいるのか。その実態と推進のための課題とは?┃HRpro
対象となる企業のレイヤーは全体と上場企業で異なりますが、総務省が2017年に実施した「通信利用動向調査」で“IoT導入は大企業、AI導入は中小企業”で進んでいる”という傾向が見られたことを鑑みると、全体の導入率はより高まるのではないかとも推察されます。もちろん、AI導入をどのレベルで捉えるかによっても回答の内容は変わってきますが、この数年でぐっとAIが一般化したことは間違いないでしょう。
また、PwC Japanグループが2021年3月に実施した調査では、COVID-19により「AIの活用が加速した」と回答した日本企業は32%、一方「AI活用が遅延した」と回答したのは27%で、新型コロナの影響によりAI活用への取り組み状況は2極化しているようです。
野村総合研究所(NRI)システムコンサルティング事業本部のデータサイエンティスト廣田壮一郎氏はAI・アナリティクス技術の導入前に整理しておいた方が良い項目の例として以下の5つを掲げています。
【1】データの質と量の確保
【2】推進チームの体制確保
【3】目的とゴールの明確化
【4】モデルの考え方
【5】ユーザーサイドの巻き込み
分析の基盤となるのがデータです。ここで考えたいのが、データレイク、データウェアハウス、データマートなど、データを蓄積し整理する基盤をどのように構築するのかということ。データを収集してからダッシュボードで可視化するまで、どのような仕組みで運用するのかを図示するなどして整理しましょう。
次に目を向けるべきなのがチーム作りと取り組むべき課題です。廣田氏はここで「データエンジニア力」「データサイエンス力」「ビジネス力」の3つのスキルが推進チームに必要になると説いています。
それぞれの概要は、以下の通り。
データエンジニア力:実際にデータ分析やモデル構築を行う力
データサイエンス力:データ分析の専門家として手法の決定や分析、結果の検証をリードする力
ビジネス力:現場の課題を洗い出し、結果を業務に組み込む力
ここで強調したいのが「ビジネストランスレーター」の重要性。“一般社員とデータサイエンティストの橋渡し役”として、両者の意見を翻訳(トランスレート)し、プロジェクトを成功に導きます。新技術導入のゴールは自社の利益につなげることです。そしてそれは、現場の協力が得られなければ決してかないません。
そして、社内の連携が取れていれば「このような傾向があるのか知りたい」など、現場から前向きな意見が得られるはず。それはプロジェクトの成功のカギである適切な目的・ゴールの設定に直結します。そのようにしてプロジェクトの基盤を固めることでようやくモデルをどのように構築するのかについての議論が可能になるのです。
また、サプライヤーであればユーザーサイドの巻き込みは不可欠でしょう。前述の通りプロジェクトの成功には当事者の声が不可欠だからです。
先述のPwC Japanグループが実施した調査において、AI導入における最大の課題として挙げられたのが「AIの導入をリードできる人財がいない(33%)」。そのあとには「AIを扱える人財がいない(30.9%)」がつづきました。
そもそもの人材不足が企業にとって大きな課題となっていることが分かります。
一口にAI人材といっても、大学で本格的に研究開発に取り組んでいるような人材から、文系から独学でデータアナリストやビジネストランスレーターとなった人材までグラデーションがあります。
そのため、AI人材獲得に悩む企業に必要なのはまず自社にはどのような人材が何人程度必要なのかを定義することでしょう。
例えばIPA(情報処理推進機構)は「IT人材白書2019」でAI人材を以下のように定義、分類しています。
AI研究者 | <エキスパートレベル>AIを実現する数理モデル(以下、「AIモデル」という。)についての研究を行う人材。 AIに関連する分野で学位(博士号等)を有するなど、学術的な素養を備えたうえで研究に従事する、AIに関する学術論文を執筆・発表した実績があるか、少なくとも自身の研究領域に関する学術論文に日ごろから目を通しているような人材を想定。 |
AI開発者 | <エキスパートレベル>AIモデルやその背景となる技術的な概念を理解したうえで、そのモデルをソフトウェアやシステムとして実装できる人材(博士号取得者等を含む、学術論文を理解できるレベルの人材を想定)。 <ミドルレベル>既存のAIライブラリ等を活用して、AI機能を搭載したソフトウェアやシステムを開発できる人材。 |
AI事業企画 | <エキスパートレベル>AIモデルやその背景となる技術的な概念を理解したうえで、AIを活用した製品・サービスを企画し、市場に売り出すことができる人材(博士号取得者等を含む、学術論文を理解できるレベルの人材を想定)。 <ミドルレベル>AIの特徴や課題等を理解したうえで、AIを活用した製品・サービスを企画し、市場に売り出すことができる人材。 |
引用元:「IT人材白書2019」概要┃IPA
また、AI人材を全体の設計や意思決定に携わる「建築家」、データを生む「材料屋」、AI研究者やデータサイエンティストが該当する「道具屋」、AIの保守・運用に携わる「管理人」に分類する考え方もあります(詳しくはコチラ)。
AIやデータ分析の導入にあたって知っておきたいデータや知見をご紹介しました。
2019年にマイクロソフトとIDC Asia/Pasificが共同で実施した調査の数値を見る限り、AIに向ける期待値において、日本とアジア15カ国(オーストラリア、中国、香港、インドネシア、インド、日本、韓国、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、スリランカ、台湾、タイ、ベトナム)の平均はほぼ同等です。
それらの国々でも日本と同じかそれ以上に急速にAI導入が進んでいるはず。その流れに取り残されないために、いずれ変化に踏み出すことは避けられないでしょう。
【参考資料】 ・廣田壮一郎『データ活用における阻害要因と成功の鍵─なぜ、AI・アナリティクス』NRI ITソリューションフロンティア 2018年4月号 ・国内民間企業515社のAI導入率は2.9%、業種別では流通業が最も低く0.8%に留まる~深刻化する労働力不足の解決のために、AI活用による省力化、業務自動化が期待される~┃矢野経済研究所 ・AIの導入は日本企業でどの程度進んでいるのか。その実態と推進のための課題とは?┃HRpro ・田原 健吾「日本企業のAI・IoTの導入状況(第5回AI経済検討会)」┃総務省 ・コロナ禍でも企業のAI導入は止まらず ビジネス活用を成功させる4つのポイントは――PwC┃Didital Business + Design by ITmediaエンタープライズ ・AI によるイノベーションと生産性向上が 2021 年までに 2 倍以上に加速┃Microsoft
(宮田文机)
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