まいどどうも、みなさん、こんにちは。
わたくし世界が誇るハイスペックウサギであり、かのメソポ田宮商事の日本支社長、ウサギ社長であります。またもや水曜日がやってきたということで呼ばれて飛び出てジャジャジャーンって言っても知らない世代の人が多いのかも知れませんが、毎度お騒がせしております、わたくしハクション大魔王ではなくウサギ社長であります。クシャミではなく水曜日一つにつき一度飛び出します(笑)。
さて、日本列島は田植えの季節ですが、米の値段の高騰が話題ですね。JA全農山形が打ち出した新聞全面広告でご飯一杯の値段が以前の39円から49円に値上がりしていた、というのもなかなかの話題沸騰案件でしたが、やはり主食の値段があがるというのは経済的なインパクトが強大です。先日、わたくしはテレビのロケの手伝いで田植えの見学をさせてもらったのですが、手間がかかる上にリスクもある、しかし主食は生産しなくてはならない、しかも値段が上がると急に叩かれる、と農家の方は嘆いていらっしゃいました。
もちろん、高騰しているのはお米だけではなくありとあらゆるものが値上がりしていて、むしろ値上がりしていないものをリストアップした方がいいのではないかと思うほどではありますが、長年価格の優等生と言われ続けていながら昨今の値上げの波に飲み込まれているのがTAMAGOです。発音は「タメぃゴー」。ケイランと呼ばれることもあり、なんだか偉いお坊さんのようにも聞こえますが、つまるところは鶏の卵です。ウサギもたしかに一羽二羽と数えますが、わたくしどもは羽もなければ卵も産みませんのであしからず。
こうしてグラフで見ればわかりやすいですが、2020年には1キロあたり200円を切っていた価格が現在は300円を超えており、なんとなく右肩上がりに推移しそうな波形のようにも見えてしまいます。この庶民の味方であるはずのタメぃゴーですが、実は今回のお話は卵を食べる話ではなく、卵の価格についてのお話でもありません。今回取り上げたいのは実は卵の殻の強度についてのお話であります。
2025年5月8日に英科学誌「コミュニケーションズ・フィジックス」で発表された卵の殻とその強度に関する記事が全世界のタメぃゴーウォッチャーの間で非常に話題となっています。鶏が先が卵が先か、という議論と同じくらいにタメぃゴーウォッチャーの間で議論になるのが、卵の殻は横から落ちた場合と縦から落ちた場合とどちらの方が強度が高いのか、というお話であります。タメぃゴーファンの方であれば少なくとも10回くらいはこの話題で仲間と一晩中語り明かしたことがあるかと思いますが、これに関する新たな研究結果が発表されました。しかも泣く子も黙るし、黙る子は泣くであろうMIT、つまり理数系の教育機関としては最強レベルの戦闘能力を有するマサチューセッツ工科大学での研究となれば、無視して通りすぎるわけにはいきません。卵の数だけ人の意見というものはあるものですが、卵の数だけ割れ方があります。卵は垂直方向(長軸方向)に落とした方が破損しにくい、というのが定説でしたが、この度公開された記事によると、それはあくまでも噂だったということがわかったそうなのです。いやん、衝撃。
タメぃゴーの真実を解き明かすために全世界からMITに集められた天才集団は、献身的なタメぃゴーウォッチャーたちが固唾を飲んで見守る中ではたぶんありませんが、米国コストコのAAグレード鶏卵200個以上を使い実験と数値シミュレーションを行いました。世紀の大発見をする時にさえも少しでもお得にまとめ買いをするためにコストコをチョイスする、というところがさすが選ばれし天才たちですね。
さて、その実験方法ですが、天才たちは60個の卵を使って静的圧縮試験を行い、180個の卵を使って動的落下試験を行いました。合わせて240個の卵を使ったことがここから見て取れます。この数で買うならそれはコストコ一択でしょう。
静的圧縮試験では万能試験機で垂直/水平方向に卵を圧縮していき、破損時の荷重・変位・エネルギー吸収量を計測するという方法を用いました。
その結果、
垂直方向:平均破壊荷重46.0±6.61N
水平方向:平均破壊荷重45.2±5.52N
と、統計的に有意差なし、となり、縦対横の因縁の対決は引き分けとなります。
しかし、やはりタメぃゴーウォッチャーのメインの関心はもちろん動的落下試験の方にあります。静的圧縮試験なんてのは所詮前座に過ぎません。ここからが本番です。使われた個数も180個と、3倍の数の卵を動的落下試験に使っていることからも天才たちの本気度が見て取れます。この実験では、8mm-10mmの高さから卵を落とし、縦方向に落とした場合と横方向に落とした場合とで卵が破損する確率が異なるかどうかを検証します。そして、その結果、水平方向の破損率が垂直方向より平均30%低いということが判明したのです。なんと横向きの圧勝です。しかも縦向きだと半分以上がパキッと割れたのに対し、横向きの場合は1割以下しか割れませんでした。なんということでしょう。これまで「卵は縦に強い」と信じてきたMITの先生たちも、実験データを見て「うそーん!」と大混乱。研究室が一時ザワついたそうです。MITの天才たちがこんなに気持ちを込めてうそーん、と言ったのは、お湯は水より早く凍ることが明らかになった1963年のムペンバ効果以来なのではないかと大学とは全く関係ない人がXか何かで言っていましたが、この関係ない人の発言は嘘かも知れません。
さて、肝心の「なぜ横向きが強いのか?」というところですが、実は、卵の「赤道」部分は意外と柔軟らしく、横向きだと殻全体がショックを吸収する構造になっているのだそうです。つまり柔らかいは柔らかいけど割れにくいのだそうです。何かの広告に使われそうな文章ですね。んでは、これまで「卵は縦に強い」、と信じられていたことが間違いだったのかというと、実はこれもそうではなく、縦向きの方が「硬い」のは事実なのだそうです。しかし、天才たちをもってしても予測できなかった人生の真実がここにあるわけです。つまり、「硬い」と「割れにくい」は別の問題だった、ということです。いやー、衝撃的ですねー。縦にも横にも縦横無尽に衝撃が走ります。研究の言葉を借りるのであれば、衝突エネルギー吸収には剛性よりも靭性が重要、とのことで、靭性というのは「じんせい」と読むのですが、素材や構造物が外力に抗って破壊されにくい、つまりねばり強さを表す性質のことを指します。つまり、天才たちをもってしても予測できなかった人生の真実とは靱性の真実でもあったわけなんですねー。いやー、おあとがよろしいようで(笑)。
ま、タメぃゴーという鳥類が産んだ一つの神秘を掘り下げることであらゆることに応用が効くような素晴らしいサイエンスが生まれてくる、とも限りませんが、いろんな常識を疑ってみると新しい発見がある、かも知れない、ということと、卵のまとめ買いはコストコがお得、ということ、そして、硬いと割れにくいは同じではない、という人生および靱性における真実をこの研究結果はわたくしたちに教えてくれているわけです。ありがたいですね。ラビットニュースでは今後もタメぃゴーについての発見を追いかけていこうと思っております。それにしてもタメぃゴー一つとってみてもじんせい色々ですね。
それではまた来週水曜日が来ることがあればお会いしましょう。ちょびっとラビットのまとめ読みはこちらからどうぞ!それでは、アデュー、エブリワン!
(ウサギ社長)
・Challenging common notions on how eggs break and the role of strength versus toughness | nature.com
・卵が割れやすい向きの落とし方、通説覆る 240個使った実験で判明 | 朝日新聞
・「卵を落とした」場合、どの方向から落としたら割れにくいのか。米国MITなどの研究 | Yahoo!ニュース
・卵は横向きで落ちるとむしろ割れにくくなると判明:MIT最新研究が常識を覆す | ナゾロジー
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