About us データのじかんとは?
非効率性と属人性を指摘される営業業務においても、社内に眠っている顧客データを活かして、ターゲットに的確にアプローチするための取組みが進む。
2017年9月の株式会社WEIC主催による「Sales Tech Conference 2017」から、
“新しい営業のカタチ”シミュレーションへの取組みをレポートする。
全世界15万社にCRMソリューションを提供する株式会社セールスフォース・ドットコムでは、自社ソリューションに搭載するAIプラットフォーム「Einstein」を活用して、独自の営業スタイルを構築している。
自社の営業機能を顧客へのアポイントを獲得するインサイドセールス部門と顧客への商談を展開するフィールドセールス部門。これらを明確に分業化とし、「Einstein」を活用したリード(見込み客)のスコアリングを両部門で共有する。部門を横断して「リード獲得→育成→絞り込みまでのプロセス」と顧客KPIデータを連携することで、カスタマージャーニーに基づいた効率的なデマンドジェネレーションの仕組みを機能させている。
「Session2」に登壇した両部門のマネージャーが、その効果を語った。
「顧客先ロケーション・役職・顧客反応度・メール開封頻度・クリック箇所を担当者の評価を含めて総合的に判断してスコアリングしていますが、その確度は実際の商談成約率と完全に一致します。担当者と顧客とのリレーションまでも自動学習する機能に驚きを感じます」(インサイドセールス本部 第二事業部 事業部長 鈴木 淳一氏)
「顧客情報やスコアリングなどの数値化される情報が一律化されることにより、営業マンのモチベーションやコミュニケーション・スキルなど、データでは補えないフィジカルな部分の向上やフォローアップに集中することができます」
(コマーシャル営業 第2営業本部 第2営業部 部長 寺本 裕一氏)
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続く「Session3」では、株式会社WEIC 代表取締役社長 内山 雄輝氏が、大量の顧客データを活かしてリード獲得の生産性を高める仕組みを提示した。
「新しい時代の営業は、眠っている営業データを大量に解析することによってもたらされる“予測”がキーポイントとなります。AIテクノロジーとインサイドセールスのオペレーションを融合させることで、優良なターゲットを“予測”し、適切にアプローチする効率的な営業基盤が構築されます」(内山氏)
WEICでは、営業の機能をマーケティング、インサイドセールス、訪問営業に分割し、それぞれがリードの獲得、情報収集による案件化、商談成約だけに集中する体制を構築。
インサイドセールスセンターに約200名のインサイドセールス専門のスタッフを配置し、蓄積した顧客データを解析・分析するターゲット・レコメンド・システム「LIZA」や自社CSR/SFAシステムと連携させて、獲得したリードを着実に案件化する高確度なデータマーケティングを実現している。
「日本の企業の大半が営業マン1人にすべての機能を集約させていますが、これでは1人の営業マンにデータが集中し、属人的な営業から脱却できません。役割分担を明確にすることによって、それぞれのKPIの目標性をはっきりさせた組織運用が可能になり、大量の顧客データを対象に確度の高いリードを抽出することができるのです」
最適なターゲットの予測は、企業の定量データからの「ニーズ予測」、コールデータから得られる「獲得率予測」、BANTデータからの「提供時期予測」の蓄積の中から導かれる。
WEICでは、「LIZA」に音声認識のエンジン・顧客感情認識のエンジンを搭載し、訪問営業に適切なトークスクリプトを設計することで、各顧客接点から得られる予測情報データのスケールアップを図っている。
その結果、「LIZA」には企業の定量データが約400万件蓄積され、予測精度の向上とともに毎月40,000件のリードと1,500件の商談を獲得する「AI×インサイドセールス×クラウド」の仕組みを成立させている。
「AIから期待されたアウトプットを引き出すためには、人がデータを蓄積し、アウトプットのロジックを生成するためのデータを大量に作成し、AIに学習させていく必要があります。その意味でAIは人と融合しながらともに成長を加速するパートナーと捉えています」
「Sales Tech Conference 2017」のフィナーレとして、“つながる”ビジネスを志向するウイングアーク1st株式会社 代表取締役社長 CEO 内野弘幸氏をモデレーターに、株式会社 ABEJA 岡田氏、株式会社セールスフォース・ドットコム 寺本氏、株式会社 WEIC 内山氏によるパネルディスカッションが行われた。
AI時代の新しい営業スタイルにインスピレーションを与えるメッセージを公開する。
内野氏:皆さん、それぞれ自社システムに「ABEJAガードノーム」「Einstein」「LIZA」というAIを搭載されていますが、どこが違うのですか。
内山氏:やっていることの領域が違います。「LIZA」は、大量のデータの蓄積と解析を目的とします。
寺本氏:「Einstein」は、営業の領域に特化し、見込み客のデータから最適なターゲットをレコメンドすることを主目的にチューンアップしています。
岡田氏:「ABEJAガードノーム」は、それらの領域の活動を支えるAIプラットフォームです。提供するものは、Deep LearningをベースとしたAIテクノロジーとなります。
内野氏:それぞれの立場でAIテクノロジーを活用して、新しい営業スタイルを構築しているわけですね。日本の営業スタイルを変革するきっかけは掴めましたか。
内山氏:もともと日本にはインサイドセールスという発想が存在しませんから、現在は0からデータを蓄積していく段階です。
寺本氏:当社は外資系の会社ですから、インサイドセールスとフィールドが連携してデータを活かすビジネススタイルが定着しています。過去の顧客データの蓄積を活かせる環境にあります。
岡田氏:やはりデータが蓄積されていないと、AIは学習できませんからね。ただ、0から1 を導くCreationやImaginationが苦手な日本の場合は、人間とAIを融合させることによって強みを発揮させる方向に持っていくほうが、明らかに技術センサティブが高いと感じます。
内山氏:現在の日本の営業スタイルは、売上目標の達成だけに追われていますが、いずれ数値化されたデータはAIが考える領域に変わります。その時こそ、最前線で様々な情報を受け取る営業マンのCreationとImaginationを発揮すべき機会なんでしょうね。
寺本氏:当社でもフィールドが案件成約時に「あなたのアプローチが良かったから受注につながりました」とメッセージを送ることで、インサイドセールスがモチベーションを高めています。お客様に心地よい対応や気遣いをフォローするAIがあったら、営業の生産性も上がりますね。
岡田氏:お客様との関係性を司るのは営業マンなわけで、この役割はなくならないと考えます。人によって最適なおもてなしをレコメンドしていくための人工知能というのは、非常に価値が出てきますね。そのアーキテクチャを活かして少子高齢化に対応するモデルを開発し、グローバルスタンダードを目指します。
ビジネスにおいてIT化がもっとも遅れていると言われる営業分野であるが、セールスとテクノロジーを組み合わせた技術はどんどん増えており、今後も増加が見込まれる。
AIの登場により、世界が大きくかわりつつある今、営業分野も大きな改革のチャンスが訪れていると言えるであろう。
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