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半導体・半導体装置産業をデータで見る 日本の半導体市場シェアは約30年で5分の1に!?

         

1980年代ごろから “産業のコメ”と称されてきた半導体。2021年から災害や世界的な需要増を背景に半導体不足が発生し、新車の納期は半年後……といった自体が生じたことも記憶に新しいでしょう。2023年5月には台湾積体電路製造(TSMC)、米インテル、韓国サムスン電子などグローバル半導体企業のトップと岸田総理、西村経済産業大臣らの意見交換会も行われ、半導体産業に力を入れる政府の姿勢が見て取れます。

さて、半導体産業の市場規模はどれほど大きく、日本はそのなかでどれだけの存在感を発揮できているのでしょうか

データをもとに2023年現在の実態を押さえましょう。

半導体産業の市場規模は2030年に1兆ドルの見込み

2030年には1兆ドル(約100兆円)の世界市場規模に成長することが予想されている半導体産業ですが、世界半導体市場統計(WSTS)によると2023年度は前年比-10.3%と大幅なマイナス成長が予測されています


※EMEA = Europe, Middle East & Africa
※出典:2023年春季半導体市場予測について┃世界半導体市場統計(WSTS)

この背景には、世界的なインフレや景気減退を背景にコンシューマ需要が縮小したこと、ウクライナ危機を背景とした企業の投資抑制などが影響していると考えられますが、2024年度は市場が再拡大することも予測されており、長期的には半導体市場の成長はつづくと考えるのが支配的な見方でしょう。

IoT、AI、スマートシティ、自動運転車、燃料電池など、半導体の用いられる産業の領域は多様化・拡大をつづけており、産業や社会、安全保障のインフラとして欠かせないものとなっているからです。

日本の半導体市場シェアは約30年で5分の1に 主要半導体部素材・半導体製造装置のシェアは?

さて、世界の半導体市場における日本のシェアは以下ほどなのでしょうか?

早速、以下のグラフをご覧ください。

【世界・日本における半導体の売上高と日本のシェア推移(1985~2030)】

※英国のリサーチ企業Omdiaのデータを基に経済産業省作成。
※出典:半導体戦略(概略)2021年6月 ┃経済産業省

1988年位はシェア50.3%とトップの座に君臨していた日本の半導体産業ですが、その後右肩下がりに凋落し、2019年のシェアは10.0%に留まっています。また、その背景には、1986年に制定されその後10年間つづいた日米半導体協定や垂直統合型からファブレス/ファウンドリ型へのビジネスモデルの変化、過剰品質による安価な海外メーカーとの競争への敗北などがあると分析されています。

一方、現代においても日本企業に強みがあるとよくいわれるのが、シリコンウエハやレジスト、CMPスラリーといった主要半導体部素材や、それらの洗浄、組み立て、製造、検査など精度が必要とされる工程に用いられる半導体製造装置です。

その2021年度における各国シェアは以下の通り。


※「令和3年度重要技術管理体制強化事業(重要エレクトロニクス市場の実態調査及び情報収集)」( OMDIA )より経済産業省作成、2021年度実績
※出典:半導体・デジタル産業戦略_令和5年 6月┃経済産業省 商務情報政策局

ご覧の通り、半導体製造装置において日本は米国に次ぐ31%、主要半導体部素材においては世界トップの48%のシェアを誇っています。

半導体製造には設計、回路を形成するまでの前工程、半導体を切り出し組み立て後検査を行うまでの後工程があり、日本の強みが特にあるとされているのが「後工程」。一方、熊本県に日本工場が誘致されたことでも話題になった台湾TSMCは前工程である微細な半導体チップの製造で世界トップの半導体ファウンドリです。

このように、得意/不得意に偏りがある日本の半導体産業の状況を背景に、冒頭で触れたような海外の先端メーカーとの協力体制の確立、半導体産業への投資などの政策が進められています。

半導体市場の未来と求められる取り組み

2023年6月に改定版が公表された『半導体・デジタル産業戦略』によると、半導体・デジタル産業においてスマホやPCなど人が直接操作する端末から、 機械同士が直接通信や操作を行うM2M(Machine to Machine)に中心が移っていくことが予想されています。

 


※CiscoAnnualInternetReport(2018-2023)を基に経産省作成
※出典:半導体・デジタル産業戦略 令和5年 6月┃経済産業省 商務情報政策局

今や半導体は国の競争力を支える基盤であり、米国・中国の貿易摩擦激化とともにその価値は高まっています。コンシューマ市場に陰りが見られたとしても、M2Mなど未開拓の領域はまだまだ広がっており、そこで日本が存在感を発揮できるかどうかが問われます。

データ処理に用いられるロジック系半導体も日本が強化するべき分野の一つ。国内産業の大きな柱のひとつである自動車産業など関連する領域と連携しつつ、電力消費の増加など付随する問題にも対処しながらイノベーションに取り組んでいくことが求められています。

終わりに

世界・日本の半導体市場について、半導体不足や内閣の動きにより注目が集まる今だからこそ知りたいポイントをご紹介してまいりました。ひとくちに半導体といっても、ロジック半導体、パワー半導体、半導体メモリーなど種類はさまざまで、日本の持つ競争力も領域によって大きく異なります。
本記事を端緒に、半導体の世界を深掘りし、そこに自社の強みや世界情勢の変化を掛け合わせることで生まれる未来についてぜひ考えてみてください。

(宮田文机)

 

参照元

・太田 泰彦 (著)『2030 半導体の地政学 戦略物資を支配するのは誰か』日本経済新聞出版、2021
・『週刊エコノミスト 2022年 8/2号【特集:ここで勝つ! 半導体・EV・エネルギー】』毎日新聞出版、2022
・西村経済産業大臣は、グローバル半導体企業トップとの意見交換会に出席しました┃経済産業省
・半導体戦略(概略)2021年6月┃経済産業省
・半導体・デジタル産業戦略 令和5年 6月┃経済産業省 商務情報政策局
・半導体前工程装置の世界投資、4年ぶりマイナス成長を見通す理由┃ニュースイッチ
・日米半導体協定の終結交渉の舞台裏、「まさに戦争だった」┃日経Xtech

 

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