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先日の記事で、MaaSについてご紹介しましたが、今回は、そのMaaSが実現化されたサービスである「Whim(ウィム)」についてご紹介したいと思います。
Whimは、私たちの生活を大きく変えてしまうかもしれないサービスだといえます。これは大げさな話ではなく、自家用車がなくなるかもしれないという、実は人類史上でも大転換点となりうるのです。時代に乗り遅れないよう、ここでWhimについて押さえておきましょう。
Whimとは、フィンランドの首都・ヘルシンキにおいて世界で初めて実現したMaaS(Mobility-as-a-Service)です。ベンチャー企業「MaaS Global」がサービスを提供しています(MaaSに関しては、こちらの記事を参照)。
Whimは2016年にヘルシンキにて実証実験を行った後、正式にサービスを開始しました。毎月定額もしくはその都度お金を払ってポイントに換え、ポイントを利用することで、いくつかの交通手段から最適な移動ルートを自動検索し、私たちを目的地まで運んでくれます。予約から決済まで一括して行えるのがメリットです。利用できる交通手段は、電車やバスのほか、タクシー、バイクシェアなど。ユーザーがスマホアプリを提示するだけで、交通手段を利用できるようになっています(参考記事)。
このようなフィンランドの取り組みを支援しているのは、「ITSフィンランド」と「フィンランド運輸通信省」。ITSフィンランドは大学やタクシー協会、民間企業など100以上の団体や組織が参画し、オープンデータとオープンAPIのプラットフォームの開発・整備を行っています。それまで個別に点在していた”移動”に関する情報検索、決済等のサービスの統合を進めている産官学コンソーシアムです(参考記事)。
2018年7月1日には、フィンランド交通通信省も「輸送サービスに関する法律(Act on Transport Services)」を施行させ、バス、電車、タクシーなど点在していた輸送サービスに関する法律が一元化されました。民間タクシーの参入障壁の緩和、Uberの解禁など、様々な規制緩和が行われています。
また、フィンランドでは交通手段による優先順位の位置付けが明確に行われており、下記のようになっています。
① 歩行者
② 自転車
③ 軌道系交通(路面電車、鉄道)
④ 道路上の交通(バス、タクシー)
⑤ その他の商用車両(トラックなど)
⑥ 自家用車
これを見るとわかるように、他の移動手段の何よりも自家用車の優先順位が低くなっており、自家用車の所有や活用が奨励されていない状況が浮き彫りとなっています。
Whimは、公共交通機関を有効活用していることから、環境に配慮した取り組みといえます。
ヘルシンキでは、2050年までにカーボンニュートラル(事業活動などで生じるCO2の排出量を、植林や自然エネルギーの導入などによって実質的に相殺して埋め合わせる取り組みのこと。参考記事)を達成することが目標です。この目標を達成すべく、今後同市は民間企業と協力して環境問題に取り組んでいくことでしょう。持続可能な都市づくりの実現に向け、環境問題も取り組むべきテーマとなっています。
ヘルシンキには、Whimを使ったMaaSの発達によって「自動車を持たなくてもよい」未来が待っていることでしょう。自分の体と自転車さえあれば、あとは相乗りの自動運転車と公共交通機関が目的地まで運んでくれます。
ヘルシンキ以外の地域に関しても同様です。オンデマンドの自動運転車が普及していけば、交通機関が未発達のエリアでも十分MaaSは実現できます。折しも、トヨタ自動車はUberに5億ドルを出資すると発表しました(参考記事)。今後、自動車会社は自動運転車の開発に取り組んでいくものと思われます。そして自動運転車が、MaaSの一翼を担う時代がやってくるのです。
もちろん、いくら交通が最適化されたとしても、人が行動するためには「歩行(自転車なら走行)」が必要なのは言うまでもありません。自らの足で移動することが求められます。障害のある方のために、交通機関や自動運転車のバリアフリー化が課題となるでしょう。寝たきりの方に対しては、福祉サービスの充実が必要になってきます。ロボットによるアシストも将来的には現実的な選択肢となってくるでしょう。しかし、それを実現させるためには、自治体と民間だけでなく、各国が一丸となって取り組んでいくことが重要です。
私たちの未来をより便利にするであろうMaaS。ヘルシンキのWhimの事例は、今後MaaSを普及させる際の参考事例となりそうです。
興味のある方は、Whimのサイトをぜひ覗いてください。
【参考記事】
(安齋慎平)
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