様々な角度からデジタル社会の実態に迫る今作は、視聴者に様々な気づきを与えてくれます。その中でも衝撃が大きいのが、SNSや検索エンジンにおいてユーザーは顧客ではない、という構造への気づきです。
SNSや検索エンジンなど無料で使える便利なウェブサービスがどのように稼いでいるのでしょうか?
その答えは「広告」です。
サービスにお金を払っていない「ユーザー」はサービスにとって顧客ではなく、企業から広告収入を得るための商品でしかありません。
したがってサービス設計はユーザーよりも顧客である企業の利益を最大化するように動きます。サービスはユーザーの欲望や思想を取り込みながら、ユーザーを釘付けにし、依存度を高めていくのです。
これらのサービスの依存性の高さはPinterestの元社長でFacebookの収益化の責任者も務めた、ティム・ケンダル氏も語っています。
「帰宅してもスマホを手放せなかった愛情を注ぐべき小さい子がいるのにパントリーでメールを書いたりPinterestを見たり。皮肉だと思ったよ。昼間はこれのために働いて、仕事が終わっても餌食になる。でも自分を止められなかった。」
また元Googleのプロダクトマネージャーで「シリコンバレーの良心」とも呼ばれるトリスタン・ハリス氏も、依存に屈した自身の経験を語っています。
Googleに所属していた当時から自社サービスの構造に疑念を持っていたトリスタンはサービスの中毒性の高さを指摘し、改善を示唆する資料を作ったそう。その資料はたちまち社内で共有され、多くの社員から共感の声が集まったそうです。
しかし、結果的にサービスの構造は変わることはありませんでした。
ウェブサービスの依存性の高さは、開発者をも取り込み、もはや制御不能のものとなってしまったのです。
技術はすでに人の手に負えない依存性を持ちながらその影響を拡大しています。技術を止められない中、私たちはこの”呪い”にどのように立ち向かえばいいのでしょうか?
そこでまず考えるべきなのが、個々人が情報を精査し、省みることです。
SNSなどを通じて拡散される情報には、もちろん、便利で人のためになるものもたくさんあります。
しかし、同じように悪意を孕んだ扇情的な情報もその真偽に関わらず拡散されてしまいます。
その結果、冒頭の「ケンブリッジ・アナリティカ事件」が起こったり、ポストトゥルース(真実よりも信じられるもの)が社会課題になったりしています。
こうした情報をただ飲み込んだり、拡散するのではなく、何が真実で、正しい行いなのか、一人一人が考え続け、実行し続け、互いに尊重し合うことが、人道的なウェブサービスの実現につながるのではないでしょうか?
【参考引用サイト】 ・ 監視資本主義とはなにか 「スーパーシティ 」の内実を暴く:朝日新聞GLOBE+ ・ 情報通信白書令和元年版 HTML版 ・ グレート・ハック: SNS史上最悪のスキャンダル ・ 監視資本主義: デジタル社会がもたらす光と影
(大藤ヨシヲ)
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