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全ての人の健康を応援するアプリ「MYひまわり」を生み出したSOMPOひまわり生命のDXと新たなビジネスの可能性

SOMPOひまわり生命保険株式会社は2024年9月24日、「MYひまわり」と名付けられたアプリをリリースした。同アプリは保険の契約内容の確認や手続きだけでなく、将来の健康リスク予測・健康リスクを回避する「健康行動」を支援するのが大きな特徴だ。同社の執行役員CDO(チーフ・デジタル・オフィサー) 兼 DX推進部長の西川素之氏にアプリ開発の狙いや、同社が推進するデジタルによる変革について聞いた。

         

SOMPOひまわり生命保険「新商品」・新アプリ「MYひまわり」発表会での様子

「生命保険と健康をつなぐアプリ」をリリース

健康診断結果をカメラで撮影するだけでユーザーが5年以内に罹患する確率の高いがんなどの疾病リスクをAI(人工知能)が予測する。また、健康診断結果の登録、歩数に応じたポイントでプレゼントを獲得したり、保険料が割安になったりするチャンスもある。これらは、SOMPOひまわり生命保険株式会社(以下、SOMPOひまわり生命)のアプリ「MYひまわり」の機能の一部である。

キャッチフレーズに「生命保険と健康をつなぐアプリ」とあるように、契約中の保険内容の確認や各種手続きだけでなく、現在の状態と理想の状態を可視化。理想に近づき健康を促進するための行動とその進捗も表示され、健康状態の改善・維持に活用できる。機能に制限はあるが、契約者、被保険者でなくてもアプリを活用できる。開発をリードしてきた西川氏は、「『MYひまわり』は、『Insurhealth®』(インシュアヘルス)を通して、お客さまひとりひとりが健やかで幸せな日常生活を送っていただける「安心・安全・健康であふれる未来」を創ることを目指す『健康応援企業』である当社の取り組みの一環です」と話す。

SOMPOひまわり生命保険株式会社 執行役員 CDO DX推進部長 西川素之氏

「インシュアヘルス」は、保険本来の機能(Insurance)に、健康を応援する機能(Healthcare)を組み合わせた従来にない新たな価値である。これまでに10月2日発売の10月2日発売の新商品を加えて「11」種類をリリースしてきた。

出典:SOMPOひまわり生命保険「新商品」・新アプリ「MYひまわり」発表会資料より

そのインシュアヘルスの特徴的な機能のひとつとして、「健康☆チャレンジ制度!」がある。これは、加入後に喫煙状況またはBMI(体格指数)値、血圧などが改善した場合、「健康チャレンジ祝金」を受け取り、さらに、その後の保険料が割引される制度である。

「インシュアヘルスに共感いただくお客さまが増え、インシュアヘルスの契約数も年々伸びています。それにあわせて、実際に健康☆チャレンジ制度!などに取り組み、BMI値や血圧を改善したり、禁煙に成功したりするお客さまも増えています。さらに、健康チャレンジに成功したお客さまの入院確率は、そうでないお客さまと比べると半減している」と西川氏。コンセプト通り、多くの顧客の健康増進に寄与している。

健康☆チャレンジ制度!に成功するお客さまを増やすことにも貢献する画期的なアプリだが、開発までは順風満帆だったわけではない。むしろさまざまな試行錯誤を繰り返してきた。失敗もあったという。

「従来は健康について知るアプリ、BMI値などの記録をするアプリ、歩くためのお散歩アプリなどを、1アプリ1機能で用意していました。しかし、多くのお客さまはこれらを連携するのではなく、歩くためのお散歩アプリだけといった使い方をされていました。Webサービスを起点として色々なヘルスケアサービスを提供していくことにも取り組みましたが、よりお客さまが使いやすいのは、基幹アプリに集約していくことだと考えました。さらに保険本来の機能と健康を応援する機能を組み合わせないと、本当の意味でのインシュアヘルスにならないと考え、これらの機能を一体化した『MYひまわり』を開発しました」

デジタルありきのツール開発による失敗と学び

DXに関心を持ち、実際に取り組んでいる企業は少なくない。だが、成果が出ている企業とそうでない企業で明暗が分かれているようだ。

「DXでは、D(Digital)よりもX(Transformation)が大事だといわれます。デジタルありきでは失敗します。当社も、『MYひまわり』リリース以前にはさまざまなアプリを開発し、提供してきました。ただし、中には保険本来の機能とリンクせず、単純な機能の提供だけに終わってしまったものもあります。その背景には、保険商品の開発には時間がかかるが、デジタルツールであればとりあえず先に出すことができるという考えがありました。まさにツールありきだったと反省しています」と西川氏。UI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザー体験)という点でも顧客の支持は低かったという。

では、DXを成功に導くためにはどのような点に留意すればいいのだろうか。

「当社では、『ビジネストランスフォーメーション with デジタル』という考えでDXを捉え、大きく2つのスコープで推進していきました。1つ目は、インシュアヘルスの価値を高めることで当社のファンを増やし、お客さまを健康にすること。もう1つは、業務の効率化と最適化を進めることです」

後者は、単に時間やコストの削減を意味するわけではないという。

「効率化のためにこれまでの業務内容を見直し最適化するのはもちろんですが、さらに大切なのは、当社が健康応援企業に変わるため、業務自体も変えなければならないということです」と西川氏。企業によってはDXで何をやるべきか議論したが、なかなか答えが出ず、実際に着手したのは書類のペーパーレス化などにとどまっているという例もある。だが、SOMPOひまわり生命のDXでは、「何をすべきか」が明確だ。それは、根底にあるWHY(取り組む理由)が明確だからだ。

「DXに取り組む理由は、当社が健康応援企業になるためです。当社ならではのお客さま体験を提供するためには、例えば、コールセンターにはどのような対応が求められているのか、また、健康応援企業の事務すなわち健康応援事務とはどのようなものなのか。いま各部署と連携しながら、そのためのストーリーやシナリオづくりが進んでいます」

出典:SOMPOひまわり生命保険 代表取締役社長 CEO 大場 康弘氏資料より
販売件数・新契約年換算保険料は2024年9月時点

「MYひまわり」はグループの商品・サービスをつなぐ起点になり得る

「MYひまわり」アプリは、今後さらに機能を進化させる予定だ。例えばアプリを起動してスマートフォンに顔をかざすだけで、「血管の健康状態」「肌年齢」「ストレス値数」を測定する「毎日健康チェック」や、健康診断結果を登録した後に提示される予測罹患率の高い疾病に罹患した場合、どのくらいの年間医療費がかかるのかを確認できる「年間医療費予測」などの機能がそれに当たる。また、現在実装されている健康診断結果の登録や歩行以外の健康行動を実施するたびに、ポイントが付与される仕組みも検討しているという。

MYひまわりアプリのご紹介(出典:SOMPOひまわり生命HPより)

今後、SOMPOひまわり生命は「MYひまわり」アプリをきっかけに、顧客にどのような価値を提供する企業になろうとしているのか。

「保険は、加入をきっかけに、お客さまとずっと関わり続ける商品です。ただしその接点は、結婚、出産、お子さまの進学など、ライフイベントが発生したときが中心で、それ以外はほとんど接点がありません。『MYひまわり」はこの間を埋めていくものになると期待しています」と西川氏は説明する。顧客の健康状態を常に把握できるため、改善された際などには新たな提案につなげることも可能になりそうだ。

顧客との接点を増やすという点でポテンシャルがあるのがSOMPOグループのネットワークの活用だ。資本業務提携先であるRIZAPグループ株式会社とは、「MYひまわり」のユーザーに向けたコンビニジム「chocoZAP」(チョコザップ)優待サービスの提供なども始まっている。

「当社の持ち株会社であるSOMPOホールディングス株式会社は、新中期経営計画で、グループの各事業が持つ顧客基盤や強み・ノウハウを集約、事業を超えて商品・サービスをつなぐことや、ウェルビーイングの基盤を整備していくことを目指すと発表しました。事業を超えて商品・サービスを連携させる『つなぐ・つながる』取り組みの検討も進めています。近い将来には、各社のお客さまIDを統合し、SOMPOグループIDとして多彩なサービスを提供・提案することも可能になると考えています。『MYひまわり』には、その中核を担うポテンシャルがあると考えています」

実現にはデータ連携が必須になる。西川氏をはじめ、グループ各社のCDOの働きにも期待がかかるところだが、すでに各社のCDOが集まり、意見を交換したりナレッジを共有したりする場も定期的に設けられているという。

「当社とお客さま、営業代理店、、さらにお客さまのご家族という4者がつながり、保険と健康を軸にしたコミュニケーションプラットフォームをつくっていきたいと考えています。それができるのが当社であり、SOMPOグループだと自負しています」と西川氏は語る。社会的にも意義ある取り組みの実現に、今後も期待したい。

 
西川 素之(にしかわ もとゆき)氏SOMPOひまわり生命保険 執行役員 CDO(チーフ・デジタル・オフィサー) DX推進部長
1995年アイ・エヌ・エイ生命保険(当時)入社。代理店営業チャネル担当を務めた後、ダイレクトチャネルのビジネスを約12年間担当。その後本社で約7年、事業企画やCX部門で新ビジネスの立ち上げに携わる。静岡統括部長を経て、2022年より現職。
 

(取材・TEXT:JBPRESS+稲垣/下原 PHOTO:渡邉大智 企画・編集:野島光太郎)

 

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