フレデリック・ラルー曰く、オレンジは組織を“機械”、グリーンは組織を“家族”、ティールは組織を“生命体”として捉えます。
組織という機械を効率的に動かすことを至上命題とするオレンジ組織ではインセンティブと実力主義によって人間という部品を円滑に動かすことを目指します。それが上手く作用することでアンバー組織を圧倒しグローバル企業へと発展する企業が多く誕生しました。しかし、このような組織ではインセンティブを得るために最初から低い目標を設定する「サンドバッキング」や「成長のために成長を求める(※)」空虚なイノベーションが生じかねません。
グリーン組織は物質・数値的な成功よりも、人間関係の充足や社会的貢献に価値を見出します。例えばサウスウエスト航空は「従業員第一主義」を掲げ、共有価値に向かって自由に創意工夫を行う権限をグランドスタッフに与えています。ラップによる機内アナウンスなどユニークな取り組みが生まれた結果、同社は1973年以来40年連続の黒字経営を達成しました。
グリーン組織の欠点は、組織のひとり一人が平等であればあるほど合意形成に時間がかかってしまうということです。また、グリーンの考え方に納得していない人物が“家族”の一員に加われば、一方的な搾取や組織の瓦解が生じかねないという脆弱性があります。
ティール組織は、一見グリーン組織と似ています。メンバーは内心的な価値基準に照らして意思決定をする権限を持ち、組織が存在目的を発揮することを目指します。しかし、ティール組織の構造は、グリーン組織以上に流動的。上司ー部下という関係性がなく、問題への対処や計画、評価といった役割を、組織という生命体に備わった「仕組み」で補っています。例えば研修・コンサルティング・リサーチ企業のホラクラシーワンでは年に一度の社員全員による同僚の格付け評価をアルゴリズムで集計し、給与ベースを決定しているということです。権力構造一切を排するグリーン組織とは違い、ティール組織で取り組む問題によって流動的に階層が生じます。
このようにオレンジからグリーン、グリーンからティールと組織が発展するほど、一般的な意味での“組織らしさ”は失われていくのが面白いところ。その分個人に求められる自律性は高まります。ティール組織では水準に満たない人、組織文化に合わない人が自主的に離れる・あるいは解雇されるまでの仕組みも設計されています。
そのため、ティール組織の考えを知ったところで直ちに取り入れられないというケースが多いでしょう。しかし、組織の段階が発展するほど個人のパフォーマンスが高まり業績が伸びるという研究結果が『Reinventing Organizations』では紹介されており、ティール組織への発展が大きなスパンで見て不可欠になる可能性はあります。
※フレデリック・ラルー (著), 嘉村賢州 (著), 鈴木立哉 (翻訳)『ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現 Kindle版』英治出版、2018、ロケーション10128の882
組織論として注目を集める『Reinventing Organizations』の考え方についてご紹介しました。コロナ禍によりリモートワークを強いられ、マネジメントや評価に苦慮しているという声が多く聞かれました。しかし、それは貴社がアンバー組織やオレンジ組織だからかもしれません。コロナ禍で企業のデジタル活用が大きく進んだように、組織の発展も加速したことが予想されます。
そんな中で自社はどの段階に位置するのか考えることで、これからのあるべき形を模索してみてください!
【参考資料】 ・フレデリック・ラルー (著), 嘉村賢州 (著), 鈴木立哉 (翻訳)『ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現 Kindle版』英治出版、2018 ・マズローの欲求5段階説とは?各欲求を満たす心理学的アプローチを用いたサービス事例【図あり】┃ferret ・7割の企業が「ジョブ型雇用は企業にメリットがある」と回答 メリットは「専門的なスキル・知識がある即戦力人材の採用」、デメリットは「適性がない時に異動できない」ーエンワールド・ジャパン グローバル企業における「ジョブ型雇用」意識調査ー┃PRTIMES ・40年の黒字経営を支える『サウスウエスト航空』の企業理念┃Emotion Tech ・ムーアの法則(むーあのほうそく)┃野村證券
(宮田文机)
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