
「創造性が発揮されるのは、ワクワクしている時です」――。
そう語るのは、明治大学サービス創新研究所 所長であり名誉教授の阪井和男先生です。
本シリーズ第2回では、聞き手のデータのじかん 大川真史が、阪井先生に“創造性の正体”を問いかけます。
議論はやがて「戦略の副作用」や「災害教育」といったテーマに広がり、創造性と倫理、そして教育の本質に迫っていきます。
「創造性は、ワクワクの中でしか生まれません」と阪井先生は語ります。
人はワクワクしている時、徹夜してでも打ち込み、面白がりながらリソースを注ぎ込みます。その没頭こそが創造の源であるといいます。
「起業も同じです。あんなにハードなのに、起業家は面白がって徹底的に集中する。形式化されたものを繰り返しても創造的にはならない。“馬車を何台つなげても汽車にはならない”ということなんです。」
阪井先生にとって、創造性の原体験は大学院時代の研究にあったそうです。
英語論文を一人で読んでも理解できず、仲間を誘ってホワイトボードの前で議論を重ねたところ、不思議なほど問題が解けたといいます。
「それは集合知です。個人の中では発揮できない創造性が、対話を通じて開かれる。人と一緒に議論すれば、より面白くなる。僕の創造性の原体験ですね。」
創造とは、知識やスキルの結果ではなく、“ワクワクしながら他者と向き合う対話のプロセス”の中で起こるものです。
阪井先生はまた、「創造性は後知恵で説明されるもの」とも指摘します。
「本当に創造的な行為は、事前にはわかりません。後から“これは創造的だった”と説明しているにすぎません。だから創造性を理解するには、当事者としてのナラティブが必要なのです。」
嵐の中で舵を取る船乗りのように、切迫した状況で自ら判断を下す行為。
そこに“理屈を超えたワクワク”があるからこそ、人は創造的に動けるのだと先生は語ります。
創造性の話題から、議論は「戦略」へと進みます。
阪井先生は、「リソースを配分するためには戦略が必要ですが、過剰な役割を負わせてはいけない」と強調します。
なぜなら、戦略はしばしば創造性を阻害するからです。
「戦略が介入しすぎると、現場の創造が止まる。重要なのは“いかに戦略が介入しないか”です。」
その比喩として、阪井先生は「プロ野球のオーナーと監督」の関係を挙げます。
「オーナーが“この選手を使え”“あれをやれ”と言ってしまうと、現場の柔軟な判断が奪われる。それではチームが育たないのです。」
さらに阪井先生は「木のアナロジー」を示します。
「経営では、実ったリンゴを素早く収穫することが効率的だと思われがちです。でも本当に大切なのは、土壌を肥やして木を太く育てること。短期的な成果を追う戦略と、長期的な成長を支える戦略はまったく違うのです。」
この“スコープ(視野)”の問題は、倫理にも直結します。
ある部署が成果を出しても、その裏で別の部署が疲弊している——そんな構造的歪みは、最終的に人の心を壊します。
阪井先生は、ドラマ『セクシー田中さん』の制作現場を例に挙げ、「局所的な正義が、全体の非倫理を生むことがある」と語ります。
「誰も悪気はないのに、結果として人を潰してしまう。それが最も危険なのです。」
創造性と倫理は無関係ではありません。
広い視野で全体を見渡し、誰も取り残さないように配慮すること——それが、組織の創造性を支える基盤になるのです。
そして話題は、阪井先生が近年取り組むテーマ「災害教育」へと移ります。
「災害教育はイノベーション教育と同じなんです。」
災害は滅多に起こりません。しかし、いざ起きた時には予測不能な状況に対応しなければなりません。
阪井先生は、その構造を「リベラルアーツの本質」に重ねます。
「体系的な知識を身につけるよりも、“めったに起こらないことにどう対応するか”を考える力こそ、リベラルアーツ。災害教育はその実践です。」
つまり、災害教育とは「不確実性に向き合う想像力」を鍛える場であり、イノベーション教育と同質の営みなのです。
未知の出来事を前に、自分の“当たり前”を問い直す。
異なる視点を排除せず、「そういう世界もある」と受け入れる想像力を持つ。
それが、組織のレジリエンス(しなやかさ)を高め、社会全体の創造的対応力を育てることにつながります。
阪井和男先生が語る「ワクワク」「戦略の副作用」「災害教育」。
これらは一見異なるテーマに見えますが、実はすべて“創造性の条件”をめぐる一つの体系を成しています。
ワクワクが創造を生み、過剰な戦略がそれを阻みます。
そして、創造性を広げるためには倫理と想像力が欠かせません。
災害教育のような“非日常の学び”こそ、未来の社会を支えるリベラルアーツになるのです。
明治大学サービス創新研究所 所長/明治大学名誉教授。
物理学を起点に、情報教育、組織改革、大学情報基盤整備など、複数分野を横断して実践する「越境型キャリア」の先駆者。
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