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何よりも真の効果を重要視するEBPMとは? 国・自治体の取組事例とともに、わかりやすく解説!

         

現代の国や自治体の政策立案における重要キーワード「EBPM」

世界的潮流のひとつであり、日本の政策立案力を高めるために欠かせない概念です。とはいえ、多くの人々にとって耳慣れない言葉であることもまた事実。本記事では、EBPMとは何かについて、国や自治体の取り組み事例を紹介しつつ、わかりやすく解説いたします!

EBPM=“真の効果”に基づいた政策立案


EBPMは、Evidence-based Policy Making(エビデンスに基づく政策立案)の略で、確かなエビデンスに基づいて政策の決定や実行、効果検証を行うことを意味します。

その実施において重要なのが“以下の3つが明示されていること。

1. 政策立案の前提となる事実認識
2. 立案された政策とその効果を結びつけるロジック
3. 政策のコストと効果の関係

出典:EBPMの取組の概要┃厚生労働省資料

ここで注目していただきたいが効果というフレーズです。それは、EBPMにおけるエビデンスは「ある事業により実際にもたらされた効果(アウトカム)」のことを指し示すからです。
例えば教育に介入する取り組みごとに「100ドルで延ばせる学校教育期間」 を比較した以下の図をご覧ください。

参考:2020.10.06『エビデンスに基づく政策形成(EBPM)とスマートシティの「交差点」 -相乗効果を生むためには何が必要か?-』┃「スマートシティ・インスティテュート」YouTube

グラフにおいて最も効果が高いのは「教育投資のリターンに関する情報操作」(40年)。それに続くのが「虫下し薬の配布」(28.6年)です。途上国では、寄生虫により健康を害することが高い学校の欠席率につながっています。一方、両親への現金給付(条件付き現金給付)の効果はその100分の1にも満たないことがグラフに示されています。

これは、もしかしたら直感と反する結果かもしれません。しかし、RCT(ランダム化比較試験)という確かな実験手法に基づいて導き出されており、やみくもに施策を打つよりも論理的妥当性があるはずです。

このように直感やあてずっぽうではなく、確かなデータや検証に基づいて政策立案に取り組む手法がEBPMです。

EBPMに注目が集まる理由と効果検証の具体的手法

エビデンスに基づく効果検証において先行していたのは医療の分野でした。みなさんは、
EBM(Evidence-based Medicine:エビデンスに基づく医療)という言葉をご存じでしょうか?

医療の世界では他分野に先行してエビデンスに基づいた行動様式が重視されてきました。その考えが政策立案に波及したのがEBPMといえるでしょう。

EBM・EBPMを問わず、エビデンスに基づいた決定において注意したいのが“施策と効果は本当に正しい因果関係で結ばれているのか”ということです。

例えば、健康診断を受けている人ほどBMIや血圧など健康にまつわる指標がよいというデータがあったとします。このデータだけを見て、「健康診断を受ければ受けるだけ健康になるから健康診断を義務化しよう!」と考えるのは早計です。もしかしたら、健康診断を受ける人はそもそも健康に関心の高い人で日ごろから健康的な生活習慣を送っているのかもしれません。また、企業に勤めている人は健康診断が会社から提供される一方、フリーランスの人などは自分で受診の申し込みをする必要があるため、働き方の違いにより健康診断を受けた人の健康度が高まった可能性もあります。

このように施策と効果の因果関係を証明するのは一筋縄ではいきません。そこで、ランダムに対照を振り分け比較することで、因果関係を検証する前述のランダム化比較試験(RCT)などの手法が生み出されました。

2019年のノーベル経済学賞は、ランダム化比較試験の手法を世界の貧困削減に向けて活用した3名の研究者に与えられました。このようにエビデンスに基づいて政策立案をする手法が確立されてきたからこそ、現在のEBPMへの注目が生まれたといえるでしょう。

加えて、ビッグデータ活用や行政DXがEBPM推進に寄与している点もあります。エビデンスを検証するためには政策の対象者、またその対象者と比較される群についての目的に即したデータがなければなりません。インターネットやSNSなどのツールはそのためのデータ基盤として活用できます。また、施策に基づいてスピーディに運用を改善するためには、行政のデジタル化が不可欠です。

なお、エビデンスの効果検証に必要な要素を4つにまとめたフレームワークをPICOといいます。4つの英単語の頭文字を取って作られた言葉で、それぞれの意味は以下の通りです。

・P:Population(誰に対しての施策か?)
・I:Intervention(どんな施策を行うのか?)
・C:Comparison(誰を比較対象とするのか?)
・O:Outcome(何に対しての効果を検証するのか?)

日本国内における2つのEBPMの取り組み事例

ここで、EBPMの具体的な取り組み事例を国内で2つ確認してみましょう。

【1】新潟県柏崎市の「デジタル予算書」


新潟県柏崎市では、予算、決算、行政評価等の情報を統合データベース化し、インターネット上で公開することでEBPMに取り組んでいます。

出典:柏崎市 デジタル予算書トップページのキャプチャ

「デジタル予算書」では以下のような項目に専用サイトからアクセスし、効果検証やアイディア創出に生かすことができます。

・年度や担当課といった予算科目別の情報
・重点事業に紐づいた総合計画の基本方針や主要施策、予算額など
・事業の概要や目的、予算額、財源情報、実績といった詳細
・事業に関連した地区別の学区や関連URLなどの情報
・年度ごとに見た予算科目の決済額・補正予算額、次年度の予算要求など

デジタル予算書の構築にはウイングアーク1stの「MotionBoard」が採用されています(詳しくはコチラ)。

【2】官民のビッグデータを集約した「RESAS」「V-RESAS」


RESAS(Regional Economy Society Analyzing System:地域経済分析システム)は地方創生におけるデータ利用の入り口として2015年4月から公開されました。特定の都道府県や市区町村における人口増減や主要産業の花火図、観光施設ごとの検索回数などのさまざまなデータを検索し、政策立案に活用することができます。

出典:RESASトップページのキャプチャ
そんなRESASにV(Vital Sign of Economy:経済のバイタルサイン)を結合させたのが「V-RESAS」。現在地域経済に生じている経済の変動を可視化することを目的としており、新型コロナウイルス感染症が与えた移動人口や宿泊者数、求人情報などを一目で確認することが可能です。

出典:V-RESASトップページのキャプチャ
「RESAS」「V-RESAS」の開発を推進した衆議院議員平正明氏と気鋭のデザインエンジニア、Takram代表の田川欣也氏の対談はコチラ(前編後編)。

終わりに

EBPMについてみなさんの理解は深まったでしょうか?

以下の3ポイントは必ず押さえておきましょう。

・EBPMとは、確かなエビデンスに基づいて政策の決定や実行、効果検証を行うこと
・EBPMにおけるエビデンスは「ある事業により実際にもたらされた効果(アウトカム)」を指す
・RCTといった効果検証手法を政策立案に生かす取り組みの広がりや、デジタル技術活用の進展がEBPMの推進を後押ししている

データをエビデンスにつなげるEBPMの考え方は今後どんどん広まっていくはずです。

【参考資料】
・2020.10.06『エビデンスに基づく政策形成(EBPM)とスマートシティの「交差点」 -相乗効果を生むためには何が必要か?-』┃「スマートシティ・インスティテュート」YouTube
・エスター・デュフロ「貧困に立ち向かう社会的実験」┃TED
・EBPMの取組の概要┃厚生労働省資料
・柏崎市デジタル予算書┃柏崎市
・2019年ノーベル賞(経済学)は「世界の貧困軽減に向けたフィールド実験」:JICAの教育支援の現場で活用中┃独立行政法人国際協力機構
・EBPM(エビデンスに基づく政策立案)に関する有識者との意見交換会報告(議論の整理と課題等)┃総務省EBPMに関する有識者との意見交換会事務局

宮田文机

 

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