農業や製造業など昔からある業界と比較すると、ITの歴史はまだまだ始まったばかりです。けれどもIT市場は年々急速に成長しており、インターネットなしの生活はもはや想像できない、というほどには、私たちの生活に密接な関わりを持っています。
同時に、今後もさらなる成長を期待されている業界でもあります。そんなIT業界で今注目されているのが「SoE=Systems of Engagement」と「SoR=Systems of Record」です。SoEとSoRは、システムの目的と特性による分類を示す用語です。
IT業界のトレンドとなっている「SoE」「SoR」の大きな違いはシステムを構築する目的です。SoEは主にユfーザと企業を繋ぐためのシステム。一方で、SoRは社内の基幹系システムと位置付けられています。
このSoEとSoRを意識しながらプログラムを構築していくことで、最適化されたシステムを導入できると言われています。SoE(Systems of Engagement)は、「繋がりのシステム」を意味します。これはユーザと企業をどのように繋いでいくかという点を重視したシステムです。
一方SoR(Systems of Record)は、「記録のシステム」を意味します。これは社内情報を安全に管理し、それを適切にアウトプットできる点を重視したシステムです。
それぞれの詳細は下記にて紹介します。
SoIについても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
SoEは「System of Engagement」の略で、顧客とのやり取りを管理し、関係を強化するためのITシステムです。例えば、顧客情報には顧客の購入履歴や問い合わせ履歴が紐付けられており、これらを一元管理するためのツールとしてCRMがあります。
また、SoEには顧客の閲覧履歴や購入履歴に基づいて商品をおすすめするリコメンド機能や、ECサイトで利用される問い合わせ対応のチャットボットなども含まれます。
SoRとは、「System of Record」の略で、会計や機密情報、受注管理などの社内業務に関わる情報を記録するためのシステムです。SoEとは共通点がありますが、SoRは業務データを蓄積することに特化しています。具体的には、労務管理や会計、受注管理、製造管理などのシステムがSoRの一例です。SoEと混同されやすいシステムとして挙げられます。
SoEと同様に、SoIというシステムも存在します。SoIは「System of Insight」の頭文字を取った言葉で、顧客の行動データを分析して顧客のニーズを把握し、購買行動を理解するためのシステムです。顧客の行動に基づいて、興味や関心のある商品を選ぶなど、マーケティング活動に役立てることができます。
まず、SoEとSoRは相補的な関係にあります。顧客のニーズを正確に把握するためには、さまざまなデータが必要なので、SoEではデータを収集し、SoRではそれを整理して蓄積します。そして、SoRが整理したデータは再びSoEに取り入れられ、顧客のエンゲージメントを高めるために活用されます。
このサイクルを繰り返すことで、蓄積されたデータから分析を行い、顧客とのつながりを深めることができます。このように、SoEとSoRの双方向のデータ活用は、顧客視点のシステムを実現するために欠かせない要素です。
次にSoIとの関係性ですが、SoEで収集したデータをSoRに保存し、SoIで分析することで、顧客の洞察を正確に把握できます。つまり、SoIはSoEとSoRを組み合わせて、新しい付加価値を生み出すものと言えます。
例えば、レコメンドシステムでは、これまでの購買履歴をSoEデータとして蓄積し、SoRで管理します。そして、SoIはSoRに保存されたデータを分析し、個々の顧客に適した商品を提案します。SoEとSoRを組み合わせて活用し、顧客の視点に立った新しいビジネスや付加価値の提供を実現するためには、SoIも必要不可欠です。
本章ではSoEとSoRが注目されている理由を紹介します。注目されている理由としては下記が挙げられます。
順に紹介します。
SoEとSoRが注目されている理由として、多様化しているニーズに対応できることが挙げられます。
SoEを導入することで、顧客ニーズに合わせた対応が可能になります。たとえば、SoEを利用すると、顧客の閲覧履歴や購入履歴を管理できるため、ECサイトでレコメンド機能を活用することができます。また、SoEを導入することで、顧客からの問い合わせに自動返信するAIを搭載したチャットボットを活用することもできます。SoEを導入すると、顧客とのやり取りを管理できるため、顧客に最適な対応をすることができるメリットがあります。
2つ目に紹介するSoEとSoRが注目されている理由は、活用することで顧客満足度の向上が期待できるからです。
SoE導入により、チャットボットなどを使用することで、顧客対応の速度が向上し、顧客に合わせた提案や対応が可能になります。その結果、顧客満足度の向上が期待されます。顧客満足度が向上すると、顧客の支持を得ることができ、リピート購入にもつながります。また、リピーターが増えることで、売上やLTVの向上も目指すことができるでしょう。
前章ではSoEやSoRが注目されている理由について紹介しましたが、本章ではSoEを選ぶときのポイントを紹介します。
順に紹介します。
SoEを選ぶ際は条件に合った形態を選びましょう。
SoEの形態には、オンプレミス型とクラウド型の2つがあります。オンプレミス型は、自社でサーバーを構築する形態であり、初期費用は高額ですが、月額費用は比較的抑えられます。また、自社サーバーで情報を管理するため、セキュリティ対策もしやすいです。
一方、クラウド型は、データをオンライン上で管理する形態であり、初期費用は抑えられますが、運用には月額費用がかかります。ただし、データの流出などのリスクも考えなければなりません。費用とセキュリティを考慮して、条件に合った適切な形態を選ぶことが重要です。
2つ目に紹介するポイントは、対応できるデバイスを確認することです。
顧客とのつながりを強化するためには、利便性の高いデバイスと対応しているシステムを選ぶことが重要です。パソコンやスマートフォン、タブレットなど、顧客がよく利用するデバイスに対応しているシステムを選びましょう。
また、SNSとの連携機能があれば、顧客が簡単に問い合わせできるだけでなく、コミュニケーションの活性化にもつながります。デバイスと連携できるSNSも確認しておきましょう。
SoEを導入する際は、操作性を確認しましょう。
SoEを選ぶ際の重要なポイントの一つは、操作のしやすさです。SoEシステムは顧客との関係を深めるために、顧客が扱いやすく操作性の高いものでなければなりません。顧客が操作にストレスを感じると、商品を購入する前にサイトから離脱してしまう可能性もあります。ですから、顧客が利用しやすいシステムを選ぶことが大切です。
では、SoEを導入した事例を紹介します。
順に紹介します。
1つ目の事例はAmazonです。
Amazonという世界最大のECショップでは、ユーザーの閲覧履歴や購入履歴を活用して、「この商品もおすすめ」といったレコメンドサービスを提供しています。ユーザーにとっては、自分の好みや嗜好に合った商品を手軽に見つけることができる利点があります。
また、企業側にとっては、転換率や売上を増やすことができるメリットがあります。つまり、データを活用して顧客にサービスを提供するレコメンド機能は、SoE(顧客体験最適化)の一環と言えます。
2つ目の事例は、Uber/Uber Eatsです。
「Uber」と「Uber Eats」は、SoEを活用したサービスで、車を運転して収入を得たい人と利用者をGPS情報を使ってマッチングさせるプラットフォームを提供しています。
時代やニーズの変化に合わせてデータを収集し、顧客と直接つながりながら新しいビジネスモデルを生み出しているため、SoEに分類されます。
仕事の効率を上げるためには、システムの導入が効果的です。けれども業務内容に合ったシステムを構築できなければ、その効果も半減することでしょう。従来のIT業界は「SoE」と「SoR」をまったく別物として捉え、それぞれを独立させて構築してきました。
しかし、効果の高いシステムを導入するためには、対ユーザの「SoE」と対社内の「SoR」の2つの視点から考えていくことが重要となり、「SoI=Systems of Insight」という「SoR」「SoE」の両軸から新たな洞察や知見を獲得するためのシステムという概念が生まれ、その重要性も叫ばれています。
「SoE」「SoR」という一見性質の違うこの両者を統合することによる、より多角的な情報の管理と活用が重要ということです。今後のIT業界の成長では「SoE」と「SoR」の統合、そしてその先の「SoI」が1つのキーワードになってくるかもしれません。
(データのじかん編集部)
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