About us データのじかんとは?
オンラインのサッカーゲームをしながら、生徒たちが海外の学生やプロゲーマーと英語で会話をしている。会話の内容は今プレイしているゲームのことだけでなく、好きなサッカーチームや選手、さらには自分の趣味などに広がる。
「eスポーツ×英会話」は、れっきとした授業だ。専門学校のeスポーツ専攻科で実施されているが、今後は全国の教育機関に採り入れてもらえるようにアプローチしているという。海外には、「日本のマンガやアニメで日本語を覚えた」という人が多いが、日本では今後「eスポーツで英語を学んだ」という若者が増えることになるかもしれない。
「eスポーツ×英会話」は、eスポーツの現役プロプレイヤーでタレントのGENKIモリタ氏と、英会話スクール「PHLIGHT(フライト)英会話」とのコラボレートにより生まれた。この橋渡しをしたのがワクセルだ。
ワクセルで総合プロデューサーを務める住谷知厚氏は、「ワクセルには『こんなことをやりたい』と手を挙げるコラボレーターが1,100人以上参画しています。GENKIモリタさんもコラボレーターの1人です。コラボレーターと一緒に立ち上げたプロジェクトは、100件以上になっています」と話す。
コラボレーターは、さまざまな分野の専門家や経営者、クリエーターなどだ。テレビなどにも出演する著名人や有名企業の経営者もいる。一方で、SNSなどを通じて、一人でイラストや音楽を発表するクリエーターもいれば、沖縄でサンゴの保護に取り組んでいる人、男性の家事・育児への参加を推進しようとする人もいる。
「さまざまな分野で夢を実現しようとしている人をワクセルは支援しています。YouTubeなどでの番組配信、オンライン講演会、出版プロデュース、対談・インタビュー記事制作などの他、実際にプロジェクトを創出することもあります。中には、コラボレートが進み、そこから法人をつくり、事業化しているケースもあります」
一般的に、企業が事業の創出などのインキュベーションを行う場合、資金やオフィスなどを提供するようなスタイルが多い。それに対してワクセルでは「ワクセル自身が投資することもありますが、それよりも、人と人を結ぶコミュニティをつくり、そのつながりから新しいものを生み出していきたいと考えています」と住谷氏は話す。
「何か面白いことやりたいですね」といった会話から事業が生まれることも珍しくないという。実際に、ワクセルらしい事例も生まれている。「今年の秋に、宮崎県でeスポーツの体験会と就労支援の体験会を開きます。これはまさに、立ち話から生まれたプロジェクトです」
ワクセルは、2022年4月、東京・池袋の東武百貨店マルチスクエアで「SDGsライフスタイル展」を開催した。そこに出展していた宮崎県の食品メーカーの経営者と話しているうちに、「eスポーツ×地方創生」で何かできないかという話題になったという。その後、同社の紹介により、宮崎県内最大手の交通会社や、県内のサッカーJ3チームなどもプロジェクトに参画するなど、どんどん巻き込みが起きていった。「自分のビジョンを語ると、どこかに必ず応援してくれる人がいるということを改めて感じました」と住谷氏は語る。
住谷氏は2021年1月にワクセル総合プロデューサーに就任した。都内の有名私立大学理工学部在学中からベンチャー事業を創業したが「失敗したため」(住谷氏)、大手証券会社に就職した。
「配属されたのは営業部門で、毎日飛び込み営業、夜討ち朝駆けも当たり前でした。数字が第一の厳しい世界ではありましたが、そこで多くのオーナー経営者と出会う機会がありました。中にはかわいがっていただいて、食事に誘ってくれる経営者もいました。それらの人たちから話を聞くのは非常に勉強になりました。そして、多くの経営者が語るのが、人の縁の大切さでした」
ワクセル主催者の嶋村吉洋氏に出会ったのは就職して3年目だった。嶋村氏はイベント事業、不動産事業、映画プロデュースなど複数の事業を立ち上げ成功している。経営者のみならず、オリコン株式会社を含め、複数の上場企業の大株主としても知られる。
「嶋村さんからの学びを実践し、2017年に独立しました。現在はテック系ベンチャー企業など複数の企業の経営をしながら、ワクセルの総合プロデューサーとしても活動しています。」
嶋村氏も常日頃から「人と人とのつながり」や「コラボレート」を重視しており、ワクセルを主催している理由もそこにあるという。
「嶋村さんから、『コラボレートを通じて人の夢を応援する場をつくりたい』という話を聞いて、ぜひ僕に責任者をやらせてくださいと答えたのです」。ワクセルの名前には「ワクワク+アクセル(わくわくすることを加速させる)」という意味が込められているという。
ワクセルの活動そのものは2019年ごろから始まった。法人としてのワクセルは、住谷氏が総合プロデューサーに就任して5カ月後の2021年6月に設立された。だが、門出は決して順風満帆だったわけではない。ワクセルが始動して間もなく、コロナ禍が世界を襲った。人と人との出会いやコミュニケーションの機会が、コロナ禍により極端に制限された。その中で、どのように新しいコラボレーションを実現していったのだろうか。
「嶋村さんからもアナログな人間関係を大事にするようにずっと言われてきました。ところがコロナ禍になってそれができなくなりました。オンラインでも会話はできますが、なかなか人間味が感じられません。また、人と人との関係は、信用残高を積み重ねるようなものです。コロナの状況にもよりますが、これからもあちこちに足を運んでいろいろなところで人とつながっていきたいですね。人間にしか出せないもの、デジタルや機械で表せないものがあると思うので」と住谷氏は語る。
住谷氏は自身でも複数の企業を経営しながら、ワクセルの総合プロデューサーを務めている。住谷氏をはじめ、スタッフは全員、他に仕事を持っている兼業だ。さらに、交通費や会場費、コンテンツの制作費などの実費は支給されるものの、ほとんどの業務に手弁当で参加している。プロジェクトの収益化についてはどのように考えているのだろうか。
その問いに住谷氏は次のように答える。「マネタイズは、当初から時間がかかると見ていました。ただし、ずっとボランティアのような形でやっていくというわけではありません。まず一つの考え方として、複数のプロジェクトが稼働することで、収益化が難しい事業については他の事業が補うということができると思います。またプロジェクトによっては、時間がたてば収益化の流れができるものもあると考えています。例えば今、さまざまなイラストを紹介しながら、興味を持つイラストをクリックすると、そのクリエーターのSNSに飛ぶような仕組みをつくっています。PVも徐々に伸びていますが、参加するイラストレーターが増え、プラットフォーム化すれば、消費者にもアピールできるでしょう。その他、『SDGsライフスタイル展』のようなイベントでは、物販による売り上げでマネタイズできます。」
直近のマネタイズをKPIとして掲げていないからこそできることもある。特に社会課題の解決の取り組みなどは、一朝一夕にできるものではない。ワクセルがターゲットにしているテーマなどはあるのだろうか。
「キーワードで言えば、グルテンフリー、SDGs、地方創生、医療福祉、eスポーツ、障害者支援などです。いずれもニーズが高まっていると感じています。もちろん、これら以外のテーマでも、コラボレーターが実現したい夢があれば、積極的に支援します」
嶋村氏はよく「起業してからファンを集めるのは難しい。起業する前にファンを集めるべきだ」と語っている。前者であればリスクもあるが、ワクセルのコミュニティに参画することで、これらのリスクも低減できそうだ。多くの経営者も参画しているため、事業の創出や運営の知見も得られるだろう。
「事業を生み出して継続していくためには、規制への対応など細かいこと、泥臭いこともやっていかなければなりません。コラボレーターの中にはそこでくじけてしまう人や温度が下がってしまう人もいます。モチベーションの維持も含めて、ワクセルが応援していきたいと考えています。意欲あるコラボレーターや共創したいと考える企業にぜひ参画してほしいです」と住谷氏は語る。
ワクセルから社会の課題を解決する、そしてそれにより収益を得られるような元気な事業が数多く誕生することに期待したい。
住谷 知厚 (すみたに・ともひろ)氏
ワクセル株式会社 総合プロデューサー
ワクセルの総合プロデューサー | 山口生まれ・千葉育ち | 大手の証券会社に就職後、コラボレートを通じて、ワクセル主催者の嶋村吉洋氏に出会い「人を信じる経営がしたい」と思い、経営者にワクセル(主催:嶋村吉洋)公式チャンネルにて、番組MCとして出演しています!
(取材・TEXT:JBPRESS+稲垣 PHOTO:Inoue Syuhei 企画・編集:野島光太郎)
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