About us データのじかんとは?
在宅で過ごす時間が増えると気にかかるのが家事の時間です。特に仕事があったり子育てをしていたりすると家事の時間が生活の大きな負担になることも。
しかし、家事をすると一口に言ってもその内容は家庭によってさまざまです。また家庭の外からはなかなか見えない部分であるため、周囲の人々と比較しながら最適な方法を探すというのもなかなか難しいものです。
そうした中で一つの指標となるのが「時間」です。
今回は、「家事の時間」についてデータで観察してみました。
家庭の中でとくに問題になりがちなのが、夫婦間での家事の分担です。
そこで、総務省による「社会生活基本調査」より乳幼児(6歳未満の子ども)のいる家庭、いない家庭での夫・妻それぞれの家事・育児・介護時間をグラフにしました。
なおこの値は一週間あたりの合計の時間を1日辺りに換算したものです。
まず、乳幼児のいない家庭での結果が以下のグラフになります。
グレーで印字されているのが育児・介護・家事の合計時間です。
妻の家事の時間が208分(3時間28分)なのに対し、夫の家事の平均時間は12分でおよそ17分の1程度となり大きな差があることが明確にわかります。
また、育児、介護などの時間も妻のほうが長くなっており、育児や介護、家事などは妻の方が主に担っているという家庭が多いことがうかがえます。
続いて乳幼児がいる家庭での夫婦の家事・育児・介護の平均時間をグラフ化したものが以下になります。
乳幼児がいない家庭と比較すると、乳幼児のいる家庭は夫の家事の時間がわずかに増加しているのに対し妻の家事の時間は20分程度減少しています。しかし、その差の大きさは顕著です。
妻の育児の時間はグッと増え、1日あたり222分(3時間42分)と家事にかかっていた時間以上に育児の時間の負担が長くなっています。その結果、育児・介護・家事の合計時間は1日あたり414分(6時間54分)となり、仕事をこなしながら平均で1日7時間近くを家事や育児に投入している、という計算になります。
「女性の社会進出」が提唱されて久しい中ですが、無償労働とも呼ばれる育児や家事などは主に女性の役割、という構図はなかなか変わらないようです。
こうした構図を覆すためにはなにが必要なのでしょうか?
そのヒントを探るべく家事や育児の時間を夫婦別に国際比較してみました。まずは、乳幼児のいる家庭における夫の家事・育児関連時間についてグラフにしたものが以下になります。
比較すると日本に住む男性の家事・育児に携わる時間が他国と比較しても非常に低い水準であることが見て取れます。
一方で妻の家事・育児関連時間を見ると日本が際立って長くなっています。
ここで、男性の家事・育児関連時間を1として男女比を取ると以下のようになります。
どの国でも男性と比較して女性の方が家事・育児に携わる時間は多いものの、その差はおおよそ2倍前後に留まっていますが、日本ではその差が5倍以上となっており、日本は国際的に見ても家事・育児の男女格差が非常に大きいということがわかります。
つまり、国際的に見て日本の女性は家事をしすぎ、日本の男性は家事をしなさすぎるのです。
しかしなぜ日本においてここまでの大きな差が生まれてしまったのでしょうか? その背景にはなかなか解消されない長時間の有償労働があります。
OECD(経済協力開発機構)によって2020年に発表された15~64歳の男女を対象とした生活時間の国際比較にによると、比較対象となった国の中で、1日あたりの有償労働時間が最も長かったのは日本の男性の452分(7時間32分)で、OECDの平均値である317分(5時間17分)と比較しても2時間以上長くなっています。
つまり、日本の男性は家事をしなさすぎるのではなく、仕事をしすぎた結果、家事や育児のできる時間が少なくなっているということです。
一方で、日本女性の有償労働の時間もOECD平均(218分)を1時間近く上回る272分(4時間32分)だったということで、無償労働の時間を鑑みると日本女性も過重労働になりがちであると言えます。
こうした状況の中で家事や育児の時間だけを平等にしようとしてもなかなかうまくいかない、というのは当然の帰結であるように感じます。
家事・育児において男女の格差がある、という認識は広くあり、また多くの家庭において夫婦でどのように時間を配分するかが大きな問題となっていると感じます。
しかし、日本において無償・有償問わず人々が「長時間労働をしがち」である、という点を考えると、一家庭のみではこの問題はなかなか解決できないのではないでしょうか?
家事や育児の分担を家庭の問題に留めず、社会の問題として捉え、長時間労働を考え直していくことが、いびつな格差を解消する一つの鍵となりえます。
長く働くことが本当に良い社会を生むのか、改めて考えていきたいですね。
(大藤ヨシヲ)
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