2023年1月18日、株式会社ジール(以下、ジール社)が「世界最先端セルフサービスBIを活かすのは、あの国産分析用データベースとBIダッシュボードだった! ThoughtSpotとDr.SumとMotionBoard、この奇跡の邂逅(かいこう)がもたらすものとは?」と題したウェブセミナーを開催。「ThoughtSpot×Dr.Sum×MotionBoard」連携の可能性について紹介した。
オープニングにおいて、株式会社ジール ビジネスディベロップメント部 部長の菅田信正氏は、BI市場の活況に触れつつも、課題があることを指摘した。
「市場のトレンドがエンタープライズBIからセルフサービスBIに移り変わる中、当社は30年間にわたりさまざまなBIに携わってきました。少し前までは一部の企業に導入が限られていたBIも、今ではすっかり敷居が下がり、何らかの形で導入している企業が大多数だと思います。これはたいへん嬉しいことです。しかし一方、大きな期待を寄せてBI導入してみたものの、思うような効果が出せていない企業がいるのも現実です」(菅田氏)
同社が顧客の声を集めた結果、課題は次の3パターンに集約されたという。1つ目は「“誰でも使える”が宣伝文句のセルフサービスBIを導入したのに、一部社員しか使ってくれない。使いこなせない」という“使い勝手”の問題。2つ目は「導入したことで今までできていたことができなくなってしまった」という“機能不足”の問題。そして3つ目が「分析の対象となる肝心のデータが十分にない」「データはあるのだけれど実際には使えていない」といった“データ”の問題だ。
「特に3つ目は深刻です。ERP、POS、IoTなどから企業に集積されるデータ量は、以前に比べて圧倒的に多くなっているはず。しかしそれらをBIツールで自由自在に活用するためには、分析用として使いやすい状態にデータベースを整えなければいけません。そこまで手が回っていないのが、多くの企業の実状ではないでしょうか。これらをどのように解決していくのか。本日はゲストの皆さまと一緒に考えていきたいと思います」(菅田氏)
オープニング後、ウェブセミナー第1部「パネルディスカッション」が行われた。ThoughtSpot合同会社(以下、ThoughtSpot社) 日本カントリーマネージャーの有延敬三氏、ジール社 取締役・中村国宏氏、そしてウイングアーク1st株式会社(以下、ウイングアーク社) 執行役員 Data Empowerment事業部長の大澤重雄がパネリストとして参加。協業の背景やこれから広がる可能性をテーマに意見が交わされた。(ファシリテーターはジール社 ビジネスディベロップメント部 コンサルタントの栗原和音氏)。
栗原:国内外ベンダーから数多くのBIツールが提供されています。企業の部門担当者からは「導入したいけれど、どれを選べばいいか分からない」なんて声も聞こえてきそうです。まずはジールの中村さんに、長年BIに取り組んできたSIerの立場から、昨今のBI市場についてご解説いただけますか。
中村:BI製品の歴史を紐解くと、今から30年以上前、1989年にガートナー社が「非専門家でもデータ分析ができる」ことをBIだと定義しました。その後BIツール・BIシステムと呼ばれるものが続々と出現しますが、大きくは「第1世代=1990年代〜2000年」「第2世代=2010年〜2020年」「第3世代=2020年以降」に分けられると思います。
特に今の第3世代は、ThoughtSpotのように、これまでからすると信じられないほど、多様な機能を有しています。第1世代では組織でも一部の部門・ユーザーがBIを使いこなせばよかったのですが、近年はDXの潮流もあり「全人材のデータドリブン人材化」が経営者の本音です。(企業の部門担当者は)そうした会社の期待に応えたいけれど最適なBIが見つからず困っている、というのが最近の現場の傾向だと思います。
料理に例えると、第1世代・第2世代は「単品メニュー」をつくればよく、1つの包丁(BI)で事足りていた。しかし会社組織の数万人規模がデータ分析の対象となり「フルコースメニュー化」が期待されているのが現在です。メニューに応じた適切な包丁(BI)の活用が求められています。
栗原:ありがとうございます。そうした中、ThoughtSpot社とウイングアーク社はクラウドにおけるデータ分析・活用で協業を開始。このことを、中村さんはどのように受け止めていますか。
中村:第3世代の最先端を走るThoughtSpot社と、第2世代から第3世代へと駆け抜けてきたウイングアーク社の協業です。それは私にとっても大きなサプライズでした。両社のコンビネーションは「最強」だと断言します。ThoughtSpotとDr.Sum、そしてMotionBoardを組み合わせて使う選択は、これからどんどん増えていくと思います。
栗原:次に、ThoughtSpot社の有延さん、ウイングアーク社の大澤さんにお聞きします。それぞれのお立場から両社協業の経緯や背景、そして協業に対する率直な思いを聞かせてください。
有延:もともとThoughtSpot社の生い立ちは「検索」と「AI」です。しかし数年前からは、世の中のDWH(データウェアハウス)との連携によるソリューション提供を開始しています。当社も世の中のさまざまなBIをベンチマークし、それらのどれとも被らないBIを考え始め、誕生したのがThoughtSpotです。
海外でもさまざまなベンダーがDWHを出していますが、冷静に日本国内のDWH市場を見ると、圧倒的にウイングアーク社がシェアを獲得しています。DWHという言葉が広がる前から素晴らしい製品を世に送り出し、それを非常に多くのユーザーが使っています。このたびの協業には、大きなポテンシャルを感じています。
栗原:とはいえ、社内からの反発はありませんでしたか? 特に米国のThoughtSpot社の上層部を説得するのは簡単ではなかったはずです。
有延:最初にこの話が持ち上がったときは「えっ!? 競合するよね?」のような反応が社内からありましたし、正直、私も同感でした。しかし先ほど中村さんの発言にあったように、結局BIは「適材適所」が重要です。私たちはMotionBoardのような表現力は未だ持ち合わせていません。しかし一方で「データを検索して表示をする」「ITのメンバーで簡単にレポートをつくる」といったセルフサービスBIの領域では長けています。実際にわれわれのユーザーの大半が何らかの既存BIとThoughtSpotを使い分けており、同じBIベンダーといえども十分に共存できる領域だと考えました。
米国ThoughtSpot社のトップを、私が説得することになりましたが、ウイングアーク社がデータベースやBIの領域に関してかなり深い知見を持っていたことが好材料となりました。
栗原:一方、大澤さんはいかがでしょうか?
大澤:ThoughtSpot社はまさしく世界のトップランナーです。この話が持ち上がったとき、私自身はとてもテンションが上がりました。ここまでのお話にも十分出てきたように、BIの世界はすでにすみ分けができています。そのときに考えるべきはやはり主語を“ユーザー”にできるかどうかです。ビジネス的に見れば、当社とThoughtSpot社のプロダクトが近しい関係にあるのは間違いなく、普通に考えれば「協業なんてあり得ない」のかもしれません。しかし両社の製品が補い合えば、ユーザーに大きなメリットを享受できます。
協業の過程では有延さんと何度も言葉を交わしました。その中で、両社の製品は違いがより明確になり、それぞれのユーザーの課題も別々であることが分かりました。お互いが補い合えば、非常にフィットすると思いました。
栗原:最近ではクラウド型DWHがたくさん市場に出てきています。そうした中で例えばDr.Sumの強みは何でしょうか。
大澤:深い技術やスキルを持たなくてもデータ分析ができることに加え、ユーザーのデータ活用シーンにマッチしたサービスを料金体系からも提供していることでしょうか。単にデータをためるだけであれば、安価なクラウドサービスがたくさんあります。しかし、ためたデータを活用するシーンにおいては、サービス自体の仕様を確認しておかなければいけません。例えば、大企業などで一気に活用ユーザー数が増えれば(クラウドサービス利用の)コストが莫大になるなどのケースは実際に起こり得ます。Dr.Sumにはオンプレミス版とクラウド版の両方があり、どのような規模の企業でもユーザー増減からの悪影響を及ばさないかたちでライセンス体系を組んでいます。
有延:今の点について補足すると、海外企業・外資企業のサービスは企業のトップが変わると料金体系も変えてしまうことがよくあります。その点、ウイングアーク社は日本のしっかりとした企業です。サービスが持つ機能とは別に、ユーザーに安心感を与えられる意味で強みを持っていると思います。
第2部「製品紹介とデモンストレーション」では、ジール社 ビジネスディベロップメント部 マネージャーの岡本真一氏が「ThoughtSpot」「MotionBoard」「Dr.Sum」をつなげるデモンストレーションを公開。3製品を組み合わせた業務イメージを共有した。
その上で第3部「まとめ」の中で岡本氏は、企業でのデータ活用シーン(ThoughtSpot×Dr.Sum×MotionBoardのすみ分け)を次のように話しました。
「経営層や経営に近いマネージャ層などは、日常的に閲覧する定型ダッシュボードとして、見やすく使いやすいMotionBoardを使います。一方で、業務上必要なデータを探索するような非定型検索を行う業務部門は、誰でも簡単に扱えるThoughtSpotを使います。両製品を仲介させるかたちでDr.Sumを連携することで、経営層や経営に近いマネージャ層が、業務部門と同じデータを見ながら、ガバナンスを効かせることができます。これが、3製品の活用シーンだと思います」(岡本氏)
さらに岡本氏は、「必ずしもBI製品を1つにまとめる必要はない」と続ける。BI製品それぞれが得手不得手などの特徴を持っており、活用企業の側においても活用シーン・活用部門・抱えている課題が異なるため、最適なBI製品は状況により変わってくるからだ。つまり、適材適所で用途・目的に合わせた製品選定こそが最も肝心だといえる。
「当社はBI製品の導入に関する知見を持っており、BI製品選定サービスも提供しています。どのようなBIを入れればよいのか迷っているお客様は、ぜひお声がけください」(岡本氏)
プログラム終了後には、主催者などの関係者が残り、楽屋トークが行われた。前述までに触れてきたように、ThoughtSpot×Dr.Sumの連携、さらにMotionBoardによって、ユーザーはBIを効果的に活用していくことが“理論上では”可能になる。しかし、理論と現実の間にはギャップが存在し、ユーザーはそのギャップや不安を乗り越えていく必要があり、「お客様(ユーザー)の背中押しになるようなサポートが必要」という意見が出た。ユーザー主語のBIツールの在り方やそのための手厚いサポートの実現に向けての議論がなされ、ジール社、ThoughtSpot社、ウイングアーク社の3社で連携していくことを確認した。
(TEXT・取材: MGT 編集:野島光太郎)
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